バルコ・スキャンダル
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バルコ・スキャンダル(BALCO scandal)とは、2003年夏に発覚したアメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ・ベイエリア栄養補助食品会社であるバルコ(BALCO)がアスリートに検査で検出されない運動能力向上薬物を提供していたとされるスキャンダルである。

疑惑は陸上競技界から野球界やボクシングにまで広がり、数多くのアスリートが運動能力向上薬物を使用していた事実が明らかになった。
経緯

バルコ(BALCO)社は1984年に、ビクター・コンテによって設立された[1]。バルコ社は1988年から2002年にかけて運動能力向上薬物を提供していた[2]。コンテが禁止薬物の提供を認めたと報道された顧客は陸上競技選手15人、NFL選手7人、メジャーリーグベースボール(MLB)選手5人の計27人。陸上競技のマリオン・ジョーンズティム・モンゴメリドウェイン・チェンバース、MLBのバリー・ボンズゲイリー・シェフィールドジェイソン・ジアンビ、NFLのビル・ロマノフスキーといったスポーツ界の一流選手も名を連ねていた[1]

2003年の夏に全米反ドーピング機関(英語版)(USADA)に匿名の人物から使用済みの注射器が送り付けられた。USADAは10月16日、送られてきた注射器に残されていた物質は今まで発見されていなかったアナボリックステロイドテトラヒドロゲストリノン(通称クリア、略称THG)であると発表した。更に、注射器を送った人物はバルコ社が薬物の供給元であると指摘している事も明らかにした[1]。10月28日にはアメリカ食品医薬品局(FDA)がTHGを違法薬物に指定し、「摂取すれば健康を害する」と警告した[3]。同年秋、連邦大陪審はバルコ社の脱税疑惑を追及するため、複数のアスリートに薬物疑惑について証言させた[4]

2005年10月18日にバルコ社の創業者であるコンテに懲役4か月と保護観察4か月の判決が下った。コンテは禁止薬物の取引と資金洗浄の罪を認めており、司法取引によって大きく減刑された[5]
陸上競技への影響マリオン・ジョーンズ

2004年6月24日、サンフランシスコ・クロニクル紙によってティム・モンゴメリが2003年の連邦大陪審においてヒト成長ホルモン(HGH)やTHGの使用を認めていたと報道された。モンゴメリは自身に薬物を提供していたコンテがバリー・ボンズにもステロイド剤のウィンストロールを提供していたとも証言していた[1]。バルコ社の捜査時に明らかとなった証拠や他の選手の証言から違反が確定し、2002年9月に男子100m走で出した9秒78の当時世界新記録を含む2001年3月末以降の全ての記録の抹消が決まり、2005年12月14日に引退に追い込まれた[6]

モンゴメリの妻のマリオン・ジョーンズはバルコ社との関わりやTHGの使用について否定を繰り返した。コンテは2004年12月2日にテレビ番組内で「ジョーンズがパフォーマンスを高めるために薬を使っていた」と発言[7]。これに対してジョーンズは大陪審への出廷とコンテが行った中傷に対する裁判に備えて弁護人を雇った。しかし、2007年10月5日にホワイト・プレインズ連邦地裁にて、連邦捜査官がドーピングに関する調査を行った際にステロイドホルモン剤の使用を否定したのは偽証であったと認める証言を行い、同時に現役引退を表明した[8]国際オリンピック委員会(IOC)は12月12日にシドニーオリンピックの陸上競技で得た3つの金メダルと2つの銅メダルを全て剥奪する事を正式に決定した[9]2008年1月12日に薬物疑惑に関する捜査で偽証を行った罪で禁錮6か月の判決が下った[10]テキサス州サン・アントニオの刑務所に3月7日から服役し、9月5日に出所した[11]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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