ヒトの脳
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ヒトの脳
ヒトの脳と頭蓋骨
脳葉: 前頭葉(赤)、頭頂葉(緑)、後頭葉(青)
概要
由来神経管
器官中枢神経系
神経免疫系(英語版)
動脈内頸動脈椎骨動脈
静脈内頸静脈、内大脳静脈(英語版)
外側:上大脳静脈、浅中大脳静脈(英語版)、下大脳静脈、脳底静脈(英語版)、小脳静脈(英語版)
表記・識別
ラテン語Cerebrum[1]
ギリシア語?γκ?φαλο? (enkephalos)[2]
MeSHD001921
TA ⇒A14.1.03.001
FMA ⇒50801
解剖学用語[ウィキデータを表示]

ヒトの脳(ヒトののう)は、ヒト神経系の中枢となる器官であり、脊髄と共に中枢神経系を成す。は、大脳脳幹小脳に分けられる。脳は、身体の活動のほとんどを制御し、感覚器から受け取った情報の処理・統合・調整、体の各部位へどのような指令を送るかの決定、といった役割を司る。脳は頭蓋骨の中に納められ、それにより保護されている。

大脳はヒトの脳の大部分を占める。大脳は左右の大脳半球に分かれている。大脳皮質灰白質という外層で、内側の白質を覆っている。大脳皮質は、大脳新皮質と、より小規模な不等皮質(英語版)に分けられる。大脳新皮質は6層からなる神経細胞の層構造になっており、不等皮質は3ないし4層になっている。それぞれの大脳半球は慣例的に4つの脳葉に分けられ、それぞれ前頭葉側頭葉頭頂葉後頭葉と呼ばれる。前頭葉は自制心、計画力、論理的思考、抽象的思考といった実行機能(英語版)に関わっており、後頭葉は視覚を受け持っている。それぞれの脳葉において、皮質領域は感覚野、運動野、連合野というように、特定の機能と関連付けられている。左右の半球は形状と機能においておおよそ似通っているが、言語能力は左、視空間能力は右、というようにいくつかの機能は片方だけに存在する。両半球は、脳梁の大部分を構成する交連神経索で連絡される。

大脳は脳幹で脊髄と繋がっている。脳幹は中脳延髄からなる。小脳は小脳脚で延髄と繋がっている。大脳の内部には脳室系(英語版)が存在し、それは互いに接続された4つの脳室で構成され、そこで脳脊髄液が産生され循環している。大脳皮質の下にはいくつかの重要な構造があり、例えば視床、視床上部(英語版)、松果体視床下部脳下垂体、腹側視床(英語版)があり、他に扁桃体海馬といったものからなる大脳辺縁系前障大脳基底核の様々な神経核、前脳基底部構造、3つの脳室周囲器官がある。脳の細胞には、神経細胞グリア細胞がある。脳には860億個以上の神経細胞があり、その他の細胞も大体同程度ある。脳活動は、神経細胞の相互連絡と、活動電位に応じた神経伝達物質の放出によって実現している。神経細胞の接続が、神経路、神経回路、ひいては込み入ったネットワークシステムを形作る。この回路構成全体は神経伝達のプロセスにより動作する。

脳は頭蓋骨で保護されており、脳脊髄液の中に浮かび、血液脳関門によって血流から隔離されている。それでも脳は損傷、病気、感染を受けやすい。損傷は外傷や脳卒中(血液供給の喪失)で起こり得る。脳は神経変性疾患に弱く、例えばパーキンソン病や、アルツハイマー病および多発性硬化症を含む認知症が挙げられる。統合失調症鬱病といった精神障害は、脳の機能不全に関係すると考えられている。脳には脳腫瘍が発生することがあり、それは良性腫瘍のこともあれば悪性腫瘍のこともあるが、ほとんどの場合、体の他の部位から転移したものである。

脳の解剖学的な研究は神経解剖学といい、機能に関する研究は神経科学という。多数の技術が脳を研究するために使われている。他の動物から採取した標本は、顕微鏡で観察するなどして、伝統的に多くの知見をもたらしてきた。脳機能イメージングのような医用画像技術脳波記録は、脳研究にとって重要である。脳損傷を負った患者の診療記録は、脳の各部位の機能に関する洞察を提供してきた。脳の研究は、哲学的、実験的、理論的側面から時と共に発展してきた。近年現われたアプローチとして、脳活動のシミュレーションが挙げられるだろう[3]

人文科学の分野においては、意識の本質とは何かという問題、また心身問題について、心の哲学が何世紀にもわたって取り組んできている。19世紀において骨相学という疑似科学は、人格が皮質の特定の領域に起因すると考えた。サイエンス・フィクションにおいて、脳移植がストーリーで描かれることがあり、例えば『ドノヴァンの脳髄』(1942年)が挙げられる。目次

1 構造

1.1 概略

1.1.1 大脳

1.1.2 小脳

1.1.3 脳幹


1.2 微小解剖学

1.3 脳脊髄液

1.4 血液

1.4.1 動脈系

1.4.2 静脈系

1.4.3 血液脳関門



2 発達

3 機能

3.1 運動調節

3.2 感覚

3.3 自律調節

3.4 言語

3.5 左右差

3.6 感情

3.7 認知


4 生理

4.1 神経伝達

4.2 代謝


5 研究

5.1 手法

5.2 画像

5.3 遺伝子と蛋白質の発現


6 臨床

6.1 受傷

6.2 疾患

6.3 腫瘍

6.4 精神障害

6.5 てんかん

6.6 先天性疾患

6.7 脳卒中

6.8 脳死


7 社会と文化

7.1 心

7.2 脳の大きさ


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