ヒラタケ
野生ヒラタケ
分類
ヒラタケ(平茸[1]、学名: Pleurotus ostreatus)はヒラタケ科ヒラタケ属の食用キノコである。別名カンタケ、ホンヒラタケ(本平茸)[2]、アワビタケ[2]。和名の由来は、生長すると傘が平らに開くことから「平茸」と名がついている[3]。 木材腐朽菌[1](腐生性[4])。全世界の温帯の山林で普通に自生する。晩秋から早春にかけて、主にコナラ、クヌギ、ブナなどの広葉樹(まれに針葉樹)の朽木や切り株、倒木、河原のヤナギなどに、いくつか重なり合って発生する[3][1][4]。寒い時期に発生することから「寒茸」(カンタケ)の名もある[1]。 子実体の傘は、径5 - 20センチメートル (cm) の半円形[1]。中央が窪んでじょうご型になるものもある。はじめのうちは半球形(まんじゅう形)で、傘が開くと貝殻形[注 1]から半円形、扇形、腎臓形、ときに漏斗形になる[3][1]。色はほぼ黒色→灰褐色→灰色→淡色と変化する[1]。表面は平滑でぬめりはない。老菌になると傘は色褪せてくる[3]。ひだは白色から淡灰色で、密で、柄にある場合には柄に長く垂生する[1]。柄は多くは無柄で、ある場合は側生、偏心生、中心生で長さ1 - 4 cm短く、基部には白色菌糸が密生する[3][1]。肉質は白色で厚く、やや強靱である[1]。胞子は8 - 11×3 - 4マイクロメートル (μm) の円柱形。線虫捕食菌としても知られる[4]。 培地の条件により成長時の外観が変わり、天然条件や切り株栽培の場合は傘は中心生よりも偏心生が多く、毒キノコのツキヨタケに似た形状にもなる。おがくず菌床栽培の場合は円柱状(とっくり)の軸の上に傘と言うホンシメジの様な典型的なキノコの外観をもつ。 食用キノコの一つで、風味が良く、シメジに似た味わいがある[2]。かつては、本種をビン栽培して株立ち状に仕立てたものが「シメジ」を名乗って流通していたが[1]、その後キシメジ科シロタモギタケ属
概要
同じヒラタケ属 Pleurotus の近縁種として、同じく食用となるウスヒラタケ Pleurotus pulmonarius 、タモギタケ Pleurotus cornucopiae 、トキイロヒラタケ Pleurotus salmoneostramineus 、オオヒラタケ Pleurotus cystidiosus[5]、エリンギ Pleurotus eryngii がある。タモギタケやオオヒラタケ(台湾)[5]、エリンギについては人工栽培も行われている。 本種は淡泊な味で香りもおだやかで癖がなく[6]、汁物、鍋物、すき焼き、鉄板焼き、炊き込みご飯、天ぷら、うどん、素焼き、バター炒め、グラタン、中華、エスニックなどさまざまな料理に利用でき[3][2][1]、また加工食品にも用いられる。新鮮なときの傘の色は、灰色をしている[1]。食味は、歯切れが良くてやわらかく、旨みが強い[1]。世界中で栽培されるポピュラーなキノコであり[1][4]、日本でもホンシメジに似た小型の栽培ものが全国的に流通しており、「シメジ」という名称で販売もされていた[3][6]。長野県産は「信州しめじ」の名前でも流通している。ただしブナシメジの流通量拡大におされ流通及び生産量は減少している。野生品は栽培品よりも肉厚で歯ごたえがあり、美味である[1]。 2014年に、日本産のヒラタケと海外産のヒラタケ属であるオイスターマッシュルームを交配し、形が崩れにくく品種改良したヒラタケが「霜降りひらたけ」の名で流通している。[7][8] ワカイともよばれ古くから珍重されてきた食用菌であり[3]、平安時代中期には食用にされていた。一説には、縄文人も食していたともいわれる[3]。 藤原実資『小右記』には、遊興の際の食物の一つとして「平茸一折?」が記録されているほか、「近来往々食茸有死者、永禁断食平茸、戒家中上下」と、毒キノコによる死亡事故の多発を理由に家中にヒラタケを食べることを禁じる旨が記されている[9]。また、『今昔物語集』には、受領の藤原陳忠が谷底に落ちたついでにヒラタケを採ったという巻二十八「信濃守藤原陳忠落入御坂語」をはじめ、ヒラタケの登場する説話が複数存在する[1]。
食用
日本での歴史