パロディ
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星野源の楽曲については「夢の外へ」を、ジャニーズWESTの楽曲については「しあわせの花」をご覧ください。
ミケランジェロ作『アダムの創造』のパロディ作品。パロディ宗教(英語版)の空飛ぶスパゲッティ・モンスター教を象徴する[1]

パロディ(英語: parody、ギリシア語: παρωδ?α)とは、他者によって創作された文学音楽美術演説などを模倣した作品、あるいは作り替える行為そのものを指す。

後述の通り定義は幅広く、ユーモア皮肉などの付加が必須なものから、それらが全くないものまで含む。

辞書においては、Merriam-WebsterやCambridge Dictionary(英語版)では「滑稽さ・ユーモア(comic, ridicule, humorous)」に限定しているが[2][3]Collins English Dictionaryでは「ユーモアないし皮肉さ(humorous or satirical)」と定義されている[4]。自身や自作をパロディ化した場合は、セルフパロディと呼ばれることがある[5][6]

本項では、現代におけるパロディの関連語である盗作(剽窃、盗用パクり)、引用物真似モンタージュオマージュ風刺、モンデグリーン(空耳)、バーレスクカリカチュアパスティーシュインターネット・ミームなどとの定義の相違点についても解説する。

また、パロディの本質は模倣であることから、現代の著作権商標権上でどこまで法的に許容されるのか、各国で合法性が問われることがある。これはパロディの元となった著作物商標を無断で盗用・翻案(改変)していると解されれば、権利侵害に当たる可能性があるためである。一部の国・地域(特に欧州連合加盟国)ではパロディを著作権侵害の例外として法律上明記しているものの[7][8]、具体的にどのような要件を満たせばパロディ作品が合法と認められるのか、司法判断の場ではケースバイケースで線引きされている。本項ではパロディに関連する各国の代表的な判例も紹介する。

誤用だが、模倣自体よりそれの面白さが目立つなど、単に面白いものという意味でパロディという用語が使われる場合がある。
定義

パロディの歴史は紀元前にまで遡り、古代ギリシャ古代ローマ文化にも見受けられるが、当時は必ずしも滑稽さや皮肉、批判などのニュアンスが込められたものばかりではなく、カジュアルな文脈での単純な模倣や類似作品もパロディの定義には含まれていた[9]。パロディ (parody) の語源である "parodia" は、古くは紀元前4世紀のギリシャ哲学者・アリストテレス詩学』に記されており、これが概念用語としてのパロディの初出とされる[10]

以降、パロディの定義は変遷していき複数存在するが、現代の辞書的な意味合いとしては以下の特徴を有する[11]

パロディの元となった作品が一般的に知られており、何を模倣したのかがあからさまであること

パロディの元となった作品のスタイルや特徴を残しつつ、改変していること

パロディ化によって滑稽さや風刺が感じられること

しかし、『パロディの理論』を記したカナダ文学理論研究家リンダ・ハッチオン(英語版) (1947年 -) は、元ネタが著名であることをパロディの必須要件としておらず、類似性よりも差異性 (ギャップ) の際立つ模倣であることに重点を置いた定義を用いている[12][13]:202。

また、滑稽さが全くない、ごく真面目で重厚な作風もパロディの範疇に含めることがある。その典型例がドイツ出身でノーベル文学賞受賞者のトーマス・マン(詳細後述)である[14][15]:657。マンは教養小説の作家に分類されているが[16]、同時にゲーテなどを下敷きにしたパロディ作家としての側面もある[17]
関連語との相違点
盗作、引用、オマージュとの違い
盗作剽窃パクり)や引用とは異なり、元ネタから何らかの改変がなされ、滑稽さや風刺が効いているものを一般的にはパロディと呼んでいる。しかし、改変は全体的に行われている必要はない。たとえば紀元前のホメーロス作品の一節と、17世紀フランスで活躍したピエール・コルネイユの代表的悲劇『ル・シッド』では単語1つ置き換えただけで残りは完全に一致する箇所がある。このようなケースもパロディとみなされている[18]。一方で、ディズニーの『ライオン・キング』は手塚治虫の『ジャングル大帝』と類似性が高いことから、パクリだとの批判を受けることも多い[19][注 1]。これらの例からも分かるように、どこからが盗作になるのか線引きは曖昧である[21]オマージュ: homage)とは元来「尊敬の意を表すること」とされ、そこから転じて、尊敬する作品から影響を受けて別の作品を創作する行為もオマージュと定義される[22][23]。特に映画業界ではオマージュが盛んに行われているとされる[20]。一例を挙げると、米国西部劇映画『荒野の七人』は黒澤明監督の映画『七人の侍』のオマージュだとされている[24]:1。したがって、元ネタとの類似性という観点では盗作、オマージュおよびパロディ間で共通し、識別は個々人の感性に委ねられている[24]:2。しかしあえて相違点を挙げるとするならば、公に発覚することを恐れるのが盗作、公(または元ネタの作者)に発見してもらいたいと願うのがオマージュ、公に気づいてもらわないと困るのがパロディとも言える[25]。オマージュもパロディも、鑑賞する者が元ネタを知っている(知っていてほしい)前提で創作されている[26][11]。しかしオマージュと違ってパロディの場合、必ずしも元ネタに対する尊敬の念だけが創作の動機とはならず、元ネタの作者から反感を買う恐れのあるような作風もパロディには包含される[27]
風刺との違い
先述のとおり、パロディには皮肉・風刺(satire)のニュアンスが付け加えられることがあるが[4]、パロディと風刺の両者を定義上明確に区別することがある[28]。米国の1994年連邦最高裁判決(通称:プリティウーマン判決、詳細後述)によると、パロディと風刺では批評する対象が異なると指摘されている。つまり、パロディが元ネタとなった 作品 に対する批評・コメントであるのに対し、風刺が向く矛先は元ネタ作品そのものではなく 社会 である。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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