ヒゲクジラ類
生息年代: 漸新世?現世 Pre??OSDCPTJKPgNfossil range
ミナミセミクジラ
地質時代
新生代古第三紀漸新世前期 - 第四紀完新世メーガーラヤン(現世)
分類
ヒゲクジラ類(髭鯨類、Mysticeti)は、鯨偶蹄目に属する分類群で、現生の鯨類を2分する大グループの一つ。リンネ式の分類ではヒゲクジラ亜目またはヒゲクジラ小目の階級が与えられているが[2]、20世紀末にクジラ類が偶蹄目から分岐した系統であることが明らかになったため、ヒゲクジラ類・ハクジラ類の位置づけは今後変更される可能性が高い[3]。 現生のクジラ類は、ヒゲクジラ類とハクジラ類に大きく分かれる。ヒゲクジラ類は歯をもたないが、上顎から生えた「ひげ板」または「鯨鬚」(くじらひげ)と呼ばれる器官を使ってオキアミやコペポーダ等のプランクトンや小魚等の小さなエサを大量に濾しとり、食料とする。主にプランクトンなど浮遊性の生物を捕食するが、イワシ等の小魚(基本的にその海域に多い群集性魚類)の他にイカなども捕獲された個体の胃から確認されている。これらの魚などはほとんど無傷であり、髭板はあくまで濾過するための器官であることは明らかである[4]。ヒゲクジラの食性は種や生息域によっても異なり、髭板の形状もまた食性によってそれぞれ異なる。コククジラのみ、底生生物を捕食することで知られる(濾過摂食を参照)。 鯨髭以外のハクジラ類との差異としては、外観上ではハクジラ以上に頭部が大型化し首が短縮している。噴気孔は二つ。喉に多数の襞を持つ。現生種では最大の動物であるシロナガスクジラが含まれる様に、ヒゲクジラは全体的に大型化する傾向がある、などである[5]。また皮下の形態では、メロンを持たず、また音を発するための器官である発声唇
形態
上顎骨は鼻孔が頭頂部への移動にともなうテレスコーピングと呼ばれる形態を示すが、伸長した上顎骨は眼窩の下を通り(ハクジラ類は上)、鯨髭に広い付着部位を与えている[5]。また、頭骨の形態は左右対称となっている(ハクジラは左右非対称)が、これは高周波エコロケーションに特化した機能を持たないためと考えられる。現生のクジラ類では耳骨が頭骨から遊離しているが、ヒゲクジラはハクジラに比べて遊離の度合いが低く、骨の壁に囲まれている。また、ハクジラでは分離している耳骨の構成要素、耳周骨(蝸牛などを収めた骨)と鼓室胞(耳小骨を収めた骨)が癒合している[7]。これと関連して、ハクジラは下顎に脂肪組織を持つがヒゲクジラは同様の組織を持たない。これはハクジラが下顎をエコーを聴くためのピックアップとして用いるための適応とされるが、脂肪組織を持たないヒゲクジラは下顎を介して音を聴いていないと推測される[8]。
嗅覚に関しては、退化は著しいながらも脳に嗅球を持ち、また嗅上皮には嗅細胞が存在している。これらが機能しているかは定かでないが、餌探しにエコロケーションを使わない彼らが、嗅覚によって餌を探知している可能性が指摘されている。