バージョン
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ウィキペディアにおけるバージョンについては、「Help:履歴」をご覧ください。

「アップグレード」はこの項目へ転送されています。2018年のアメリカ合衆国の映画については「アップグレード (映画)」をご覧ください。

バージョン、ヴァージョン(英語: version)とは、元々はラテン語の「転換」の意味であり、≪vertere, vers?≫(回転する、向きを変える)から転じて、

1 (個人的なまたは特殊な立場からの)説明, 解釈, 意見, 異説〔of〕

2a 〔文芸作品などの〕改作, 脚色, 翻案, ?版

2b 〔原型・原物に対する〕異形, 変形, 改作, 改造

2c 〔特定の楽曲・役に対する〕(演奏者・俳優などの独自の)解釈, 演奏, 演出

3a 翻訳, 訳文, 訳書

3b [通例 V](聖書の)訳 ? 出典、研究社 新英和中辞典 第6版

などの意味で用いられる。略文は「ver.」。
概要

「バージョン」は工業製品や創作物のような主たる固有物の本来の名称に続けて付加的に記述することで、その固有物のさらに詳しい属性を示す目的で用いられ、メタデータの1つと言える。この語の使用に関しては何らかの定義や規則が存在するわけではない。少数ながら「ヴァージョン」と表記されることもある。

現在では、利用者に対して提供された順番を明示するためにバージョンという語を用いることが多く、このように時系列順を示す目的のものは数字や時にはアルファベットで分りやすく表記されることが一般的である。特にコンピュータ用のソフトウェアでは、出版物の「」のように機能の変更を含む改良版であることを示すことにこの語を用いることが多い。

また、時系列とは別に、1つの主たる製品名、または製品ファミリ名の下で複数の派生型を持つことで製品ラインナップを形成するものでは、各派生型がそれぞれ異なる@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}バージョンと呼ばれる事があり[要出典]、自動車や電気製品での「グレード」などに相当する。また、このように顧客が求める機能や趣向の違いに幅広く対応させる目的とは別に、音楽のような芸術分野では同じ主題に対して異なる作品を生み出した場合の区別にもこの語が用いられることがある。
コンピュータ・ソフトウェア

一般にコンピュータ用ソフトウェアは、単一の製品を一度だけ出荷して終了することは比較的少なく、最初の出荷時の製品に含まれていた不具合を取り除いたり、新たな機能を追加したり、既にある機能を改良したりして、そのたびに以前とは異なる版の製品を出荷することがよく行われている。このような時系列による違いを明示することで、流通や利用段階での混乱を避ける目的で、主たる製品名に「バージョン」や「リリース」、「リビジョン」という形での付加的な名称を加えている[注釈 1][1]

バージョン間の違いはピリオド記号で区切られた数字の並びで表現されることが一般的であり、改良が進むに従ってこれらの数値が大きくなる。数字に加えてアルファベットも用いられる事がある。進んだバージョンのソフトウェアをコンピュータ上で使用可能な状態にすることを「バージョンアップ」と呼ぶ。

初回の正式提供ではまず「1.0」というバージョン番号が与えられ、次回の改良版では、その改変された程度の違いによって大きな変更時(メジャーバージョン)には「2.0」とされたり、中程度(マイナーバージョン)では「1.1」とされ、不具合修正のみなど小さな変更(ビルドまたはメンテナンスバージョン)では「1.0.1」といった具合に表現するのが一般的である[2][3][注釈 2]。また上位の数字が加えられると下位の数字はゼロに戻される(例:1.2.3→1.3.0)。ただし、Windows OS本体および付随するマイクロソフトコンポーネントWin32 DLL、実行プログラム、COMコンポーネント、および.NET Frameworkアセンブリ)のように、ビルド番号は初版からの通し番号となっており、メジャー番号やマイナー番号が変更されてもリセットされずに継続的にインクリメントされる管理方式もある[4]。.NET Frameworkアセンブリの開発においては、典型例としてメジャー番号・マイナー番号に変更があった場合、コンポーネントのインターフェイス互換性が失われていることを意味する規則が提示されている[5]

表記法は「1.0.0」のようにピリオドが2つ以上ある方式と「1.00」のようにピリオドが単一の方式があり、前者ではピリオドが複数あることから一般的な小数点表記と齟齬があるとして疑問を呼ぶことがあるが、ソフトウェアによっては「1.0.10」などのバージョン番号も存在し、必ずしも単一の実数値のようには扱われていない。

