パノラミック急行
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ゴールデンパス・パノラミックMOB Panoramic
展望車を連結したゴールデンパス・パノラミック
スイス
運行者モントルー・オーベルラン・ベルノワ鉄道
運行区間モントルー駅 - ツヴァイジンメン駅
所要時間約2時間
運行頻度6往復(うち2往復はVIP座席を設置)
使用車両項目を参照
最高速度90km/h[1]
運行開始1979年(パノラミック急行の運転開始年)
備考数値は2018年10月31日現在[2]
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パノラミック急行(パノラミックきゅうこう、Panoramic Express)は、スイスの私鉄であるモントルー・オーベルラン・ベルノワ鉄道(MOB, フランス語:Chemin de fer Montreux?Oberland Bernois、ドイツ語:Montreux?Berner Oberland-Bahn)に1979年に登場した、パノラマ客車を用いる列車の名称である。2018年時点ではゴールデンパス・パノラミック(MOB Panoramic)と言う列車名で運行している[3]。この項目では、関連する他の列車についても紹介する。
歴史
パノラミック急行パノラミック急行(1984年撮影)

1971年にMOBの社長に就任したエドガー・シュティーガーは、発達する観光バスへの対抗策として、リクライニングシートや天窓、冷房装置を有するパノラマ車両で構成された特別列車を運行する計画を発表した。これらの要素は既に観光バスで人気を博していたものであり、それを鉄道車両に取り入れる事を目指したのである[4]

創立75周年にあたる1976年、MOBはスイスの車体メーカーであるラムザイヤー・イェンツァー(Ramseier & Janzer)と共に初のパノラマ客車であるAs110を完成させ、急行列車に組み込む形で営業運転を開始した[5]。そして1979年には追加発注による4両の増備が行われ、同年の夏にこれらの客車を用いた「パノラミック急行」がモントルー?ツヴァイジンメン間に登場した。冬季以降はツヴァイジンメン?レンク間の延長運転が行われ、1982年には4両のパノラマ客車が新規に製造された事で2往復への増発が実施された[6]

登場当時の動力車は1944年から使用されていたBDe4/4形電車が2両編成で使用されていたが、1983年以降はより強力なGDe4/4形電気機関車へと変更されている[6]
スーパーパノラミック急行

パノラミック急行は豪華さに加え、モントルー?ツヴァイジンメン間を自動車よりも速く結ぶ利便性もあって人気を博し、1985年における1等旅客の収入は10年前の2倍近くにも増加した[5]。それを受け、MOBは同年の夏季ダイヤから新たなパノラマ列車「スーパーパノラミック急行」(Super Panoramic Express)を導入した。最大の特徴は前面展望が楽しめる運転台付きの制御客車(Ast116、Ast117)で、テレビカメラを搭載し2階の運転席からの充分な視界を確保するなど安全面にも配慮した。またバーカウンター付きのサロンカーも製造され、車内ではスタッフによる様々なサービスが施される事となった。動力車にはパノラミック急行から撤退したBDe4/4形が使用された[7]

運転開始当初は3両編成で前面展望も片側のみだったが、1986年に制御客車と動力車(BDe4/4形)の増結が行われた事で編成の両端で前面展望が可能となり、編成も5両編成に増強された他、需要に応じて最大6両編成での運転も実施されるようになった[7]。またこの編成を用いたGFM(グリエール・フリブール・モラ鉄道)(ドイツ語版)への直通運転や、チョコレート工場や博物館、古城見学を行程に含めたモントルー?ブロー・ファブリック間の臨時列車の運行も行われた[8]
クリスタル・パノラミック急行クリスタル・パノラミック急行(1993年撮影)

パノラミック急行やスーパーパノラミック急行の成果は絶大で、1975年から1993年の年間旅客数は250万人に達し、1等旅客からの収入も3.5倍に拡大した。その一方、MOBは1980年代以降更なるパノラマ列車の増備の検討を始めた。今回はMOBのみならず、SBB(スイス国鉄)[注釈 1]RhB(レーティッシュ鉄道)FO(フルカ・オーバーアルプ鉄道)BVZ(ブリーク・ヴィスプ・ツェルマン鉄道)[注釈 2]のメーターゲージ(軌間1,000mm)の路線を有する企業との協議の上、合同で新型パノラマ客車の導入を行う事となった。その結果、RhBのみスイスのシンドラーに車両を発注した一方、MOBを含む残りの企業についてはイタリアのブレダに依頼した[9]

そのうちMOBが導入した客車は4両で、うち2両は前面展望が楽しめる展望室やサロンを設置した制御客車(Arst151、Arst152)である。また中間車として用いられるもう2両の客車は他の鉄道に導入された同型客車よりも一回り幅広の構造となり[9]、中間に挟まれるGDe4/4形電気機関車も客車に合わせた新塗装に変更された。これらの車両を用いた「クリスタル・パノラミック急行」(Crystal Panoramic Express)が営業運転を開始したのは1993年7月3日のことである[5]
ゴールデン・パノラミック急行

1995年には登場から10年が経過したスーパーパノラミック急行のリニューアルが行われ、7月8日から新たに「ゴールデン・パノラミック急行」(Golden Panoramic Express)として再登場した。塗装をクリスタル・パノラミック急行に併せたものに変更しただけではなく、制御客車の前面形状の改造、内装の変更など大規模な改装工事が実施された。動力車についてもBDe4/4形電車からGDe4/4形電気機関車に交換されている[10]

なお、前年の1994年にはGe4/4形電気機関車が登場し、パノラミック急行の動力車としても使用されている[11]
ゴールデンパス・パノラミック

2018年現在、上記の各列車は纏めて「ゴールデンパス・パノラミック」(Goldenpass Panoramic[12], MOB Panoramic)という列車名で運行しており[2]、塗装も1999年以降それまでの青やクリーム色を基調としたものから黒、金色、白色を用いたものに変更されている[13]。新型車両の導入も行われており、2010年以降低床部分を設けた客車が新造され、随時運行に就いている[14]

そして2016年には登場から40周年を迎えたのを機に最初のパノラマ客車であるAs110が登場時の塗装に戻され、5月20日に記念式典も実施された[13]
運行

2018年現在、ゴールデンパス・パノラミックはモントルー?ツヴァイジンメン間に6往復が設定されている。そのうち2往復は前面展望が可能な車両が連結されており、前面の展望席は1等座席よりも格上のVIP座席となっている[2]。編成はVIP座席が存在する列車は7両編成(客車3両+動力車+客車3両)、それ以外の列車は6両編成(動力車+客車5両)で、編成内には低床客車が1両連結されている[15]

これらの列車はツヴァイジンメン駅でBLSの列車と接続しており、スイスの観光地を巡る鉄道ルート、ゴールデン・パスの一翼を担っている[2]


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