パワーレンジャー
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この項目では、『パワーレンジャー』シリーズ全般について説明しています。

日本国内で『パワーレンジャー』として放送されたシリーズ1作目については「マイティ・モーフィン・パワーレンジャー」をご覧ください。

2017年の映画については「パワーレンジャー (映画)」をご覧ください。

パワーレンジャーのコスプレ(2013年のニューヨーク・コミック・コンにて)

パワーレンジャー(英語: Power Rangers)は、シーズン30までは日本特撮番組スーパー戦隊」をベースにした実写版スーパーヒーローテレビシリーズを中心とした、アメリカ合衆国メディア・フランチャイズである。

1993年に第1作『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー シーズン1』よりシリーズ開始。以降、シーズン30までは原則として前年に日本で放送された「スーパー戦隊シリーズ」の作品をベースに制作・放送が行われた。

シリーズのクリエイターであるハイム・サバンは、日米の映像を組み合わせたハイブリッド作品が両国の文化の橋渡しになると述べているが、原作が日本の番組であることはアメリカではあまり言及されておらず、原作の制作会社である東映の評価には繋がっていないとされる[1]。このためか、日本においても日本製コンテンツの成功例として紹介されることは少なく、東映やバンダイもパワーレンジャーの存在を積極的に紹介してはいない[2]

田ア竜太によれば予算は日本の3倍程度とされ、戦闘シーンや特撮パートが流用できることから、それ以外の部分に時間をかけることができるというメリットがあるとされる[3]。アメリカオリジナルで番組を作らない理由として、アメリカで特撮番組を作った場合、高額な制作費と長い撮影期間が必要になり[注釈 1]、テレビ番組の予算では作れないというものがあるとされる[5]。毎回新しいモンスターの着ぐるみを制作するということもアメリカでは不可能であり[注釈 2]、東映の特撮関係のノウハウは世界で類を見ないものとされる[6]

ドラマパートの配役は初期メンバーの性別人種などが可能な限り均等化するよう配慮されており[6]、『ワイルドフォース』までは日本版のメンバーの中で女性が1人の場合、主に「イエロー」の性別を男性から女性に変更することもあった。

対象年齢は3歳から11歳までで、日本より少し上となっている[1]。パワーレンジャーがヒットするまでアメリカには子供向け実写番組が存在しておらず、それがヒットした要因の一つと考えられている[7][3]。ハイム・サバンが東映に交渉に訪れた際に「アニメは世界中から(アメリカに)入ってくるからいらない、実写番組が欲しい」、「毎週特撮番組を作れるのは東映だけだ」と鈴木武幸に語ったとされる[3][8]。パワーレンジャー以前にも日本の特撮作品が放送されたことはあったが、地方局のみでの放送だったことや[9]、日本人が主役であることなどから人気を得られず、現地俳優を起用したことが成功の要因の一つとされる[10]
歴史
前史

マーベル・プロダクション社長のマーガレット・ローシュは、東映のスーパー戦隊シリーズに注目していたスタン・リーから幾つかのビデオを観せられた。ローシュはこれらの特撮テレビドラマをかなり気に入り、英語吹き替えのパイロット版を制作し数々の放送局へ売り込みに行ったが、結果は不評に終わったという。

ハイム・サバンは1984年(1985年説も[1])に日本を訪れた際、スーパー戦隊シリーズを視聴し[注釈 3]、興味を持つ[2]。アメリカに帰国したサバンは日本から持ち帰ったビデオテープや玩具をシュキ・レヴィに見せ、「この番組は日本では人気があるが、世界では知られていない」と英語吹き替え版の制作を持ち掛ける[12]

1985年、サバン・エンターテイメント(当時はサバン・プロダクションズ)はスーパー戦隊シリーズの国際放映権(アジア地域を除く[13])を1話につき1万ドルで取得[2]。『超電子バイオマン』の英語吹き替え版を制作を予定していたが、シュキ・レヴィがそれに反対したことにより、ドラマパートをアメリカで新規に撮影する制作法式が考え出され、パイロット版作品『Bioman』を制作[14]。テレビ局に売り込むが[15][16]、どこからも相手にされなかったという[15][2][1]

