バンドネオン
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バンドネオン
別称:タンゴ・コンサーティーナ
各言語での名称

bandoneon
Bandoneon
Bandoneon
Bandoneon
班多?手?琴


ブエノスアイレスのバンドネオン奏者
分類

鍵盤楽器 蛇腹楽器 気鳴楽器
音域
機種によって異なる。一例:F3?F6[1]
関連項目


蛇腹楽器

アコーディオン

コンサーティーナ

タンゴ

ダイアトニック

バンドネオンを含む合奏初期のバンドネオン、1905年頃アルフレッド・アーノルド・バンドネオン、1949年頃

バンドネオン(: bandoneon、西: bandoneon)はコンサーティーナ族の蛇腹楽器である。
概説
特徴

蛇腹楽器の中では中型のサイズの楽器である(重さは5キログラムから7キログラムくらいの機種が多い)。アコーディオンが蛇腹の押し引きを左手で行うのに対して、バンドネオンは左右の両手の力で蛇腹の押し引きを行うため、楽器のサイズの割りに大音量を出すことが可能で、鋭い明快なスタッカートなど音のメリハリもつけやすい(これはコンサーティーナ族共通の特長である)。

日本ではタンゴの伴奏楽器というイメージが強いが、海外ではタンゴ以外のジャンルの音楽の演奏でも使われ[2][注釈 1]、また独奏楽器としても高い演奏能力をもつ楽器である。
アコーディオンとの区別

蛇腹楽器の一種であるが、いわゆる「アコーディオン」とは違う楽器であり、バンドネオン奏者に「アコーディオン奏者の○○さん」と声をかける事はタブーとされる[3]

アコーディオンは左右非相称で、左右の筐体は形も機能も異なり、右手側の筐体をバンドで演奏者の体に固定することが多い。これに対して、バンドネオン(および、バンドネオンの原型であるコンサーティーナ)は左右相称であり、左右の筐体は音域が違うものの形や機能は同じで、筐体をバンドで体に固定することはない。詳しくは蛇腹楽器のバンドの説明を参照。

以下に蛇腹楽器の分類におけるバンドネオンの位置を示す。

左右非相称左右相称
押引異音ダイアトニック・ボタン・アコーディオンアングロ・コンサーティーナ
ジャーマン・コンサーティーナ
ケムニッツァ・コンサーティーナ
バンドネオン(ディアトニック・バンドネオン)
押引同音クロマティック・ボタン・アコーディオン

ピアノ・アコーディオンイングリッシュ・コンサーティーナ
デュエット・コンサーティーナ
クロマティック・バンドネオン

楽器の基本構造

バンドネオンはボタン式の鍵盤楽器である。蛇腹の左右に、ボタン鍵盤をそなえた筐体(きょうたい。器械を内蔵した箱)がついており、蛇腹を押し引きすることで空気の流れを作り、ボタン鍵盤と連動したフリーリードを鳴らして音を出す。
外部構造

ケムニッツァ・コンサーティーナと非常に似ている。以下、アルゼンチン・タンゴで最も普通に使われている「ライニッシュ式配列」のバンドネオンの写真を示す。

アルフレッド・アーノルド・バンドネオンの右手側(高音側)。各ボタンにふられた数字や記号にも注目。親指は空気抜きレバーに触れている。手首のあたりは模様付きのグリル(格子窓のような穴をあけた板)になっている。

同、中央。蛇腹の上部に、Ω形の小さな紐通しが2個ついている。この金具はバンドネオンを首から紐で吊り下げるための紐留めで、ドイツで立奏していた時代のなごり。

同、左手側(低音側)。ボタン鍵の並ぶ形が右手側と少し違う。手首のあたりは化粧板の共鳴箱(チャンバー)なので、音色は右手側よりややソフトでくぐもった感じになる[4]

