ビスフェノールA
[Wikipedia|▼Menu]

ビスフェノール A


IUPAC名

4,4'-(propane-2,2-diyl)diphenol
4,4'-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノール
別称4,4'-ジヒドロキシ-2,2'-ジフェニルプロパン
4,4'-イソプロピリデンジフェノール
識別情報
CAS登録番号80-05-7 
PubChem6623
ChemSpider6371 
UNIIMLT3645I99 
EC番号201-245-8
国連/北米番号2430
DrugBankDB06973
KEGGC13624 
ChEBI.mw-parser-output .plainlist--only-child>ol,.mw-parser-output .plainlist--only-child>ul{line-height:inherit;list-style:none none;margin:0;padding-left:0}.mw-parser-output .plainlist--only-child>ol li,.mw-parser-output .plainlist--only-child>ul li{margin-bottom:0}

CHEBI:33216 

ChEMBLCHEMBL418971 
RTECS番号SL6300000
SMILES

Oc1ccc(cc1)C(c2ccc(O)cc2)(C)C

CC(C)(c1ccc(cc1)O)c2ccc(cc2)O

InChI

InChI=1S/C15H16O2/c1-15(2,11-3-7-13(16)8-4-11)12-5-9-14(17)10-6-12/h3-10,16-17H,1-2H3 Key: IISBACLAFKSPIT-UHFFFAOYSA-N 

InChI=1/C15H16O2/c1-15(2,11-3-7-13(16)8-4-11)12-5-9-14(17)10-6-12/h3-10,16-17H,1-2H3Key: IISBACLAFKSPIT-UHFFFAOYAI

特性
化学式C15H16O2
モル質量228.29 g mol?1
外観白色固体
密度1.20 g/cm3
融点

158-159 °C, 431-432 K, 316-318 °F
沸点

220 °C, 493 K, 428 °F (4 mmHg)
への溶解度120-300 ppm (21.5 ℃)
危険性
NFPA 704030
RフレーズR36 R37 R38 R43
SフレーズS24 S26 S37
引火点227 °C
関連する物質
関連物質フェノール類
ビスフェノール S
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ビスフェノールA (bisphenol A, BPA) は化学式 (CH3)2C(C6H4OH)2 の有機化合物である。白色の固体であり、有機溶媒に溶けるが水には溶けにくい。一般には粉体であり、粉塵爆発を起こす[1]ことがあるため扱いに関して注意が必要[2]。2つのフェノール部位を持っており、ポリカーボネートエポキシ樹脂をはじめ、さまざまなプラスチックの合成に使われている。
合成

ビスフェノールAは2当量のフェノールと1当量のアセトンの反応によって合成される。この反応はによって触媒されるが、触媒として塩酸のような無機酸やスルホン酸型の陽イオン交換樹脂スチレンジビニルベンゼン共重合体を硫酸などでスルホン化したもの)のような固体酸が使われる。さらに反応速度や選択性の向上のために、チオールのような含硫黄化合物を触媒に共存させることが一般に行われている。一般に、フェノールは大過剰にして反応を行う。合成された大過剰のフェノールを含む反応液を冷却すると、ビスフェノールA : フェノール= 1 : 1 の付加物結晶(アダクト)が得られるので、これを分離・洗浄した後、結晶を加熱・溶融し、フェノールを蒸留などで除去すると、高純度のビスフェノールAが得られる。工業的にはこれを 1 - 2 mm 程度の球状に粒子化(プリル)して製品化している。

多くのケトンは同様な縮合反応を起こす。この合成法では副産物が水しか生成しないため効率的である[3]

2008年度日本国内生産量は 533,842t、消費量は 58,330t である[4]


歴史・用途

1891年にロシアの化学者アレクサンドル・ディアニン (A. P. Dianin) によって初めて合成された[5][6]。1930年代には合成エストロゲン(女性ホルモン)の1つとして研究されていたが、当時ジエチルスチルベストロールがエストロゲンとして強い活性を持つことが明らかにされたため、ビスフェノールAが合成エストロゲンとして使われることはなかった。
樹脂原料としての利用

現在ではポリカーボネート製のプラスチックを製造する際のモノマーや、エポキシ樹脂の原料として利用されている。抗酸化剤、あるいは重合禁止剤としてポリ塩化ビニル可塑剤に添加される。

ポリカーボネートの用途はサングラスやCDから水・食品の容器まで多くの日用品にわたり、壊れにくいため哺乳瓶にも使われている。歯科治療用の歯の詰め物や、缶詰の内側を被覆するエポキシ樹脂の中にも含まれている。

他に、レシートなど感熱紙の顕色剤(ロイコ色素[無色の色素前駆体]と反応して発色させる物質)としても用いられた。

後述する健康への影響を懸念して、これを使っていないことを示す「BPAフリー」と書かれた製品も流通しているが、代わりによく似た物質であるビスフェノールS(英語版) (BPS)が使われていることもあり、「BPSフリー」も併記された製品がある[7]
健康影響に関する研究
早死との関係

ビスフェノールA(BPA)は、肥満糖尿病高血圧心血管疾患など、あらゆる原因による早死のリスクの増加に関連している。 簡単な予防策には、プラスチック容器への依存を減らし、生鮮食品への依存を増やすことが含まれる[8]
ビスフェノールAを原料とする樹脂からの溶出

ポリカーボネートエポキシ樹脂のようなビスフェノールAを原料とする種類の合成樹脂では、洗剤で洗浄した場合や酸・高温の液体に接触させた場合にビスフェノールA成分が溶け出すことが知られている。アメリカ合衆国での調査では、ヒトからかなりの確率で検出された。

特に話題に上るものの一つにトマト缶がある。缶の内側にエポキシ塗装が施されており、トマトの酸性度が高いので、溶出が認められるとされた。

1996年『奪われし未来(Our Stolen Future)』をきっかけに調査が始まり、日本の製缶業界では自主的なガイドラインを設定、厚生労働省の呼びかけと共に日本生協連も対策を行っている。

2008年、厚生労働省食品安全部基準審査課はホームページに「ビスフェノールAについてのQ&A」を掲載[9]し、特に乳幼児と妊婦に対して注意を呼びかけられている。

生協による日本国外製品の検査結果は次の通りである。フルーツ缶詰め類 検出せずマッシュルーム缶類 0.007?0.009ppmトマト類 0.023?0.029ppmミートソース0.013?0.025ppmツナ缶類0.036?0.051ppm
内分泌攪乱化学物質としての懸念

ビスフェノールAを摂取するとエストロゲン受容体が活性化されて、エストロゲン自体に類似した生理作用を表す。1930年代に卵巣を除去したマウスにこの物質を投与する実験が行われ、作用が初めて証明された[10][11]
フォム・サールによる「低用量仮説」


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:26 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef