バタリーケージ
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バタリーケージ養鶏場

バタリーケージ(英語: Battery cage)とは、ウズラウサギなどの近代工場畜産業で使用される、動物の飼育装置のことである。ここでは採卵養鶏業で使用されるバタリーケージを中心に述べる。
概要

現代の工場型畜産を代表する家畜飼育システムのひとつである。一羽当たりの飼育面積は極めて効率的に設定され、日本の一般的な飼育密度は1羽あたり370平方センチメートル以上430平方センチメートル未満程度である[1]。四方と床と天井は金網で囲まれ、前面に飼槽と自動給水器のニップルが設置されている。卵が転がりやすいよう床に傾斜が設けられている。

採卵効率の向上に利点があるが、鶏は、羽を広げるに空間と面積が満たず、つつくことのできる敷料や、巣・砂場・止まり木などの習性上必要な素材が設置されず、自然な行動の発現ができず、行動が極端に制限される。2023年2月、欧州食品安全機関は、新しい科学的知見を発表、「採卵のケージ飼育を止める」「過密飼育廃止(最大飼育密度は 一羽当たり2500平方センチメートル )」との推奨事項を提示した[2][3]

バタリーケージは世界で広範囲に使用されている採卵鶏の飼養方法だが、動物の権利動物福祉の観点から問題視されるようになり[4]、ヨーロッパやアメリカを中心に平飼いや放牧システムへの移行が進む[5]。同じケージ飼育でも止まり木などを設置した改良型ケージ(エンリッチドケージ)[6]もあるが、バタリーケージ・エンリッチドケージを含めた「ケージ飼育」そのものが問題視されており[7]、ケージフリー(ケージ不使用)への移行の動きが広まっている[8]

ケージフリーはケージ飼育と比較して鶏1羽当たりの労働コストが36%増加する可能性がある。しかしながら日本の採卵養鶏業者の60%がアニマルウェルフェア(動物福祉)飼養を検討すると回答している[6]。また、ケージフリーへの移行は動物福祉が向上するだけでなく、養鶏業者の満足度も大幅に向上するとされる[9]

近年では、アジア地域においても、世界最大のアジアのレストランチェーンであるジョリビーや、小売業界トップのカルフール台湾、台湾最大のホテルグループがケージフリーに切り替えることを決定するなど[10][8]、ケージ卵の使用を中止する企業が増えている[11]。また調査によると、東南アジアの消費者の大多数が、ケージフリー鶏卵のみを使用することを食品会社に望んでいるという[12]
歴史

バタリーケージに関する初期の記述は、1931年のMilton Arndtの著書「Battery Brooding」[13]に見られる。この中で鶏のケージ飼育は生産性が高いと記述されている。日本は、1953年ごろのバタリー飼育普及当初は木材や竹製で、1955年ごろから針金製ケージが米国から導入され、1966年頃は1000羽以上を飼育する養鶏の9割がバタリーケージ飼育方式を採用した[14]バタリーケージ養鶏場、日本
動物愛護上の問題点卵が転がりやすいよう床が斜めに傾いている、日本

鶏は、巣の中で産卵し、地面をクチバシでつつき、爪で土を掻きエサを探す、止まり木に止まる、砂浴びをする、などの本能的行動欲求[15]を有する。

しかし、1羽当たりのケージ空間は狭隘で、それらの行動を行う資材(巣・止まり木・敷材・砂場)が設置されていないため欲求を満たせず、ストレスを受ける[16]。 巣巣の場所の選択、巣の形成といった巣作り行動は、産卵に動機づけられた行動欲求であり、鶏はケージ内で巣箱が無いことに対する適応が困難である。暗く囲われた巣がない状況では、産卵前になると、往復歩行する。それらができないことに対する不快な発声 (Gakel-call) や心拍数などから、欲求不満が覚知できる[17][18]。またストレスホルモンであるコルチコステロンも上昇する[19]。止まり木(高所)鶏の行動テストでは、止まり木(高所)[20]への欲求が強い。鶏はもともと被食種であり、陸上の捕食者から逃れるために夜になると木の枝に飛び上がって夜を過ごすように進化し、適応した[21]。鶏は日中に高い場所を求めることがあるが、休息や睡眠のために場所を選ぶ夜間は特に高い場所を求めるよう強く動機付けられている。夜中にはほぼ全ての鶏が止まり木で睡眠する[22][17]。採餌・探査行動採餌・探査行動は、ニワトリの通常行動レパートリーの重要な部分である。敷料(床に敷かれた藁や土などの敷材)は鳥の環境の重要な要素であり、鶏が引っ掻いたりつついたりするために広く使用される。バタリーケージに入れられた雌鶏は敷料の対する欲求は高い。鶏は不断給餌されている場合であっても、採餌行動を行う。これはコントラフリーローディング(英語版)と呼ばれる現象で、動物が、与えられた餌か、入手するのに探すという努力を必要とする餌かの両方の選択を提供されたとき、努力を必要とする餌を選択するという、動物生来の行動的動機を示している[23]。砂浴び砂浴びへの欲求も高い。砂浴びは鶏の体のメンテナンスに役立つ意欲的な行動である。砂浴びの際、鶏は、砂のような緩い敷材を羽毛に通して働かせる。この行動は古くなった脂質を取り除き、羽毛の状態を維持するのに役立つ。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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