正式提供前の開発途上では、進行段階(マイルストーン)に応じて「アルファ版(α)」「ベータ版(β)」「リリース候補版(RC)」に分類され、各段階でのリビジョン番号を付して「1.0.0a1」のように表記するのが一般的である。仕様自体が未定な実験的な段階では「0.8」や「0.9」といったバージョン番号が与えられることもある。正式提供前の先行版は「プリ・リリース」(Pre-release)や暫定版を表す「プリリミナリー」(Preliminary)とも呼ばれる。

同じタイトルのソフトウェアであるが、最初から機能や価格に差異を持たせて複数の派生製品を提供する場合には、それぞれの製品は「バージョン」ではなく「エディション」(edition)と呼ぶことが多い[注釈 3]
音楽

音楽作品の世界では、同一の楽曲を異なる歌手演奏者録音して発表したり、同一の楽曲を違う環境および楽器で録音したり、発表後に改変したりすることによって「バージョン」の違いが発生し、それぞれを「?バージョン(ヴァージョン/Ver)」、「バージョン違い」などと称する。

この場合、各バージョン間には時系列的な前後や録音環境の差異はあっても、音楽作品としての価値に上下関係があるわけではない(ただし、その楽曲を収録した商業製造物としてのレコードCDなどの販売実績、ヒットチャートでの順位等には当然差が出る)。

同じ素材(楽曲)を基にした異なる「作品」が存在するという意味である。

音楽の演奏自体は、100%コンピュータでプログラミングしたものを再生するような場合以外、寸分たがわぬものを再演するのは論理的に不可能で、ある演奏者が同一の楽曲をまったく同じアレンジテンポで演奏したとしても、それが複数回にわたれば微妙な違いが随所に現れ、まったく同じ演奏結果にはならない。

一般に音楽は、レコードCD等の媒体やインターネットを通じて「記録物」として流通する状態と、コンサート会場などで演奏者によって生演奏されている状態で存在するが、音楽における「バージョン」という語彙は、一般的に記録物として発表された(繰り返し再生可能な)状態のものに適用され、生演奏におけるその個々の演奏の「出来栄え」の違い自体を逐一「バージョン違い」と称することはない。

音楽においてバージョン違いが生まれるプロセスには複数あるが、代表的なものとしては以下のとおりである。いずれも記録物として配布された時点で「バージョン」が発生する。
すでに特定の演奏家、歌手など(以下まとめて「演者」)が録音して作品として発表した楽曲(以下「既発表作品」)を、その本人以外の演者が自分の演奏・歌唱であらためて録音して発表する(詳細は「カバー」参照)。
例)「ツイスト・アンド・シャウト」(作詞・作曲:バート・ラッセル・バーンズ、フィル・メドレー)は、アトランティック・レコードに所属していたトップ・ノーツによって1961年に発表されたのが最初。その後アイズレー・ブラザーズビートルズなどがカバーして録音・発表した。カバー・バージョンが発表された時点で、最初のトップ・ノーツ・バージョンは「オリジナル・バージョン」と称されるようになり、その他は「アイズレー・ブラザーズ・バージョン」、「ビートルズ・バージョン」などと呼んで区別することになる。

楽曲を作詞・作曲した者(以下まとめて「作者」)が、特定の演者に提供した自分の楽曲を後にあらためて自分自身の演奏・歌唱で録音する(詳細は「セルフカバー」参照)。
例)「世界に一つだけの花」は2003年3月にアイドル・グループSMAPの歌唱したオリジナル・バージョンが発表され、後に作者である槇原敬之がセルフカバーし、2004年8月に自身のアルバム『EXPLORER』に収録して発表した。「SMAPバージョン」、「槇原敬之バージョン」が存在することになる。この場合、(「楽曲」という観点から見れば「槇原敬之のオリジナル作品」であるが)歌唱した成果物としての「オリジナル・バージョン」はあくまでも先に発表されたSMAPの方である。

特定の演者が、自分自身の既発表作品の元となった楽曲をあらためて演奏・歌唱し、録音して発表する(詳細はリメイク[注釈 4]参照)。
アレンジなどに大幅な改変を施して過去の作品との差別化を図る場合と、作品自体にはあまり手を加えず、録音環境の進歩、演者自身の技術の向上のみを訴求ポイントにする場合がある。一部これを「セルフカバー」と称する場合がある。

特定の作者の楽曲を異なる演者がそれぞれに録音し、ほぼ同時期に発表する(競作)。
例)1979年三浦弘とハニーシックス敏いとうとハッピー&ブルー田辺靖雄がそれぞれリリースした「よせばいいのに」(作詞・作曲:三浦弘)がこれに相当する。

既発表作品をコンサートなどで演奏し、その場で録音した音源を発表する。ライブ・バージョン(古くは「実況録音」)などと称する(詳細はライブ・アルバムを参照)。


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