『ヒュラスとニンフたち』英語: Hylas and the Nymphs
作者ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス
製作年1896年
種類カンバスに油彩
寸法132.1 cm × 197.5 cm (52.0 in × 77.8 in)
所蔵マンチェスター市立美術館、マンチェスター
ヒュラースを誘い込もうとするニンフたち。 2人のニンフの習作。
『ヒュラスとニンフたち』(英: Hylas and the Nymphs)は、ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの1896年の油絵。この絵は、オウィディウスや他の古代の作家の説明に基づいて、悲劇的な若者ヒュラースに関するギリシャとローマの伝説の一場面を描いている。ヒュラースは水を汲みに来た時に恍惚状態となり、ナーイアス(水のニュンペー)によって誘拐される。この絵は、危険な女性のセクシュアリティの隠喩として、またニンフォマニアに対する警告として解釈されてきた。男性を惑わすファム・ファタールの主題の範疇にも入る[1]。 ヒュラースはドリュオプス
目次
1 主題
2 作品
3 脚注
4 参考文献
主題
絵画の大きさは 98.2×163.3 センチメートル (38.7 in × 64.3 in) である。古典的な服を着た男性の青年ヒュラースは、赤い帯が付いた青いチュニックを身に着け、管の口径の大きい水瓶を持っている。彼は青々とした緑豊かな茂みに囲まれた池のそばに腰を下ろし、セイヨウコウホネを含むスイレンの葉と花の中で池から出ている水のニンフである、7人の若い女性の方を向いている。ニンフたちは裸で、アラバスターの肌は透明な水の中暗く光っており、黄色と白の花が彼女らの鳶色の髪を覆っている。それらの顔はおそらく2人のモデルに基づいた非常に類似した特徴を持っている。
ヒュラースは彼が二度と帰って来られない水に入るよう誘惑されている。ニンフの1人は手首と肘を、2人目はチュニック、3人目は手のひらで真珠を握っている[2]。ヒュラースの顔は陰影が付けられ、ほとんど目は見えないが、ニンフの顔は彼を見ていることがはっきりと分かる。場面はヒュラースが水を見下ろしている所から少し上がった位置で描かれているため、空は見えない。
ウォーターハウスの予備的スケッチの一部は、オックスフォード大学のアシュモレアン博物館に所蔵されている。
ヒュラースはウィリアム・エッティ(1833年)とヘンリエッタ・レイ(1910年)、そしてウォーターハウス自身(1893年)の初期の例など、19世紀と20世紀初頭のイギリスのアーティストにおいて繰り返し描かれたテーマだった。
ウォーターハウスはまた、『ナルキッソス
(英語版)』(1903年、リヴァプールのウォーカー・アート・ギャラリー)や詩『ヘーラクレースとヒュラース』(1896年にフランシス・バーデット・トーマス・クーツネヴィル(英語版)で出版)など、他にもギリシャの伝説に関する悲劇的な若者を描いた。この絵は1896年にマンチェスター市立美術館によってアーティストから取得された。1987年にロイヤルアカデミー・サマーエキシビション(英語版)で展示された。
作品は2018年初頭に「マンチェスターのパブリックコレクションでの芸術作品の展示方法と解釈方法についての会話を促すため」にギャラリー10の展示室「美の追求」から撤去された[3][4]。ギャラリーの来場者は、壁に残った空きスペースに、用意されたポストイットに記入して貼るように勧められた[5]。批判を受け、作品は数日後にすぐに同じ場所に展示された[6]。
ウィリアム・エッティ『水のニンフたちと若いヒュラース』1833年 ウォーターハウス『ナーイアス』あるいは『ニンフとヒュラース』1893年 ヘンリエッタ・レイ『ヒュラースと水のニンフたち』1910年
脚注^ 池上英洋『官能美術史』(筑摩書房、2014年)p.241 ISBN 978-4-480-09651-7