バハイ教
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バハイ信教
イスラエルのハイファに位置するバハイの統治機関である、万国正義院の座
信者数500万 - 800万人
成立年1844年
創始者バハオラ
信仰対象唯一神
聖典『アグダスの書』、その他バハイの文献
発祥地イラン
本拠地バハイ世界センター(英語版)[1]
備考最も新しい世界宗教
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バハイ信教(バハイしんきょう)とは、19世紀に創始された宗教[注釈 1]であり、すべての宗教の本質的な価値とすべての人々の一体性を説く[注釈 2]

バハオラによって創始され、当初はイランと中東の一部で発展したが、創始以来、継続的な迫害に直面している[12]。この宗教の信者は500万人から800万人と推定され、バハイとして知られ、世界のほとんどの国と地域に広がっている。
解説

バハイ信教には三人の中心人物がいる。異端として処刑されたバブ(1819-1850)は、イエスムハンマドに似た預言者が間もなく現れると説いた。バハオラ(1817-1892)は、1863年に自身がその預言者であると主張し、追放と投獄の両方に耐えなければならなかった。その息子であるアブドル・バハ(1844-1921)は、1908年に監禁から解放された後、ヨーロッパとアメリカにバハオラの教えを広めるための旅を行った。1921年にアブドル・バハが死去した後、バハイ信教の指導者の地位は彼の孫のショーギ・エフェンディ(1897-1957)に移った。バハイは毎年、宗教の諸事を管理する地方、地域、および国の精神行政会を選出し、5年ごとに万国正義院の選挙が行われる。万国正義院とは、バブの廟の近くの、イスラエルのハイファに所在する、9人のメンバーによって構成される、世界全体のバハイ共同体を治める機構である。

バハイの教えによれば、宗教は、人類の歴史を通して、主要な世界宗教の創始者である「神の顕示者」たちを通して、唯一の神によって整然と累進的な方法で啓示される。ブッダ、イエス、ムハンマドは、バブやバハオラより前に現れた最近の顕示者として記されている。バハイ信教は、世界の主要な宗教は基本的に目的において統一されているが、社会的な実践や解釈の点では異なっていると考えている。バハイ信教は、その中心的な教えとしてすべての人々の一体性を強調し、人種差別、性差別、ナショナリズムの概念を明確に否定している。バハイの教えの中心にあるのは、すべての国、人種、信条、階級の繁栄を保証する統一された世界秩序の目標である[13][14]

バハオラによる手紙や書簡、彼の息子のアブドル・バハによる書物や講話は、バハイの聖典の正典として収集され、整理されている。このコレクションには、バハオラの先駆者とされるバブの聖典も含まれている。バハイ文献の中で著名なものは、『アグダスの書』(最も聖なる書)『ケタベ・イガン』(確信の書)『質疑応答集』『夜明けを告げる人々』である。
語源の説明

バハイ(?????) という単語は、バハイ信教を指す形容詞として、またはバハオラの信者を指す用語として使用される。宗教の正式名称はバハイ信教であり、バハイでもバハイスムでもない(後者はかつて学者の間で一般的であったが、バハイ信教では蔑称とみなされている)[15][13]:xiii。アラビア語のバハ(????)に由来し、これはバハオラが自身の名前として選んだ言葉であり、神の「栄光」や「輝き」を意味する。英語では一般的にb?-HYE(/b??ha?/)と発音されるが、アラビア語のより正確な表記はb?-HAH-ee(/b??h???i?/)である。

文字の上のアクセント記号は長母音を表し、1923年にバハイによって採用されたアラビア文字とペルシア文字の音訳システムに由来し、それ以来、ほぼすべてのバハイの出版物で使用されている[15]。バハイは英語で記述する際、Baha?i、Bab、Baha?u'llah、?Abdu'l-Bahaの正書法を好む。アクセント記号が使用できない場合は、Bahai、Baha?i、Bahaullahareが使用されることが多い。
信条

バハオラの教えはバハイの信仰の基礎を形成している。これらの教えの中心となるのは三つの原則であり、それはすなわり、神の一体性、宗教の一体性、人類の一体性である。バハイは、神が定期的に聖なる使者を通して自身の意志を明らかにすると信じており、その目的は人類の性格を変革し、使者の呼びかけに応える人々の中に道徳的、精神的な資質を発展させることである。宗教はこのように、秩序があり、統一され、時代から時代へと進歩していくと考えられている[16]

