ヒトヘルペスウイルス6型
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ヒトヘルペスウイルス6
ヒトヘルペスウイルス6の電子顕微鏡写真
分類

:第1群(2本鎖DNA)
:ヘルペスウイルス目
Herpesvirales
:ヘルペスウイルス科
Herpesviridae
亜科:ベータヘルペスウイルス亜科
Betaherpesvirinae
:ロゼオロウイルス属
Roseolovirus




ヒトベータヘルペスウイルス6A
Human betaherpesvirus 6A

ヒトベータヘルペスウイルス6B
Human betaherpesvirus 6B

ヒトヘルペスウイルス6 (Human herpesvirus 6; HHV-6)は、ヒトを主要な宿主とするヘルペスウイルス9種のうち[1]、Human betaherpesvirus 6A (HHV-6A)およびHuman betaherpesvirus 6B (HHV-6B)の2種の総称である。ウイルス学上はともにベータヘルペスウイルス亜科ロゼオロウイルス属に所属させる。
歴史ヒトヘルペスウイルス6に感染し、細胞核や細胞質に封入体が生じている組織像。HE染色

1986年、ロバート・ギャロの研究チームがエイズ白血病の患者の末梢血由来単核球を培養している過程で、細胞核や細胞内に封入体を生じる大きく屈折性の高い細胞を見出した。電子顕微鏡観察により新奇のウイルスが発見され、Human B-Lymphotrophic Virus (HBLV)と命名された[2][3]。一連の研究から、彼らはHBLVをヒトヘルペスウイルス6 (HHV-6)と改名した[4][5]

まもなくHHV-6は、良く似ているものの区別可能な2つの亜型6Aと6Bに分けられた。HHV-6Aは成人由来であることが多くより神経向性が強いのに対し[6][7][8]、HHV-6Bは突発性発疹を呈する乳幼児から検出されることが多い。この2つのウイルスは塩基配列上95%一致している[9]。2012年に公式に2つの種であることが認められた[1]
分類

HHV-6AとHHV-6Bはともにベータヘルペスウイルス亜科ロゼオロウイルス属に所属するが、ヒトを宿主とするロゼオロウイルスとしては他にHHV-7がある[1]。ウイルス学上の学名は長らくhuman herpesvirus 6であったが、2012年に6Aと6Bがそれぞれ独立した種と認められ、その後2015年にhuman betaherpesvirus 6と改名されている。もっとも臨床上human herpesvirus 6(あるいは6A/6B)と呼ぶことは差し支えない。
構造

HHV-6のウイルス粒子は直径およそ200 nmである[3]。外側からエンベロープ、テグメント、カプシドという構造をしている。最外層のエンベロープは、ウイルス由来の糖タンパク質を含む宿主由来の脂質二重膜である。カプシドは正二十面体をしており、その内部に直鎖状二本鎖DNAを含んでいる。
ゲノムHHV-6Bゲノムの遺伝子配置図[10]

HHV-6のゲノムは直鎖状二本鎖DNAから構成されている。両端に8-10 kbの直列反復配列があり、その内部に143-145 kbのユニークセグメントがある[11]。両端の直列反復配列はDRLとDRRと呼ばれており、ここにpac-1とpac-2という、ヘルペスウイルスに共通の分断・パッケージ化シグナルが含まれている。またここにはヒトのテロメアと同じTTAGGGのくり返しが15回から180回含まれている[12][13]。ユニークセグメントにはベータヘルペスウイルス科に共通する遺伝子ブロック(U2-U19)と、ヘルペスウイルス目に特徴的な7つのコア遺伝子ブロック(U27-U37, U38-U40, U41-U46, U48-U53, U56-U57, U66EX2-U77, U81-U82)があり、後者にはウイルスゲノムの複製、分断、パッケージ化に関わる保存的な遺伝子群がコードされている。複製起点(oriLyt)はDNA複製の開始する場所である[10]
ウイルスの侵入
ウイルス受容体

HHV-6のウイルス粒子がヒトの細胞に侵入する際には、補体系の制御に関わるCD46を受容体として利用している。CD46分子にはオルタナティブスプライシングによって少なくとも14種のアイソフォームが生じるが、その全てがHHV-6Aに結合しうる[14]。CD46に結合するウイルス側のリガンドは、gH/gL/gQ1/gQ2から成る糖タンパク質複合体である[15][16][11]
唾液腺

唾液腺が感染源になると考えられている[12]
白血球

T細胞は特にHHV-6に感受性が高いと考えられている[17]
神経系

150以上の検死例の分析から嗅覚組織においてHHV-6の存在量が多く、ここが中枢神経系への侵入点だと考えられている[9]。これは単純ヘルペスウイルスでの知見とも符合している[18]。とりわけ嗅神経鞘細胞がHHV-6の侵入に重要な役割を演じると考えられている[9]
細胞内での活動

細胞へ侵入したウイルスは2通りの感染様式を示す。
活動性感染

活動性感染は、直鎖状のゲノムが環状化することで起きる。この過程は単純ヘルペスウイルスで最初に報告された[13]。環状化のあとimmediate early遺伝子群が発現し、それが転写活性化因子として働くと推測されている[19]。続いて"early"遺伝子群が発現してウイルス由来DNAポリメラーゼを活性化し、ローリングサークル型複製を引き起こす[12]。その結果、ゲノムが直列に長く繰り返したコンカテマーが形成される[20]。コンカテマーはpac-1とpac-2領域の間で分断されて、個々のウイルス粒子へとパッケージ化される[13]
非活動性感染

新たに感染を受けた細胞の全てでローリングサークル型複製が始まるわけではない。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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