パニック障害
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日本の漫画家については「パニックアタック (漫画家)」をご覧ください。

日本のロックバンドUNICORNのアルバムについては「PANIC ATTACK」をご覧ください。

パニック障害

パニック発作が起こった人を別の人が落ち着かせて安心させている
概要
診療科精神医学
分類および外部参照情報
ICD-10F41.0
ICD-9-CM300.01, ⇒300.21
OMIM167870
DiseasesDB30913
MedlinePlus000924
eMedicinearticle/287913
Patient UKパニック障害
MeSHD016584
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パニック障害(パニックしょうがい、英語: Panic disorder ; PD)とは、予期しないパニック発作(Panic attacks, PA)が繰り返し起こっており、1か月以上にわたりパニック発作について心配したり、行動を変えているという特徴を持つ不安障害に分類される精神障害[1]

きっかけのないパニック発作は、4つ以上の特定の症状が急速に、10分以内に、頂点に達する[2]。典型的な悪化の仕方では最終的に広場恐怖症へと進展する[3]。まれに幻聴や幻覚が起こることで知られるが、統合失調症ではない。

精神障害の診断と統計マニュアル』第2版(DSM-II)における不安神経症は、1980年の第3版のDSM-IIIでは本項のパニック障害と、パニックがなく不安-心配-だけが持続している全般性不安障害へと分離された[4]。1992年には、世界保健機関(WHO)の『国際疾病分類』(ICD-10)にも記載された。DSM-5ではパニック症の診断名も併記されている。

近年の研究によってその多くは心理的葛藤によるものではなく、脳機能障害として扱われるようになってきている。具体的には、脳内のノルアドレナリン系の核にあたる青斑核におけるGABA系システムの制御機能障害である[5]

治療には認知行動療法や薬物療法が推奨されている(「パニック障害#治療」を参照)[6]。治療には抗うつ薬が有効だが、ベンゾジアゼピン系抗不安薬が多用されているという2008年の指摘がある[7]。45歳以降の発症では、身体疾患や薬物が原因である可能性がある[8]カフェインを中止することが良い結果をもたらすことがある[3]
定義「精神障害#定義」も参照

精神医学的障害の一種である。
症状

定型的なパニック障害は、突然生じるパニック発作によって始まる[6]。本能的な危険を察知する扁桃体が活動しすぎて、必要もないのに戦闘体制に入り、呼吸や心拍数を増やしてしまう[6]。続いてその発作が再発するのではないかと恐れる「予期不安」と、それに伴う症状の慢性化が生じる。さらに長期化するにつれて、症状が生じた時に逃れられない場面を回避して、生活範囲を限定する「広場恐怖症」が生じてくる。
パニック発作

パニック障害患者は、日常生活にストレスを溜め込みやすい環境で暮らしていることが多く、発作は、満員電車などの人が混雑している閉鎖的な狭い空間、車道や広場などを歩行中に突然、強いストレスを覚え、動悸、息切れ、めまいなどの自律神経症状と空間認知(空間等の情報を収集する力)による強烈な不安感に襲われる。症状や度合は、患者によって様々だが軽度と重度の症状がある。しかし軽・重度患者ともに発作が表れる時に感じる心理的(空間認知など)印象としては、同じような傾向が見られ、漠然とした不安と空間の圧迫感や動悸、呼吸困難等でパニックに陥り、「倒れて死ぬのではないか?」などの恐怖感を覚える人が少なくない。先に挙げた自律神経症状以外にも手足のしびれや痙攣、吐き気、胸部圧迫のような息苦しさなどがあるが、それ自体が生命や身体に危険を及ぼすものではない。

また、パニック発作は時間経過とともに落ち着いていく[9]
予期不安

患者は、パニック発作に強烈な恐怖を感じる。このため、発作が発生した場面を恐れ、また発作が起きるのではないかと想像し、不安を募らせていく[6]。これを予期不安という。そして、患者は神経質となりパニック発作が繰り返し生じるようになっていく。
広場恐怖「広場恐怖症」も参照

