バルベーラ
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バルベーラ
ブドウ (Vitis)
ジョルジョ・ガレシオによるバルベーラの果房の標本図
色黒
ヨーロッパブドウ
別名別名節を参照
原産地 イタリア
主な産地ピエモンテ州モンフェッラート地区、アメリカ合衆国カリフォルニア州オーストラリアアルゼンチン
主なワインバルベーラ・ダスティ DOCG、ニッツァ DOCG、バルベーラ・デル・モンフェッラート・スペリオーレ DOCG
病害春の霜害、ファンリーフ病
VIVC番号974
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バルベーラ (: Barbera) はイタリア赤ワイン用ブドウ品種であり、2010年の時点でイタリアにおいて (サンジョヴェーゼモンテプルチャーノに次いで) 3番目に栽培面積の大きな黒ブドウである[1]。バルベーラは収量が高く、そのワインは深い色味とフルボディ、控えめなタンニン、強めの酸味で知られている[2]

若飲み用の微発泡タイプから長期熟成に耐えるしっかりとしたものまで、さまざまな赤ワインの生産が可能である。最も有名な原産地呼称はピエモンテ州のバルベーラ・ダスティ DOCG (Barbera d'Asti DOCG) であり、2014年に独立し品質の最も高いとされるニッツァ DOCG (Nizza DOCG) も、バルベーラ・ダスティの生産地域内にある下位区分地区である[3]。バルベーラのワインは、若いうちはみずみずしい赤いチェリーブラックベリーのきわめて強いアロマを出す。最も軽口のタイプならばチェリーのほかにラズベリーブルーベリーのようなアロマを帯びるが、完熟度のもっと高いブドウを使用した場合はブラックベリーやダークチェリーのようなアロマとなる。
歴史カザーレ・モンフェッラート市街を描いた18世紀の版画。バルベーラの栽培にかんする最古の記録が、同地の大聖堂に保管されている。

バルベーラはイタリアのピエモンテ州中部、モンフェッラート地方の丘陵地帯に起源をもつと考えられ、同地ではこのブドウが13世紀より知られている[4]カザーレ・モンフェッラート大聖堂収蔵の記録には、1246年から1277年にかけてのブドウ畑の土地貸与契約が記されており、当時のバルベーラの呼び名であった「バルベクシヌスの良いブドウ樹 (de bonis vitibus barbexinis) 」 が植えられていたという記述がある[4]。しかしながら、ブドウ品種学者のひとりピエール・ヴィアラは、バルベーラの原産地はロンバルディア州のオルトレポー・パヴェーゼ (パヴィア県ポー川以南の地域) ではないかと推測している[4]。19世紀および20世紀には、イタリア移民(英語版)の波とともにバルベーラも南北アメリカ大陸に到来し、なかでもカリフォルニア州アルゼンチンに定着することとなった[5]。 ピエモンテ州を揺るがした事件として、1986年に、バルベーラの複数のワイン生産者が自分たちのワインに違法にメタノールを添加するというスキャンダルが発生し[6][7]、19人が死亡したほか、さらに15人が失明した[8]。マスメディアによって悪評が広まった結果、バルベーラの販売と植栽はじりじりと減少していき、1990年代後半にはイタリアで2番目に栽培面積の大きい黒ブドウ品種の座をモンテプルチャーノに奪われることとなった[4]
ブドウ栽培収穫されたバルベーラの果房(ワシントン州コロンビア・ヴァレー AVA)

バルベーラの果房は長円錐形で岐肩があり、着粒密度が高い。果粒は中程度の大きさの長円形をしており、深い青色をしている。果皮は薄くて丈夫であり、蝋質の粉で覆われている[9]。バルベーラはピエモンテ州の主要な黒ブドウ品種のなかで最も果皮の色味が濃く、ネッビオーロの2倍近くのマルビンを含んでいる[10]

バルベーラのブドウ樹は非常に樹勢があり、剪定などを行なって抑制しなければ高い収量を出すことができる[10][11]。収量が過剰だと果実の質が下がってバルベーラ本来の酸味と尖った感じが際立ってしまう[12][11]。ピエモンテ州では、日射量が理想よりも少ないブドウ畑ですら、収量が高く成熟するのがネッビオーロよりも2週間早いことで、このブドウは高く評価されている。そのおかげでアルバのようなピエモンテ州のワイン生産者は、最良の区画をもっと栽培の難しいネッビオーロに割り当てながらも、バルベーラで高品質のワインを生産することができるのである[13]。バルベーラの収穫は、通常9月後半から10月前半にかけてであり[10]、ドルチェット(英語版)の収穫から2週間後というのが通例である[14]。近年では、試験的にバルベーラの収穫を遅らせて糖度を上げ、より重口で果実味を前面に出したワインを作ろうとする生産者もいる。こうした生産者の場合、収穫年によってはバルベーラの収穫がネッビオーロよりも後になることさえある[4]

バルベーラは多種多様なブドウ畑の土壌に適応できるが、肥沃度の低い石灰質土壌や粘土質のローム層において最もよく繁茂する傾向にある[15]砂質土壌は樹勢と収量を抑えるのに役立つ。長い歴史をもつ多くのブドウ品種と同様、バルベーラにも突然変異体クローンの発生がみられ、さまざまなクローンやバイオタイプ(同一の遺伝子型をもつ生物型)が確認されている(バルベーラ・グロッサ (Barbera Grossa) など)[10]。それぞれのクローンは果房の大きさや形状で識別でき、果房の小さなクローンのほうが高品質のワインを生み出す。近年、ブドウ栽培家たちはバルベーラの葉巻ウイルスに対する耐性を高めるために、クローンの選別に努めている[16]
ワイン醸造ピエモンテ州で生産されるバルベーラ・ダルバのワイン

バルベーラを用いるワイン生産者たちは、このブドウのもつ強い酸味と中程度の渋味にかんして、さまざまな対策をとっている。もっとも一般的な方法は、酸味と渋味の弱い品種をブレンドすることで、最終的によりまろやかでバランスのとれたワインにするというものである[17][5]

1970年代にフランスのワイン醸造学者であるエミール・ペイノー(英語版)は、バルベーラを使用するワイン生産者に、オークのスパイス的なニュアンスと酸素化を加えてワインをまろやかにするため、オークの小樽を使って発酵と熟成を行なうことを勧めている[5]。添加された酸素は、バルベーラの還元しやすい性質を抑えて不快な硫化水素臭 (還元臭) の発生を防ぐともされている[5] 。オーク由来の多糖類はバルベーラの濃醇さを高めるということが判明している[18]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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