左手側のチャンバーを別角度からのぞくと、半月状の穴が見える。

内部構造

左右の筐体、それぞれの面板と器械部分。

筐体内部、面板側。ボタンと空気穴をつなぐ「てこ」が並んでいる。

筐体内部、蛇腹側。リードとサブタ皮(空気の逆流防止弁)が並んでいる。

蛇腹

蛇腹

蛇腹を思い切り広げた状態

調律などのメンテナンスは、専門の技術が必要である。
歴史

バンドネオンの演奏家や愛好者は世界各地に存在する。本項では、発明国であるドイツと、タンゴと結びついたアルゼンチン、そして日本の状況を述べる。
ドイツ

バンドネオンは、ドイツのコンサーティーナ(ドイツ語ではコンツェルティーナ)を土台として1847年に開発された楽器である。

1829年、ウィーンの楽器製作家シリル・デミアンはアコーディオンを発明した。

ドイツのケムニッツ市の楽器製作家カール・フリードリヒ・ウーリヒ(Carl Friedrich Uhlig)は、ウィーンに旅したときにデミアンのアコーディオンを購入し、それをヒントに、バンドネオンの原型も含むさまざまなタイプのドイツ式コンサーティーナを開発した。

その後、同じドイツの楽器製作家ハインリヒ・バンドは、ケムニッツ市へ旅した際にウーリッヒのコンサーティーナを購入し[5]、低音域を拡張するなどボタン配列に変更を加えて、1847年にバンドネオンを考案した。ただしバンド自身は当初、自分の楽器を「アコーディオン」と呼び[6]、「バンドネオン」とは呼ばなかった。後に、バンドの名前と、アコーディオンの「イオン」を組み合わせて「Bandonion」(バンドニオン)という楽器名が生まれた。Bandonionの綴りが現在のBandoneonに変更された正確な時期や経緯は、不明である。今日のドイツでも一般的には「バンドネオン」と呼ばれるが、ドイツの「生粋の」バンドネオン愛好家や業界関係者にはいまだに「バンドネオンではなくバンドニオンだ」と主張する人が多い(小松2021[2],p.195)。

バンドネオンの発明者はハインリヒ・バンドであるが、バンドネオンの基本原理を開発した始祖はウーリッヒであると言える[7]。また、現代の演奏者が弾いている大型の現代的なバンドネオンを確立したのは、ハインリヒの息子アルフレッド・バンド(Alfred Band, 1855年-1923年)である(小松2021[2],pp.204-209)。

バンドネオンは野外での教会の儀式でパイプオルガンの代用として使われたり、クラシック音楽や民俗音楽の演奏で使用された。

ドイツはバンドオネンの故郷であるが、他の蛇腹楽器との競合などさまざまな理由で、20世紀半ば以降は演奏人口が激減し、今日に至っている。

ウーリッヒのバンドネオン。ボタン鍵の数や配列以外は、現在のバンドネオンとほぼ同じである。

ウーリッヒのラベル。初期型のバンドネオンが描かれている。綴りはまだBandonionである。

バンドネオンを頭上に持ちあげ笑顔で弾くハンス・マーティン・ズーターマイスター(スイス)。本来のバンドネオンは顔の表情も奏法も自由な楽器であった。

アルゼンチン1929年の写真。バンドネオン、バイオリン、ギター。現代のバンド編成では、ギターの代わりにピアノやコントラバスが加わることが多い。

今日、バンドネオンと言えばアルゼンチン・タンゴの伴奏楽器というイメージが強いが、この楽器がドイツからアルゼンチンへ移入された経緯や時期については諸説紛々として明確ではない。最大公約数的な説明としては、1890年ごろにアルゼンチンに持ち込まれ(1880年代、アフリカ系アルゼンチン人のセバスティアン・パルドがタンゴで用いたとする文献もある)、1900年ごろからタンゴの楽器として使われ始め、1910年ごろにはタンゴに欠かせない楽器になっていた、ということである[8]


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