ヒュドラー
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この項目では、ギリシア神話のヒュドラーについて説明しています。その他の「ヒュドラ」については「ヒドラ」をご覧ください。
ギュスターヴ・モロー画『ヘラクレスとレルネのヒュドラ』(1876年) シカゴ美術館所蔵。紀元前4世紀ごろのアポローニアの貨幣。表には冥府の女神ペルセポネーの怒った顔が、裏にはヒュドラーが描かれている。紀元前6世紀ごろの黒絵式アンフォラ。ヒュドラーと戦うヘーラクレースとイオラーオスの姿が描かれている。英雄はのような武器で戦っており、その足元には彼の脚を攻撃せんとする大蟹カルキノスの姿がある。パリルーブル美術館所蔵。スコットランドの著述家アレクサンダー・ジェイミソンの『ジェミイソン星座図(英語版)』(1822年)に描かれたうみへび座(一部)。ヨハネス・ヨンストンの『鳥獣虫魚図譜』(1650年-1653年)に描かれたヒュドラー(下図)。

ヒュドラー(古希: ?δρ?, Hydr?)は、ギリシア神話に登場する怪物である。長母音を省略してヒュドラとも表記される。

テューポーンエキドナの子で、オルトロスケルベロスキマイラ[1]、また一説にネメアーの獅子[2]、不死の百頭竜(ラードーン[3]プロメーテウスの肝臓を喰らう不死のワシ[3]スピンクス[4]パイア[5]金羊毛の守護竜と兄弟[6]

トレミーの48星座のうちの1つであるうみへび座(海蛇座、Hydra)はヒュドラーのことである。
概説

ヒュドラーはギリシア神話を代表する怪物の1つで、ヘーラクレースによって退治された。これはヘーラクレースの12の功業の1つとして知られている。ヒュドラーとは古典ギリシア語で水蛇を意味するが、神話ではアルゴリス地方のレルネーに住む怪物のことを指し[注釈 1]ヘーシオドスによれば女神ヘーラーがヘーラクレースに対する恨みの感情から育てたとされる[8]

ヒュドラーは巨大な胴体に9つの首を持つ大蛇の姿をしていたが[9][10][11]、首の数については50[12][13]、100とする説もある[14]。もっとも、パウサニアスはヒュドラーの頭はもともとは1つだったと考えており、ロドス島カメイロス出身の詩人ペイサンドロスが恐ろしさを強調するために多頭の姿で描いたと述べている[15][注釈 2]。ヘーシオドスはヒュドラーの姿については触れていない。後代の絵画などでは前足と後ろ足、翼を持った姿で表されることもある。

ヒュドラーは不死身の生命力を持っており、9つの首のうち8つの首は倒すことが出来るが、すぐに傷口から新しい2本の首が生えてきたとされる[10][14]。加えて中央の首は不死だった[10]。ヒュドラーは猛毒の恐ろしさでも有名で、ヒュドラーの毒を含んだ息を吸っただけで人が死ぬほどだった。またヒュドラーが寝た場所は猛毒が残っているために、その場所を通った者はさらに苦しんで死ななければならなかった[11]。しかも猛毒は解毒することが出来なかった[15]。そのためヘーラクレースはヒュドラーを退治した後にその毒をに塗って用いたが、その矢傷は不治であり、決して癒えることがなかった。そのことが後にケイローンポロスのような善良なケンタウロス族だけでなく、ヘーラクレース自身を死に追いやったと伝えられている。
神話
ヘーラクレースのヒュドラー退治アントニオ・デル・ポッライオーロ作『ヘラクレスとヒュドラ』。

神話によればヒュドラーはアルゴリス地方のレルネーの沼地に住み、しばしば人里を荒して回った[10]。このためミュケーナイエウリュステウスはヘーラクレースにヒュドラーの退治を命じた。これはネメアーの獅子退治に続く2番目の難行となった[10][14][11]

ヘーラクレースはヒュドラーの吐く毒気にやられないように、口と鼻を布で覆いながらヒュドラーの住むレルネーの沼地へとやって来た。そしてヒュドラーの巣に火矢を打ち込み、ヒュドラーに立ち向かった。しかしヒュドラーの首を棍棒で叩き潰しても、傷口からすぐに2つの首が再生し、倒せば倒すほど首が増えてしまうことにヘーラクレースは気が付いた。

ヘーラクレースは甥のイオラーオスに助けを求めた。イオラーオスは首の傷口を松明の炎で焼き焦がす方法を思いつき、次々に傷口を焼いて再生するのを防いだ。ヒュドラーを殺すには、真ん中にある1つの不死身の首を何とかしなければならなかったが、ヘーラクレースはその首を切断し、巨大な岩の下敷きにして倒した[10][注釈 3]。そしてヒュドラーはうみへび座となった。一説によると、ヘーラクレースの死を願うヘーラーはこの戦いで、彼の足を切らせるために化け蟹・カルキノス[注釈 4]を送り込んだという。しかしヘーラクレースは怒ってこれを踏み潰してしまっていた。そしてこの蟹がかに座となった[17]

しかし、エウリュステウスは、この苦行は一人で行われなかったため達成されなかったと言い渡し、12の功業の中には入れなかった[10][18]
ヒュドラーの毒

戦いの後、ヘーラクレースはアテーナーの助言に従い[11]、ヒュドラーの体を切り裂いて猛毒を含んだ胆汁を取り出し、自分の矢に塗ってその後の戦いに用いた[10][11][15][16]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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