ヒラギノ
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macOS付属のヒラギノフォントの書体見本。

ヒラギノ (Hiragino) は、1993年に大日本スクリーン製造(当時[1]。ヒラギノフォントに関する事業・権利はSCREENグラフィックソリューションズ[2]が承継)がプロ向けデジタルフォントとして販売開始した書体ファミリーで、主要な書体は字游工房がデザインした。ApplemacOSiOS, iPadOSに標準搭載され、それらプラットフォームの標準日本語フォントになっている。日本語書体としては明朝角ゴシック丸ゴシック行書、仮名専用書体があり、このほかに簡体字繁体字双方の中国語版角ゴシックがある。

ヒラギノの名は京都の地名である柊野(ひらぎの)に由来する[3][4]
歴史
コンセプト

1989年、本文書体を作りたいとの思いから鈴木勉鳥海修、片田啓一の3人によって字游工房が設立された。翌1990年に大日本スクリーンからベーシックな本文書体を共同開発する提案があり、字游工房側は「二つ返事で」引き受けた。フォント開発には多額の費用がかかるところ、当初、明朝・ゴシックに加えて隷書・楷書など全部で50書体を開発する構想があったことから、字游工房ではチャートを使って既存書体を分析した[5]。その結果「若々しい」「さわやか」「クリア」というイメージの書体を目指すことにし、特に「若々しい明朝体」が市場にないことが意識された。大日本スクリーンが初めて出す書体ということもあり初々しくてよいとも考えたという[6]。大日本スクリーンが印刷・画像処理機器のメーカーであることから、カタログやビジュアル雑誌向けに適した本文書体とし[7]、写真などとの混在を前提に文字の濃度・黒みにムラが出ないようにすることとした。

大日本スクリーン側は「何十年も使い続けられる本格的かつベーシックな書体」、「既存のいかなる書体とも違う表情を持った競争力のある書体」であることを望んだ[7]。大日本スクリーンは、書体デザイナーとして名の知られた鈴木勉[8]個人を前面に出してヒラギノ明朝体を宣伝したいと要望したが、鈴木本人がこれを拒み「字游工房デザイン」とすることになった。
ヒラギノショック

ヒラギノが一応の完成を見た頃、Mac OS Xに標準搭載する話が舞い込む。1書体九千数百字を2万字に拡張することが求められ、1年から1年半ほどの間に5万字を新たに制作することになった。2万字の字種が固まっていないため、作った文字が不要になったり、再度必要になったりすることがしばしばあり、とにかく大変だったと鳥海修は振り返っている[5]

2000年2月16日、Mac OS Xへのヒラギノ標準搭載が発表される。この日、MACWORLD Expo/Tokyo 2000のキーノートスピーチでスティーブ・ジョブズが画面いっぱいに映し出したヒラギノ明朝体W6の「愛」を指さし「クール」と言った。鳥海は著書などでこのことを印象深い思い出としてたびたび語っている。

Mac OS XがヒラギノOpenTypeを標準搭載するという知らせは、特にDTPにおいてLaserWriter II NTX-J以来、モリサワ書体を事実上の標準あるいは前提としてきたことからの転換(を迫る可能性があること)、また高品位印字のためにプリンタフォントを必要とする従来の在り方[9]を変革するものと受け止められ、ヒラギノショックとも称された[10]

ヒラギノは、明朝体の発売から12年、Mac OS X搭載から4年経った2005年、グッドデザイン賞(コミュニケーションデザイン部門)を受賞した[7]

2010年からは、モリサワの年間ライセンス・MORISAWA PASSPORTを通じた提供が始まった[11]
おりぜ社への制作委託

2019年3月27日、ヒラギノの権利を保有するSCREENグラフィックソリューションズ(SCREEN GA)は、新たな文字制作体制を関係各社と構築中であると明らかにした[12]。同年9月12日、SCREEN GAは「合同会社おりぜ」にヒラギノフォントの文字制作を委託する業務提携契約を締結したと発表した[13]。おりぜ社は、1994年から2009年まで字游工房に在籍したタイプデザイナー・岡澤慶秀(おかざわ よしひで)が代表を務めるタイプデザイン会社。岡澤はこの時点までに「ヒラギノUD角ゴ・丸ゴ」「ヒラギノ角ゴ W0」などの制作に従事している。
千都フォントライブラリー

京都に所在する大日本スクリーンは、文字文化の多くの起源が京都にあるとして「千年の都京都」にちなみ自社オリジナルフォントを千都フォントライブラリーと名付けた。

千都フォントライブラリーには、ヒラギノフォントの他に三宅康文デザインによる「ダイゴ」「ケアゲ」「オイケ」の3書体と「フナオカ丸ゴシック体」「キョウゴク角ゴシック体」があった。「ダイゴ」「ケアゲ」「オイケ」の3書体は後にファンシー書体集として提供され、2016年以降は特注商品となっている。

印刷史研究会が近代の鋳造活字をオリジナル通りに覆刻した「日本の活字書体名作精選」も千都フォント仮名書体集として2004年3月に発売された。

2006年には、凸版印刷・字游工房・大日本スクリーンのコラボレーションプロジェクトから生まれた「こぶりなゴシック」が「ヒラギノフォント」に続く千都フォントライブラリーの新書体として発売された。

2010年代半ば以降、ウェブサイト・サポート窓口の名称などで、次第に「千都」にかわって「ヒラギノ」を前面に押し出すようになった。2013年に開設されたヒラギノフォント総合情報サイト screen-hiragino.jp では「ファンシー書体集」「日本の活字書体名作精選」もヒラギノフォントのラインアップに加えられている。
フォント形式と流通形態

現行製品はmacOS / Windows NT系対応のOpenType(otf形式=PostScriptベース)で、ダウンロード販売される。パッケージ販売は2020年3月に終了した[14]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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