バランス釜
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関東ガス器具株式会社(現ガスター)製のバランス釜(1967年製造)。上部の銀色のパーツは蛇口(カラン)で、稼働後はここから湯を隣にある浴槽に供給する。手前についているノズルに接続されたプラスチックのパーツはシャワー。

バランス釜(ばらんすがま)は、バランス型風呂釜の通称で、自然給排気(: balanced flue)(BF)式[1]の給排気(英語版)を採用したガス風呂釜である[2]

1965年にガスターが他に先駆けて開発した[3]このバランス釜は公団住宅向け需要を中心に全国的に普及していったが、その後は屋外壁掛け式の給湯器が主流となったために衰退傾向にある。これは、住宅の集中給湯システム化が進んだことやバランス釜の多くの欠点が忌避されたことなどによる。そして、1990年代以降に建築された住宅では、バランス釜はほとんど見られない。

多くのバランス釜は、シャワーや上がり湯の給湯用に別系統の燃焼部と熱交換器を備えている。しかし、一般的なガス給湯器の給湯能力[4]が16号以上であるのに対して、バランス釜のそれは最大の能力を持つ機種でも8.5号となっており、大きな差がある。

かつては自動湯張り機能を持つバランス釜が製造されていたが、制御基板が浴室内の湿気に耐えられずに誤動作故障を起こすことが多いために製造が中止された。それ以後に発売されたバランス釜は自動湯張り機能を持たない。また、2011年4月以降に発売されたものは全て空焚き防止機能を備えている[5][6]。さらに点火操作及び安全装置の動力源として乾電池(単1型2本)を用いている(必ずアルカリ乾電池を使用。通常使用では約1年で交換。口火を消し忘れると電池は約1ヶ月で消耗)。
特徴

バランス釜は、住宅の浴室内に浴槽と並べて設置され、浴槽用に確保できる面積が圧迫される要因となる。

その一方で、燃焼のための給排気は屋内とは完全に遮蔽され屋外に直結した給排気筒を通して行われる。同一雰囲気の室外に給排気口が出ている構造になっているため、常に吸気と排気のバランスが取れている[7]。つまり、屋内の空気を燃焼に使用し屋外に排気する半密閉式[1]の製品と比較して、風雨の影響による不完全燃焼ひいては浴室内での一酸化炭素中毒事故や空気の汚染が発生しにくい。

浴槽と2本のパイプでつながっている風呂釜内部で湯がバーナーの燃焼で温められて自然対流によって上方の管から浴槽に送り出されると同時にその分だけ浴槽下部の冷水が下方の管から風呂釜内部に引き入れられて、浴槽内の湯が焚かれる。
長所


燃料となる都市ガスもしくはプロパンガスのどちらかと上水道および下水道のみで使用可能である。

使用時に外部電力を要さない(圧電式もしくは乾電池式)ために停電の影響を受けない。

短所


設置箇所は浴槽の隣りでなければならず、レイアウトの自由度に欠ける。

給湯配管を接続すれば、浴室外の他栓への給湯が可能な機種もあるが、その場合は口火を点火しておかなければならず、簡便さに欠ける。

浴槽には追焚用として2つの開口が必要で、固定式もしくは半固定式浴槽を使用したユニットバスには対応できない。

一般的な給湯器と比べバーナー容量が小さく、湯張りにかかる時間が長い。

口火を長時間にわたって燃焼させ続けると、ガス(マイコン)メーターがガスの漏洩として誤検知しうる。

点火操作を何度も繰り返すと未燃ガスが機器内部に溜まり、異常着火による爆発事故を引き起こす場合がある。

浴槽と風呂釜を結ぶパイプの上部まで水を張っていなかったり、浴槽の水栓の摩耗や抜けで水漏れが起こると、空焚きによる火災の危険性がある。

風呂釜設置場所の排水口が詰まると、風呂釜内部が冠水し、その故障や不着火が引き起こされる。

自然循環方式[8]のため、追い焚きだけでは浴槽の上部だけが熱くなる。

入浴時には使用者が浴槽内の湯を撹拌し、その温度を均一化させなければならない。

その原理によって、風呂釜内部に湯垢や汚れが溜まりやすい。


設置の都合上の問題で、浴槽の裏側や風呂釜の裏側は清掃が困難である。

浴室内の壁に外部に直結する開口部を吸排気用に開けておかねばならない。

方式

設置場所によって、BF式には構造が更に細分化される。
外壁(BF‐W)式
建物の外壁に面する浴室内で風呂釜の給排気筒を屋外に出せる場合に用いられる。風呂釜後部からほぼ同じ高さの浴室壁面に設けた四角い開口部から給排気筒が屋外に露出する構造。
二本管(BF-DP)式
風呂釜上部から給気と排気の2本のパイプを延長させて浴室上部の壁面を貫通させる浴室内で不完全燃焼によるガス中毒・
酸欠事故を引き起こす可能性を有する半密閉式燃焼器具である自然排気(CF)式および強制排気(FE)式の:風呂釜の代替として用いられる
チャンバー(BF‐C)式
ガス機器の設置箇所が開放廊下に面しており、そこにチャンバー室と言われる給排気用の専用空間が設けられている場合に用いられる。
ダクト(BF‐D)式
ガス機器の設置箇所が外壁にも開放廊下にも面しておらず、建物に給排気専用のダクトスペースを設けて設置する場合に用いられる。ダクトの形状には、ダクト頂部が風圧帯でない場合に用いられるSEダクトと、頂部を風圧帯内にも出せるUダクトの2種類がある。一般的にダクト内部は、外気に比べて酸素濃度が低くなるため、設置には低酸素環境でも燃焼が可能な、共用ダクト専用品を設置する必要がある。
操作

運転ダイヤルを「着火」位置まで押し回し、その状態のまま着火ハンドルを回転させると、口火がつく。この時、風呂釜の内部で青く燃焼する口火が点火確認窓から見える。口火が着火したら、「給湯」や「追い焚き」のそれぞれの位置まで運転ダイヤルを回すことでバーナーが燃焼する。この点火操作には必ず両手が必要である。

一方、片手で操作可能な方式もあり、運転ダイヤルを「着火」位置まで回した後「口火」位置に戻すと点火するが、点火しない場合はダイヤルを一度「止」位置に戻してやり直す必要がある。

どちらの方式も口火の点火の確実性が乏しく、点火確認窓を定期的に清掃しないと点火状態が見えにくくなる。メーカー各社間でこの問題点について協議が行われ、2011年4月以降に発売されたバランス釜に関しては、乾電池による連続放電で口火に点火させてその着火をランプで表示させる方式に統一された[5][6]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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