後年、フォックス放送の子供向け番組放送枠Fox Kidsを運営していたFoxキッズ・ネットワークの社長になっていたマーガレット・ローシュが、ヨーロッパ製アニメの売り込みに来たハイム・サバンに「違うものが欲しい」と要求[2]。それを受けたサバンは「嫌われている作品である」ということを説明した上で『Bioman』を見せる[15][2]。それを見たローシュは、この番組フォーマットなら今度こそスーパー戦隊シリーズを放送できると思い、すぐにサバンとの契約を決めたという。『Bioman』の出演者が役を再演することが年齢的に不可能であることなどから、新規に番組を作ることが決まる[14]
サバン・エンターテイメント時代

1991年、サバン・エンターテイメントから東映にスーパー戦隊シリーズの輸入が打診される[17][6]。サバン側は特撮作品に注目しており、数年かけて研究や準備を続けていた[18]。東映は当初、米国展開に懐疑的だったが、東映スタッフとの会談の席でスーパー戦隊シリーズの主題歌を歌うなどしたサバンの熱意に押され、米国展開を決める[19][20]

ハイム・サバンはスーパー戦隊シリーズのドラマパートをアメリカ向けのストーリーに作り直し、戦闘シーンの映像は可能な限り日本の映像を流用しつつ、必要に応じてアメリカで撮影するというパワーレンジャーシリーズのコンセプトを東映側に提案[20]。東映側はスーパー戦隊シリーズをそのままアメリカで放送したい意向だったが、日本人だけが出演する番組はアメリカでは受け入れられないことと、日本のアクション描写がアメリカの放送コードを通らないなどの事情から、スーパー戦隊シリーズをアメリカで放送することは難しいと言われた東映側は映像をサバン側に送り、アメリカで問題のあるシーンを指摘するように依頼[3][20]。その結果、ほとんどのシーンがアメリカの放送コードに接触すると指摘される[20][3]。その後も交渉が続けられ、完成した作品の形となった[3]、1993年にシリーズ1作目となる『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』がFox Kidsにて放送開始[17][2]。制作にあたって、単独のヒーローに慣れた米国人スタッフには5人組のヒーローへの違和感があったが、「皆で力を合わせ、欠点を補い合って戦う」点が米国になかったアイデアとして受け入れられた[21]

ルーカスライセンシング社のハワード・ロフマンに「日本の実写スーパーヒーローのガラクタではサバンがたいした成功をしないだろう」と言われ[22]、フォックス放送社長のルーシー・サルハニーも難色を示していたが[23]、アメリカで放送されるやたちまち大ヒットとなり社会現象となった[24]。その人気たるや政治家がスピーチ会場にパワーレンジャーを呼び、人気取りをするほどだったという。特にグリーンレンジャー(ドラゴンレンジャー)登場編はアメリカの子供番組史上で最高の視聴率を記録した[24]。本来は全40話で終了する予定だったが、この人気を受けて60話まで延長され[24]、これ以降のシリーズ化も決定した[17]

人気のピークだった1994年には[2]、バンダイアメリカが発売した変形するヒーロー人形は1年で1600万個以上売れるシリーズ最大のヒット商品となり[3]、1994年当時トイザらスのCEOだったマイケル・ゴールドスタインは「(パワーレンジャーの玩具は)入荷した当日か翌日には全て売切れてしまう」と述べ[25][注釈 4]、同年にはハロウィン用のパワーレンジャーコスチュームが過去最高の売り上げを記録している[2]

同年のアメリカにおけるパワーレンジャー関係の売り上げは10億ドルを超えたとされ[4]、全世界合計では16億ドルを記録した[27]。バンダイのパワーレンジャー玩具の売り上げは1993年の27億円から大きく伸び[4][注釈 5]、アメリカ国内では320億円[3]、全世界合計では400億円となった[4]。同年のサバン社の利益は5億ドルを超えたと言われている[28]

アーノルド・シュワルツェネッガー主演の『ジングル・オール・ザ・ウェイ』は、クリスマスにパワーレンジャーの玩具が入手困難になる現象に着想を得て制作された[9][26]

吉川進は「パワーレンジャーで国外にマーケットが広がったことで、終了が決定的になっていたスーパー戦隊シリーズの継続が可能となった」と述べ[29]、東映内部の格付けにおいて最下位に位置していた子供向け番組の地位向上にも繋がったとしている[30]

反ドラッグ・反暴力プログラムNPO、D.A.R.E.のキャラクターに採用されており、キャンペーンCMなどが制作された[2]

1995年にテレビシリーズの成功を受けて[6]、『パワーレンジャー 映画版』が20世紀フォックス主導で制作され[31]、同年の子ども向け映画における興行収入第10位の作品となった[2]


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