バタフライ効果
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「バタフライ・エフェクト」と「バタフライエフェクト」はこの項目へ転送されています。その他の用法については「バタフライ・エフェクト (曖昧さ回避)」をご覧ください。
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バタフライ効果(バタフライこうか、: butterfly effect)は、力学系の状態にわずかな変化を与えると、そのわずかな変化が無かった場合とは、その後の系の状態が大きく異なってしまうという現象[1]カオス理論で扱うカオス運動の予測困難性、初期値鋭敏性を意味する標語的、寓意的な表現である[2]

気象学者エドワード・ローレンツによる、「がはばたく程度の非常に小さな撹乱でも遠くの場所の気象に影響を与えるか?」という問い掛けと、もしそれが正しければ、観測誤差を無くすことができない限り、正確な長期予測は根本的に困難になる、という数値予報の研究から出てきた提言に由来する[3]
意味ローレンツ方程式における初期値鋭敏性(バタフライ効果)の例。横軸は時間、縦軸はある変数の変化を示す。水色は初期値 1.001、紫は 1.0001、朱色は 1.00001 で、最初のころはほとんど同じ動きだが、ある程度時間が過ぎたところで全く違った動きになる。

自然現象は、時間の経過に従ってその状態を変える。ニュートン力学では、そのような自然現象の変化の法則、すなわち物体の運動の法則を発見し、将来の状態を予測する方法を確立させていった[4]。このニュートン力学に代表されるように、ある状態の次の状態が確定した法則に従って一意に決まるという考え方は、決定論という呼び方で知られている[5]量子力学の登場によりミクロのスケールでは運動の状態は確率的に決定されることが明らかとなったが、日常的に目にするようなマクロのスケールでは、多くの現象がニュートン力学に従っている[6]。このような決定論的・ニュートン力学的法則に基づく物理法則から将来の状態を予測するには、その系の初期状態(初期値)が先ず必要となる。思考実験の1つであるラプラスの悪魔は、完全無欠な初期状態を得て、そこから過去と未来の全ての正確な状態を予測するが、現実には完全に正確な初期状態を知ることはできない[7]。そのような場合においても、自然科学の研究では、真の初期状態との違いがわずかであれば最終状態においてもわずかな違いしか生まれないだろうと、しばし仮定されてきた[7]。しかしカオスという現象の発見により、決定論的・ニュートン力学的法則に従うような系でも確率論的にランダムかのような振る舞いを起こし、なおかつ、初期値のわずかな差が将来の状態に無視できない大きな差を発生させる現象があることが明らかになった[8][9]

ニュートン力学のように、時間経過とともにその状態が変化し、その変化の法則が決定論のような一定法則で与えられ、初期状態が決まればその後の状態も一意に決定されるようなシステム、あるいは、そのようなシステムを扱う数学分野を力学系と呼ぶ[10]。この分野では、ある系において、初期状態に存在する差が時間経過に従って指数関数的増加を起こし、無視できないほど大きな差を生むとき、その系は初期値鋭敏性を有するという[11]。バタフライ効果とは、この初期値鋭敏性の寓意的な言い換えである[2]。初期値鋭敏性は、カオス理論でカオスと呼ばれる現象の特徴、あるいは定義の一部である[6][注釈 1]。大気運動などは非線形な力学系方程式に従い、なおかつ初期値鋭敏性を有すると考えられている[13]。初期値鋭敏性すなわちバタフライ効果を有するかは、リアプノフ指数が正の値を取るかなどで定量評価される[14]

実在する自然現象に対して力学系の計算モデルを構築して将来の状態を予測するには初期値をモデルに与える必要がある。しかし、実際の予測では予測対象物の観測によって初期値を得るが、この際の観測誤差を無くすことはできない[15]。一方、予測のための計算モデルが初期値鋭敏性を有する場合、初期値のどんなに小さな差も指数関数的に増大し得る。したがって、計算モデルから将来の状態を予測しようとしても、短期間の内ならばある程度の精度で予測可能でも長期間後の状態の予測は近似的にも不可能となる[8][16]。このような性質は長期予測不能性[8] や予測不可能性[16] などとも呼ばれる。このような初期値鋭敏性の帰結である長期予測不能性の存在も、バタフライ効果が意味するものである[17]
表現の由来

バタフライ効果(英語: butterfly effect)という表現は、気象学者のエドワード・ローレンツが1972年にアメリカ科学振興協会で行った講演のタイトル Predictability: Does the Flap of a Butterfly's Wings in Brazil Set Off a Tornado in Texas?(予測可能性:ブラジルの1匹のの羽ばたきはテキサス竜巻を引き起こすか?)[18] に由来すると考えられている[3]。ローレンツによると、ローレンツ自身は初期値鋭敏性の象徴として元々はカモメを使っていたが、この学会の主催者で気象学者のフィリップ・メリリースがに変更したことで、この講演タイトルとなった[19]。蝶の方が儚げで弱そうなものに見えるので、大きなものを生み出し得る小さなものの象徴に最適と判断したのだろうと、ローレンツはこの変更理由を推測している[19]

バタフライ効果という言葉が一般的に引用されるとき、ローレンツの講演タイトルのような形で説明を付けることが多いが、説明に出てくる地名と発生する現象には様々な違いが見られる。ベストセラーとなった1987年のジェイムズ・グリック(英語版)の著書 "Chaos: Making a New Science(邦題:カオス―新しい科学をつくる)では[20]、「今日の北京で1匹の蝶が空気をかき混ぜれば、翌月のニューヨークの嵐が一変する」という形で説明されており[21]、元の講演タイトルと比較すると「ブラジル」が「北京」に、「テキサス」が「ニューヨーク」に変わっている。


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