ヒッポリュテー
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アマゾーンと戦うヘーラクレース、紀元前530 - 520年ごろのアッティカの黒絵式壺絵(ルーヴル美術館所蔵)

ヒッポリュテー(古希: ?ππολ?τη, Hippolyt?)は、ギリシア神話に登場するアマゾーンの女王である。長母音を省略してヒッポリュテとも表記される。ヒッポリュテーが持つアレースの帯が、ヘーラクレースの「12の功業」のうち9番目の課題の対象となった。

ヒュギーヌスでは、ヒッポリュテーはアレースとアマゾーンの女王オトレーレーの娘とされる[1]
神話

以下は主としてアポロドーロスに基づく[2]。ヒッポリュテーはテルモードーン河岸に居留するアマゾーンたちを支配していた。彼女は第一人者の徴として、アレースの帯を持っていた。

エウリュステウスの娘アドメーテーがこの帯を欲しがったため、ヘーラクレースは勇者を募り、船で小アジア黒海のほとりに向かった。このとき、イオラーオステラモーンペーレウステーセウスらがヘーラクレースに従ったという。

ヘーラクレースがテミスキューラの港に入ると、そこへヒッポリュテーがやって来て彼らの目的を尋ね、案に相違して帯を与えると約束した。これには、ヒッポリュテーがヘーラクレースを好ましく思った、またはヘーラクレースがヒッポリュテーの姉妹メラニッペーを捕虜とし、この引き渡しの交換条件として帯を要求したという説もある。この時点でヒッポリュテーはすでに帯を渡したともいう。

しかし、女神ヘーラーがアマゾーンの姿をとり、女王がかどわかされようとしていると触れ回ったため、これを聞いたアマゾーンたちが騎乗して港へかけつけてきた。武装したアマゾーンたちを見て騙されたと思ったヘーラクレースは、ヒッポリュテーを殺して帯を奪い、殺到するアマゾーンたちと戦ってこれを退けた。ヘーラクレースはティーリュンスに帰り着くと帯をエウリュステウスに渡し、エウリュステウスは娘のアドメーテーに譲った。後に、ヒッポリュテーが持っていた斧は、ヘーラクレースが奴隷として仕えたオムパレーに贈られ、リューディア紋章となった。
テーセウスとヒッポリュテー

同じくアポロドーロスの「摘要(エピトメー)」によると、ヘーラクレースのアマゾーン遠征に参加したテーセウスがひとりのアマゾーンをさらった[3][注 1]

さらわれたアマゾーンの名は一般にアンティオペーとされるが、メラニッペーまたはヒッポリュテーあるいはグラウケーとする説もある[注 2]。このため、アマゾーンの大軍がアテーナイに押し寄せ、アレースの丘に陣取った。アマゾーンたちの指揮を執ったのは、アンティオペーの姉妹のオーレイテュイアで、スキュティア人と同盟したという[4]。4ヶ月間に及ぶ激戦の結果、アテーナイが勝利した。

このアマゾーンとテーセウスとの間にヒッポリュトスが生まれた。しかし、後にテーセウスがミーノースの娘パイドラーと結婚したとき、彼女は他のアマゾーンたちとともにテーセウスを襲った。彼女はこの戦闘でテーセウスに殺された、あるいはアマゾーンたちの襲撃を知ったテーセウスの仲間が急いで扉を閉め、屋内で彼女を殺したともいう。別の説では、彼女はテーセウスの側についてアマゾーンたちと戦って死んだ、またはペンテシレイアが誤ってヒッポリュテーを殺したともされる。
系図

アイゲウス オトレーレー アレース     
  
                    
           
テーセウス アンティオペー ヒッポリュテー ペンテシレイア 
  
                 

  ヒッポリュトス           



イーピトスの妻

ヒュギーヌスは、ナウボロスの子イーピトスアルゴナウタイのひとり)の妻としてヒッポリュテーの名を挙げている[5]。このヒッポリュテーとアマゾーンの関係は不明である。イーピトスの子にスケディオスエピストロポスがある。二人はヘレネーへの求婚者であり、船40艘を率いてトロイア戦争に参戦した[注 3]。スケディオスはヘクトールに討たれた[7]
脚注
注釈^ ヒュギーヌスでは、ヘーラクレースがヒッポリュテーから女王の帯を奪い取り、そのとき捕虜にしたアンティオペーをテーセウスに譲ったとしている。
^ アポロドーロスは、「シモーニデスによれば」ヒッポリュテーであるとしている。
^ ポーキスから、ヒュギーヌスではアルゴスから参加したとされる。[6]

出典^ 『ギリシャ神話集』第30話「エウリュステウスに命じられたヘーラクレースの十二の功業」
^ビブリオテーケー』(日本語訳『ギリシア神話』)II.5.9
^ 『ギリシア神話』E.1.16-17, E.5.1-2
^ ロバート・グレーヴス『ギリシア神話』第100話「テーセウスとアマゾーンたち」
^ 『ギリシャ神話集』第97話「トロイアに出征した戦士、船の数」
^ 『イーリアス』第2歌517-526行
^ 『イーリアス』第17歌304-311行

参考文献.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ウィキメディア・コモンズには、ヒッポリュテーに関連するカテゴリがあります。

アポロドーロス『ギリシア神話』(高津春繁訳、岩波文庫

ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』(松田治・青山照男訳、講談社学術文庫) (ISBN 4-06-159695-0)

ホメロスイリアス(上、下)』(松平千秋訳、岩波文庫) (ISBN 4-00-321021-2) (ISBN 4-00-321022-0)

カール・ケレーニイ『ギリシアの神話』(「神々の時代」・「英雄の時代」、高橋英夫訳、中央公論社

ロバート・グレーヴス『ギリシア神話』(上・下、高杉一郎訳、紀伊國屋書店

B.エヴスリン『ギリシア神話小事典』(小林稔訳、現代教養文庫) (ISBN 4-390-11000-4)


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