バルカン人
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バルカン人(バルカンじん)またはヴァルカン人(ヴァルカンじん、: Vulcan)はアメリカのサイエンス・フィクション・テレビドラマ『スタートレック』シリーズに登場する、架空の種族(異星人)である。母星はバルカンヴァルカン)。バルカン人であるスポック(中央)とその父サレク(左)および母アマンダ(右) 1968
概要

『スタートレック』全シリーズを通じて登場する「徹底した論理的思考と無感情」が特徴の異星人で、地球人と最も友好的な種族のひとつ。血気盛んに描かれる地球人の女房役のような立ち位置の異星人。自他ともに「感情はない」と言うものの、太古には地球人とは比較にならないほどの粗暴さと激しい気性を持っていた。しかし哲学者スラクの教えと厳しい修行によって感情を抑え込み、氷のような冷静さと論理的思考の化身となる(この粗暴さを継承した種族が狡猾な悪役として描かれるロミュランである)。

2063年に光速を突破する技術を発見した地球人が、初めて遭遇した異星人でもある(映画第8作「ファーストコンタクト」)。

全シリーズを通して、地球人とよく意見が相違するものの決して敵対することはなく、信頼のおける種族である。主要登場人物としては『宇宙大作戦(TOS)』及び『スタートレック:ストレンジ・ニュー・ワールド(SNW)』のスポック副長、『スタートレック:ヴォイジャー(VOY)』のトゥヴォック保安主任、『スタートレック:エンタープライズ(ENT)』のトゥポル副司令官が挙げられる。その他サブレギュラーやモブにも登場が多い。

地球人とのファーストコンタクト2063年4月5日であり、これは公式上地球人初の異星人との接触となる(あくまで公式なのは、1947年にはクワークらが、1950年代にはトゥポルの曾祖母がすでに地球に降り立っているため)。恒星間航行を習得した人類(地球人)の先輩格にあたる種族で、技術的な成熟過程にあった人類に精神的な成熟を要求し、恒星間航行を2151年まで差し止めた歴史もある。

2150年代までは地球人とは敵対しないまでもギスギスした関係であり、アンドリアとも明確に敵対するが、ジョナサン・アーチャー船長の仲介もあり徐々に地球・アンドリアとも関係が軟化、2161年には地球、アンドリア、テラライトとともに「惑星連邦」を設立するに至る。しかしながらダイリチウムの枯渇が深刻化した31世紀ごろに連邦を脱退しバルカン星は「ニバー」と改名される。ただし気難しい性質は変わらないものの地球人に対して敵対することはなく、U.S.S.ディスカバリーのバーナム船長やサルー副長らの尽力で暫定的に連邦に復帰する。
身体的特徴

尖った耳・釣りあがった細い眉毛・つむじからまっすぐに伸びた髪型・細身の体形などが外見上の特徴であり(スタートレック:エンタープライズでは太目のバルカン人も出ている)、高い知性を有するヒューマノイド、論理的で自制心が非常に強いという特徴で描かれている。ベタゾイド人(1701-Dのカウンセラーであるディアナ・トロイおよびその母親ラクサナ・トロイ)ほど強力ではないが、長く種族間で磨き上げたテレパシー能力があり、触れた相手と精神的にも接触することができ、使い方によっては気絶させる事も出来る。心臓人類と逆の位置にあり(宇宙大作戦「宇宙軍法会議」では心臓の鼓動音が確認されているのに、宇宙大作戦「細菌戦争の果て」では心臓そのものが無いと描写される等の矛盾がある。またスター・トレック BEYONDでは人間の肝臓の位置に心臓があることになっている)、血液を元とする緑色で、母星は大気が地球より希薄な上、高重力に適応しているために強靭な身体機能(筋力、瞬発力は人間の三倍とされている)を持っている。寿命は地球年で200年である。砂漠地帯に注ぐ強い日差しから目を守るためにまぶたは二重になっており、地球人なら失明してしまうほどの強烈な光にも耐えることがある。(宇宙大作戦のエピソード「デネバ星の怪奇生物」、スタートレック:エンタープライズ「狙われた地球大使館」)

感情的な反応を強力な自制心で押さえ込むことを、強い思想的信条(宗教戒律?)としており、論理的であることを尊ぶ。儀式による精神性の追求を行い、宇宙探査も彼等にしてみれば、他種族との交流によって自らの精神性を高める修行のひとつであるようだ。そのため、ヴァルカン船は攻撃力も防御力、解析力もあまりなく、時代差による技術の問題もあるであろうが、『スタートレック ファーストコンタクト』ではU.S.S.エンタープライズEを探知できなかった。論理的であるが非情ではなく、人類のことは感情的で未成熟な種族と見なすことも多い半面、活力に溢れた魅力的な種族とみなすこともある。論理的でない相手・事象には「非論理的だ」というのが有名である。また、歳を重ねることも、経験によりさらに高次な論理的精神を有することができると考え、人間のように加齢に対する嫌悪感は全くなく、寧ろ肯定的に捉えている。