バハイの書物では、宇宙の万物の創造主である、唯一の存在であり、人格的で、近づくことはできない、全知にして遍在する、不滅で、全能の神について記述している[17]。神と宇宙の存在は永遠であり、始まりも終わりもないと考えられている[18]。 神には直接到達することはできないが、創造を意識し、意志と目的を持ち、それは神の顕示者と呼ばれる使者たちを通して表現されると考えられている[19]。バハイの神の概念は、すべての存在の源であり、人間の美徳の知覚を通して知られている「知ることのできない本質」である。別の意味では、神についてのバハイの教えも汎神論的であり、すべてのものに神の兆候を見ているが、神の現実は高貴であり、物理的な世界を超えている[20]

バハイの教えは、神は人間が完全に理解するにはあまりにも偉大であり、それらに基づいて、人間は自分自身で神の完全で正確なイメージを創り出すことはできないと述べている[21][22]。そのため、神に対する人間の理解は、顕示者の人格を認識し、顕示者を介して示される神の啓示を理解することによって達成される[21][22]。バハイ信教では、神はしばしば称号や属性(たとえば、「力に満ち給う御方」、「すべてを愛する御方」など)によって言及され、一神教にかなりの重点が置かれている。バハイの教えでは、これらの属性は神に直接適用されるものではなく、神性を人間的な言葉に翻訳し、人々が神を礼拝する際に自身の属性に集中し、精神的な道における潜在能力を発展させるのを助けるために使用されるとしている[21][22]。バハイの教えによれば、人間の目的は、祈り、内省し、他者への奉仕などの方法を通して神を知り、神を愛することを学ぶことである[21]
宗教

累進的な宗教的啓示についてのバハイの観念は、世界のよく知られた宗教の妥当性を受け入れることに帰結し、その創始者や中心的人物が神の顕示者とみなされる[23]。宗教の歴史は一連の制度として解釈され、各顕示者はより広範で高度な啓示をもたらし、それは聖典のテキストとして表現され、多かれ少なかれ信頼性をもって歴史を通して受け継がれるが、少なくとも本質的には真実であり[24]、それが表現された時代と場所に適している[18]。特定の宗教的な社会的教え(たとえば、祈る際の方向性や食事制限)は、その時代と場所により適切な要件が確立されるように、後の顕示者によって取り消されることがある。逆に、ある種の一般的な原則(たとえば、隣人愛や慈愛)は普遍的で一貫していると考えられている。バハイの信念では、この累進的な啓示のプロセスは終わらない。バハイは、バハオラの啓示から1,000年以内に神の新たな顕示者が現れるとは予期していない[25]

バハイは、自分たちの宗教は独自の聖典と法を持つ、他とは明確に異なる系統であり、他の宗教の宗派ではないと主張している[26]。この宗教は当初、その起源からイスラム教の宗派と見られていた。現在ではほとんどの宗教専門家が独立した宗教とみなしており、シーア派イスラム教におけるその宗教的背景は、キリスト教が確立されたユダヤ教の文脈と類似しているとみなされている[27]。バハイは、自分たちの信仰を独立した世界宗教と表現しており、その相対的な年齢と現代的な文脈において他の系統とは異なっている[28]
人間

バハイの書物は、人間には「理性的な魂」があり、それが神の地位と、その創造主と人間の間の関係を認識する独特な能力を人類に与えていると述べている。あらゆる人間は、神の顕示者を通して神を認め、顕示者がもたらした教えに従う義務があるとされる。認識と服従、人類への奉仕、定期的な祈りと精神的な実践を通して、魂は、バハイの信念における精神的理想である神に近づくとバハイの書物は述べている[29]。バハイの信念によると、人間が死ぬと魂は肉体から永久に切り離され、肉体世界での行動に基づいて判断される次の世で生き続ける。天国と地獄は、現世と来世における関係を表す、神に近いか遠いかの精神的状態であり、死後に達成される報酬と罰の物理的な場所ではないと教えられている[30]

バハイの書物は、人間の本質的平等と偏見の廃止を強調している。人類は、非常に多様ではあるが、本質的には一つであると見なされており、人種や文化の多様性は、感謝し受け入れる価値があるものと見なされている。人種差別、ナショナリズム、カースト、社会階級、ジェンダーに基づくヒエラルキーの教義は、和合への人為的な障害と見なされている[31]。バハイの教えは、人類の統合が現在の世界の宗教的・政治的状況における最重要課題であると述べている[18]
社会的原則

1911年から1912年にかけて、アブドル・バハが初めてヨーロッパとアメリカを旅したとき、彼はバハイ信教の基本原則を明確にする公の講演を行った[32]。これらは男女平等、人種の一体性、世界平和の必要性、その他20世紀初頭の進歩的な思想についての教えを説くことを含んでいた。


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