パニック発作の反復とともに、患者は発作が起きた場合にその場から逃れられないと妄想するようになる。さらに不安が強まると、患者は家にこもりがちになったり、一人で外出できなくなることもある。このような症状を広場恐怖(アゴラフォビア)という[10]。広場恐怖の進展とともに、患者の生活の障害は強まり、社会的役割を果たせなくなっていく。そして、この社会的機能障害やそれに伴う周囲との葛藤が、患者のストレスとなり、症状の慢性化を推進する。
原因

発作が起こるメカニズムについては、解明がされていない。原因についてもまだ完全に解明されていないものの、脳内不安神経機構の異常によって起きると考えられている。パニック発作や予期不安、恐怖などもこの脳の機能のあらわれで、そこに何らかの誤作動が生じるために起こっていると考えられている。人の脳は、危険を察知すると警告を発するため、外敵や有害物質に対する情報を脳に送る。パニック障害は、この警報システムが誤作動を起こすことで、実際には起きていない危険情報によって生じた恐怖心が自律神経へと伝達されて、交感神経が誤って興奮状態となることで発作が引き起こされる、とする説が有力である。また、ストレスを感じやすい人、ストレスへの対処の苦手な人はパニック障害を発症しやすいというデータがある[11]
生育環境要因
アルコール依存症、薬物依存症、DV、共依存、HSP、PTSD 心的外傷後ストレス障害からなる発育環境を幼少期から持っている者の場合は、これらの環境から離れて自立することで改善されるケースもある。とくにPTSDを持ちながらパニック障害のみの症状を訴えて医療機関に受診するケースがあると治療者も根本的要因が分からないために治療も進まなくなるため、うつ病などの他の症状も訴える場合、ストレスや不安感が増えるごとに症状も増え治療自体が難治化する。親子で共依存の生活を共に送っている場合はどちら側にもこの環境から離れることが互いの治癒になることもある。また、薬物依存などの物や人への依存対象がある際は依存対象に依存する理由とその現実を受け入れた上で離れることが自身の人生を幸せに生きるための治癒をもたらす可能性がある。はじまりに耐え難い経験、恐怖心などを伴うトラウマを受けたあとでパニック障害のような症状出現の可能性は十分にある。PTSDの症状とパニック障害の治療は似て異なるが、パニック状態は同じであることもあり、これらをそれぞれ見極めるためには生い立ち要因を思い出すことが治療に有効である。パニック障害ではなくPTSDの場合はパニック障害と治療法が異なることもあるが、発作の症状出現がPTSDの症状と同じ人がいる。この場合はパニック障害の治療では治らないことがあり人生の半分以上に渡り治療が必要になってしまう者の場合は、周囲にいた人々が自身に与えた影響はどんなものでどんな人物だったか、幼少期の発育環境要因を疑うことで自身の発作がPTSDと認識が変わると症状や治療との捉え方が変わることで発作が自然と改善、根治される可能性もある。ただし強い恐怖心などを伴う際は独断ではなく専門家の指導が必要である。
心理社会的仮説
直接の原因ではないが、ストレスや過労が最初の発作の原因になると考えられている[12]。パニック発作が起きた状況が条件づけられ、しばしばその状況を避けるようになり、積み重なって最終的に広場恐怖が形成される[3]
生物学的仮説
脳のノルアドレナリンにより引き起こされる不安感がいきすぎないように抑える働きのあるセロトニンという神経伝達物質が不足したり、または受容体が鈍くなっているためではないか、という説。また、セロトニンの過剰によるという説もある。選択的にセロトニン系に作用する新しい抗不安薬(SSRI)が開発され、不安障害の治療に中枢セロトニン系が関与していることが明らかとなった。SSRIはほとんどの不安障害亜型に有効であることが明らかになり、古典的な抗不安薬であるベンゾジアゼピンよりも広い適応を有する。セロトニン系抗不安薬は扁桃体に投射するセロトニン系の機能を増強して不安・恐怖を減弱すると考えられる。
薬物による原因
喫煙

喫煙はパニック障害の発症リスクを増加させ、これは広場恐怖症パニック発作を持っているかどうかに関わらない[13][14]


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