『スタートレック』シリーズの世界では、その論理的な判断力や学究的姿勢が要職や科学士官に打って付けという暗黙の了解もあるらしい。カーク船長と(ハーフ・ヴァルカン人の)科学士官スポックのコンビ(宇宙大作戦シリーズ)は有名だが、これもアーチャー船長と科学士官/副司令官のトゥポルという前例があってこそ、という説が出ている。精力的で機知に富む地球人と精神性と論理を尊ぶヴァルカン人の組み合わせは、興味深い相互作用効果を生むようだ。熱血漢のカークが思わず漏らしたスラング(例えば「光子魚雷をぶちまけろ!」など)に対して、スポックが「船長、その表現は非論理的です」などというやりとりも面白い。レナード・ニモイによるヴァルカン・サリュート(英語版)

人指し指と中指、また薬指と小指をそれぞれくっ付け、中指と薬指の間と親指を開いて、相手に掌を見せつつ、「長寿と繁栄を」"Live long and prosper"と言うヴァルカン式挨拶(ヴァルカン・サリュート(英語版)"?")は有名で、スタートレックファンの間で広く知られるが、しばしば他のSF作品などの中でも、パロディとして登場している。この手の形は、地球人には先天的にできる人とできない人がいる。

また、片眉を吊り上げて否定的驚きを表すこともあり、スポックが頻繁に見せる。さらにヴァルカン・アタック(Vulcan nerve pinch, ヴァルカン神経掴み)と呼ばれる、首の付け根の辺りを強く掴んで神経を圧迫することで相手を気絶させる攻撃ができる。この技はヒューマノイド型であれば種族は問わず有効である(ただしボーグは例外)。戦闘を好まないヴァルカン人にとっては、やむをえない時にのみ使用するようだ。このヴァルカン・アタックは非常に強い握力と繊細な指先の感覚が必要であり他種族では習得が難しい。映画『ST3』においてスポックがドクター・マッコイに乗り移っている時に試みた際には失敗している。新スタートレックに登場するアンドロイド・データはこれを簡単にやってのけ、スポックから「やるね(Not bad)」と称賛を受けた。

ロミュラン人とはもともと同一種族であったが古代に分離している、ロミュラン側は非常に感情的で攻撃的である(後述)。スポックがロミュランとバルカンの再統一を目指した後、3189年までには”ニバー”として再統一がされている(『スタートレック:ディスカバリー』シーズン3)。

宇宙大作戦の時代の後付け設定では「男性名は必ず『S―』、女性名は必ず『T'-』から始まる」とされていたが、宇宙大作戦の劇場版以降の作品ではなかったことにされている。ちなみに、英語の綴りは、トゥヴォックは「Tuvok」、トゥポルは「T'Pol」(後者は「T」の後に母音がない)と、明確に区別されている。
シリーズ中でのバルカン人(ヴァルカン人)の描写

ポンファーと呼ばれる7年毎の発情期があり、本来感情を抑制することを尊ぶヴァルカン人にとっては、自己嫌悪や屈辱的な気分に襲われることもあるようだが、それ以上に身を焦すような焦燥感を含む苦痛を味わい、生殖活動(精神的な接触も含まれるようだ)を行わないと、苦しみの内に死ぬ事もある。このため7歳の時に婚姻した相手と交わるか、船内娯楽設備のホロデッキと呼ばれるバーチャルリアリティで性的な葛藤を処理することになる(VOYトゥヴォックは、妻に会えないのでポンファーの時期をホロデッキで過ごす。さらにトム・パリスハリー・キムにポンファーの時にできた娘から年齢を計算されている)が、特定の異性に熱烈に迫る傾向が強過ぎて、ホロデッキで処理することができない場合もある。また、クナット・カリフィーと呼ばれる決闘でも発情を収めることができる(これは主に婚姻に異議のある者との配偶者を取り合う死闘である)。この期間のヴァルカン人は感情的で少々危険ですらある。なおこの期間が過ぎれば(多少の自己嫌悪は残るものの)元に戻る。

元来、ヴァルカン人は感情的な部分を強く持っており、非常に好戦的ですらあった。しかし哲学者スラクの提唱したイディック(Idic)という思想に基いて、テレパシーを用いた精神融合により感情をコントロールする術を学んだとされる。血気盛んな青年期には感情が暴走する傾向も強いため、このイディックを学ぶ事が必須とされ、論理を否定する者にはヴァルカン・マスターと呼ばれる長老的人物がイディックを教えることになる(VOYのトゥヴォックもこの経験がある)。また、高齢になるとベンダイ症候群という病気(一種の加齢による精神障害)等によって、感情の抑制が効かなくなることもある。

なお、このイディックに不信を抱き、ヴァルカン人と袂を別ったのが、後のロミュラン人とされている。

この生来の感情は、人類のそれよりも遥かに強烈な物で、『新スタートレック』のピカード艦長は惑星間平和調停の付いている最中の、ベンダイ症候群で感情の抑制が効かなく成り始めていたヴァルカン大使サレクスポックの父)の感情を抑えるべく、イディックの真髄とも言える精神融合を行い、そのあまりに強烈な感情に翻弄され、危うく人格を破壊される寸前にまで追い込まれた。無事で済んだのはピカードが長年の訓練によって習得した自己抑制の結果であって、普通の人間なら、あまりの感情の強さに死に至る危険のある行為ですらあった。

自室でも瞑想(日本の座禅と考え方が近い)や、カルトーという一種のパズルなど論理的思考力を養うゲーム等をしている。また、精神融合をするにもこの瞑想をして精神をより研ぎ澄まさなければならない(精神融合が諸刃の剣のため)。


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