パナギア(ギリシア語: Παναγ?α)とは、ギリシャ語で「全き聖」を意味する、生神女マリヤ(聖母マリア)の称号の一つ。日本正教会では「至聖女」(しせいじょ)とも訳される[1]。
また、この称号に由来する名称を持つものとして、生神女マリヤのイコンのうち特定の種別のもの、正教会の主教が用いるペンダント状の装身具、聖体礼儀に用いられる特定のパンの名称、ギリシャのハルキディキ県やキプロスなどにある地名があり、この名を以て生神女マリアを記憶する正教会の聖堂(パナギア聖堂・至聖女聖堂)も多数存在する。 パナギアは、生神女の特定のイコンを指す事がある。このイコンにおいて生神女は、イコンを見る者に直接に相対し、ふつう、「オランテ
イコン
殆どのマリアのイコンと同様、ΜΡ ΘΥ("ΜΗΤΗΡ ΘΕΟΥ"、すなわち "神の母の短縮形) の文字が、童貞女マリア[6]の光背の、上部左右に描かれる。
装身具首座主教が首から胸に掛ける、パナギア・胸掛け十字架・イイススの胸掛けイコン。フィンランド正教会のもの。
正教会の主教が着用する、生神女のイコンを伴った首から掛ける飾りも、原義から拡張されてパナギアと呼ばれる。着用する主教の好みに応じて、簡素にも[7]技巧をこらしたもの[8][9]にも作られる。パヴレ (セルビア総主教)。クロブークを被り、パナギアと胸掛け十字架を胸に掛けている(2005年2月15日撮影)。
正教会の主教が聖体礼儀その他の奉神礼において祭服を着用する際、パナギアや胸掛け十字架が他の祭服の上に着用される[10]。首座主教が完装する際は、パナギアと、胸掛け十字架と、イイススの胸掛けイコンを着用する[11]。主教品はその位に関らず、祭服を着用しない時には、リヤサの上からパナギアのみを着ける[12]。これは、主教と、司祭・修道士を区別する一般的な特徴である。パナギアはふつうは細長い楕円をしており、ミトラ (宝冠)を被せられた装飾が行われている。時々、主教は正方形のパナギアや、ビザンティンの双頭の鷲の形状をしたパナギアをする事がある。後者は特にギリシャの主教にみられる。
主教が聖体礼儀の前に祭服を着用する際、パナギアは彼のところに盆に載せられて持って来られる。彼はこれを両手で祝福し、副輔祭が主教にパナギアを手渡し、主教はパナギアに接吻してこれを首に掛ける。この時長輔祭は振り香炉を振りつつ、以下の祝文を唱える。願わくは神、潔き心(いさぎよきこころ)を爾に造り、正しき霊(たましい)を爾のうちに改めたまえ、恒に(つねに)、今も何時も世々にアミン。[13]
聖体礼儀後、主教は祭服を脱ぐためにパナギアを外し、十字を画き、パナギアに接吻して祭台に置く。信者を祝福するために至聖所から王門を出る前に、祭服を脱いでリヤサを着用してから、主教はパナギアを祝福し、再び十字を画き、首からかける。聖体礼儀の間に、ディスコス(聖体礼儀に用いられる聖器物で、パンを載せる皿)の上に置かれたパン。大きな立方体が「羔(こひつじ)」であり、左側にある三角形のパンが「パナギア」から取られた「生神女」である。パナギア・ハルケオン聖堂(テッサロニキ)。内接十字型の聖堂。軒下の犬葉飾りなど、外部装飾に対する意識が見られる。タソス島(ギリシャ)にある街:パナギア パナギアは、プロスフォラ 「パナギア」と名付けられた多くの島や村がギリシャおよびキプロスに存在する。これらの多くは、現地において生神女に捧げられた聖堂もしくは修道院の名前に由来するものが多い。
祝福されたパン
地名・人名・聖堂名
パナギア (キプロス)
パナギア (ハルキディキ県)(en:Panagia, Chalcidice)
また、パナギアから派生した多くの人名がある。
正教会の聖堂名・修道院の名前にもパナギアとの名が冠せられたものは多いが、著名なものとしては世界遺産であるテッサロニキの初期キリスト教とビザンティン様式の建造物群に含まれるパナギア・ハルケオン聖堂などが挙げられる。
脚注^ ⇒至聖女(ΠΑΝΑΓΙΑーパナギィア)(長司祭長屋房夫によるページ)
^ オランテ…両手を高く掲げる正教会の祈りの形を言う
^ ⇒Panagia
^ 訳語は日本正教会の祈祷文「恩寵を満ち被る者」による。
^ ⇒St. Pauls Irvine
^ 生神女マリヤの別の称号
^ ⇒Orthodox Church in America
^ ⇒Orthodox Church in America
^ ⇒Kyiv Pechersk Lavra
^ ⇒Press releases Archived 2006年3月3日, at the Wayback Machine.
^ ⇒Three Hieararchs Chapel
^ ⇒OCA photo Archived 2006年3月4日, at the Wayback Machine.