バルドル
光の神
盲目のヘズの手で刺殺されるバルドル。18世紀のアイスランドの写本『SAM 66』より。
住処ブレイザブリク
配偶神ナンナ
親オーディン, フリッグ
子供フォルセティ
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バルドル(古ノルド語: Baldr、Baldur、英語: Balder)は、北欧神話の光の神である。
後述の『スノッリのエッダ』では、最も賢明で、美しく光り輝く美貌と白いまつ毛を持ち、雄弁で優しいとされ、やや優柔不断な面もあったが彼の裁きは不変であるといわれる[1]。
両親はオージン(オーディン)とフリッグ[2]、妻はネプの娘ナンナで、彼女との間に息子フォルセティがいる[3]。ブレイザブリク(ブレイダブリク、ブレイザブクリク)という館に住み[1]フリングホルニという船を所有している[4]。
両『エッダ』においては、ロキの奸計により異母弟ヘズにより殺されるが、ラグナロクで世界が滅びた後に現れる新世界に甦り、ヘズと共に暮らすとされている。罪なくして一度死んだ後に復活するという神話は、キリスト教の伝播に伴ってその影響を受けたものとも考えられている[5]。山室静によれば、バルドルはサガなどでは戦士とみなされており、彼が神として崇拝されていた形跡はないという[6]。
『エッダ』
『古エッダ』詳細は「バルドルの夢」を参照
『古エッダ』の詩『バルドルの夢』では、バルドルが悪夢を見たことを心配したオージンが自らニヴルヘル(en
)に下り、死んだ巫女を目覚めさせて、バルドルの運命を尋ねる。詩は、バルドルがヘズに殺されること、ヘズに対し復讐をするのがリンドとオージンの間の子として生まれ1夜で武器をとるヴァーリであることを伝え、互いの正体を知った後に巫女がオージンに帰郷を勧めるところで終わる[7]。ヴァーリによるヘズへの復讐は、『古エッダ』の『巫女の予言』[8]、および『ヒュンドラの歌』第29節[9]において説明されている。
『ギュルヴィたぶらかし』ロキにそそのかされたヘズに射られて倒れたバルドル。アーサー・ラッカムによる(1901年)。ヘルモーズを迎えるバルドルとヘル。18世紀のアイスランドの写本『NKS 1867 4to』より。
『スノッリのエッダ』第一部『ギュルヴィたぶらかし』[4]では、『古エッダ』とはまた異なるエピソードが語られている。
バルドルは神々の中でもっとも美しく万人に愛された。ある日から悪夢を見るようになると、これを心配した母フリッグは世界中の生物・無生物に彼を傷つけないよう約束させた。そのため、いかなる武器でも彼を傷つけることは出来なくなった。だがこのとき実は、たった一つ、ヤドリギだけは若すぎて契約が出来ていなかった。
傷つかなくなったバルドルを祝い、神々はバルドルに様々なものを投げつけるという娯楽にふけっていた。だが、ヤドリギのことを知ったロキが、バルドルの兄弟で盲目のために遊戯の輪から外れていた神ヘズをたぶらかし、ヤドリギ(ミスティルテイン)を投げさせた。これによりバルドルは命を落としてしまった。