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慢性外傷性脳症
正常な脳(左)と患者の脳(右)
概要
診療科神経学, スポーツ医学
分類および外部参照情報
DiseasesDB ⇒11042
eMedicine
慢性外傷性脳症(まんせいがいしょうせいのうしょう、chronic traumatic encephalopathy; CTE)とは、頭部への衝撃から生じる脳震盪などの脳への反復する傷害が原因となり、脳変性による認知症に似た症状を持つ進行性の脳症をきたす神経変性疾患[1]。最初にボクサーで見出されたことから俗にパンチドランカー(和製英語)と呼ばれており、他にもパンチドランク症候群(punch-drunk syndrome)、拳闘家痴呆(dementia pugilistica; DP)、慢性ボクサー脳症、外傷性ボクサー脳症、慢性ボクシング外傷性脳損傷などの別称がある。しかしこの疾患は、アメリカンフットボール、アイスホッケー、サッカー[2]、プロレスリング、野球[3]、剣道[4]などの接触の多いスポーツ(コンタクトスポーツ)の多くでみられているほか、脳震盪を繰り返した兵士にもみられている。
頭部(脳)への衝撃による外傷性脳損傷が発症の起因となる点が、アルツハイマー病やパーキンソン病など他の神経変性疾患と異なっているが、タウタンパク質の過剰なリン酸化によって神経変性が引き起こされるタウオパチーであることは共通しており、死後に脳を解剖することによってしか最終的な診断ができないことから、これらの疾患と混同されることが非常に多い。
症状、錯乱、抑うつ状態などの認知症症状を呈する。これらの症状が悪化することによって社会生活だけでなく、日常の生活でさえ著しく困難になる場合もある。アルツハイマー病やパーキンソン病などとの鑑別が困難なことが多い。
具体的な症状は以下の通りであるが、同様に脳の器質的障害に起因する認知症の症状などにも類似した各種障害や人格変化が現れることが往々にある。
頭痛・痺れ・身体の震え・吃音(どもり)・バランス感覚の喪失
認知障害(記憶障害・集中力障害・認識障害・遂行機能障害・判断力低下・混乱等)
人格変化(感情易変、暴力・暴言、攻撃性、幼稚、性的羞恥心の低下、多弁性・自発性・活動性の低下、病的嫉妬、被害妄想等)
ボストン大学医学部のロバート・キャントゥらによる研究では、慢性外傷性脳症の重症度について4段階のステージを設定している[5]。 頭部に強い衝撃を繰り返し受けることがパンチドランカーの危険因子になると一般的には考えられているが、頭部に衝撃を繰り返し受けている全てのアスリートが発症しているわけでは無く、2005年ごろから本格的な研究が始まったばかりの疾患ということもあり詳しいことはまだ判明しておらず、遺伝の可能性や被曝の程度など様々な研究調査が続けられている。 格闘技におけるダウンは、いわゆる脳震盪が最大の要因である。「震盪」とは、激しく揺り動かす・激しく揺れ動く、という意味で、脳震盪とは脳が頭蓋内で強く揺さぶられることを指す。脳震盪により、大脳表面と大脳辺縁系および脳幹部を結ぶ神経の軸が広い範囲で切断などの損傷を受けることで、ダウンが起こる。
ステージ1 頭痛
ステージ2 鬱、攻撃性、怒り、短期間の記憶障害
ステージ3 認知障害
ステージ4 本格的な認知症、パーキンソン病(体の震え、歩行障害)
要因