バスク語
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バスク語

Euskara
発音
IPA: [ews?ka?a]
話される国 スペイン
フランスなど
地域バスク地方
民族バスク人
話者数66万5800人
言語系統孤立した言語バスク語族

バスク語

標準語共通バスク語
方言ビスカヤ方言ギプスコア方言高ナファロア方言低ナファロア方言ラプルディ方言スベロア方言
表記体系ラテン文字バスク語アルファベット
公的地位
公用語 バスク州
ナバラ州の一部
統制機関 エウスカルツァインディア
言語コード
ISO 639-1eu
ISO 639-2baq (B)
eus (T)
ISO 639-3eus
消滅危険度評価
Vulnerable (Moseley 2010)
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バスク語(バスクご、euskara)は、スペインフランスにまたがるバスク地方を中心に分布する孤立した言語で、おもにバスク人によって話されている。スペインのバスク州全域とナバラ州の一部ではスペイン語とともに公用語とされている。2006年現在、約66万5800人の話者がバスク地方に居住し、すべてスペイン語またはフランス語とのバイリンガルである[1]
特徴

文章は一般にラテン文字で表記される。音韻論的な特徴としては舌端音舌尖音の区別があり、文法的な特徴としては能格絶対格を使用するの体系であることが挙げられる(能格言語)。語彙にはラテン語スペイン語起源のものが多く見られる。
言語名

「バスク」の名は英語あるいはフランス語の basque の音訳であり、もともとはローマ帝国期に現在のスペインナバラ州アラゴン州にいたヴァスコン人 (Vascones) の名に由来する。ヴァスコン人とバスク語話者は完全には一致していなかったと考えられているが、中世には Vascones という名称はバスク語を話す人々を指すために使われるようになった。スペイン語における伝統的な呼称 vascuence も「ヴァスコン人の」を意味するラテン語の vasconice に由来する。

バスク語では euskara といい、方言的な変異として euskera, eskuara, uskara, auskera などがある。この語と対比させて用いられる語に erdara(あるいは erdera )というものがある。「外国語」という意味で、かつては特にスペイン語またはフランス語を指して用いられたものだが、これは語源的に erdi「半分」と era「やり方」に分けられ、「舌足らずな話し方/不完全な言葉」という意味であったと考えられている。euskara の eusk- の方の意味ははっきりしていないが、ローマ帝国時代のアキテーヌにいたアウスキ人(羅:Ausci)に由来するという説や、「話す」という意味の動詞の再建形 *enau(t)s-に関係するという説がある。
方言と標準バスク語バスク語の方言

.mw-parser-output .legend{page-break-inside:avoid;break-inside:avoid-column}.mw-parser-output .legend-color{display:inline-block;min-width:1.5em;height:1.5em;margin:1px 0;text-align:center;border:1px solid black;background-color:transparent;color:black}.mw-parser-output .legend-text{}  ビスカヤ方言   ギプスコア方言   高ナファロア方言   低ナファロア方言   ラプルディ方言   スベロア方言   エロンカリ方言 色の薄くなっているところは19世紀の使用域
コルド・スアソによる現代バスク語諸方言の分類

  西部方言  中央方言  ナファロア方言   ナファロア=ラプルディ方言  スベロア方言  19世紀のバスク語使用域

方言は音韻・形態・語彙の地域的な変異が比較的大きく「村ごとに異なる」ともいわれる[2]。伝統的には六つから九つに分類されてきた。

ビスカヤ方言

ギプスコア方言(英語版)

高ナファロア方言(英語版)(北・南)

低ナファロア方言(英語版)(東・西)

ラプルディ方言(英語版)

スベロア方言(英語版)(スベロア方言・エロンカリ方言)

1998年にはバスク語学者のコルド・スアソによって再分類された。彼はいくつかの方言の呼称を改めたほか、低ナファロア方言とラプルディ方言を一つのグループにまとめ、エロンカリ方言と†サライツ方言(死語)を東部ナファロア方言として区別した。彼の分類によれば現在話されている方言は5方言に分けられる。
ビスカヤ方言
ビスカヤ県中・東部、アラバ県北部、ギプスコア県南西部で話されている。スアソは西部方言と呼び、4変種を区別している。
ギプスコア方言
ギプスコア県とナバラ州バサブルア周辺で話されている。スアソは中央方言と呼び、4変種を区別している。
高ナファロア方言
ナバラ州中北部と同州サカナ周辺で話されている。スアソはナファロア方言と呼び、7変種を区別している。
低ナファロア方言
バス=ナヴァールで話されている。スアソはラプルディ方言とともにナファロア=ラプルディ方言と呼んで5変種を区別している。そのうち二つが低ナファロア方言に該当する。アミクセ方言はガスコーニュ語の強い影響を受けており[3]、マルコム・ロス(Malcolm Ross)がメタティピーの例として取りあげている[4]
ラプルディ方言
ラブールで話されている。スアソのナファロア=ラプルディ方言のうち3変種がこれに該当する。
スベロア方言
スールで話されている。ベアルン語の影響を受けている。
標準バスク語

20世紀になってバスク語アカデミーによって標準語として制定された標準バスク語(Standard Basque)が、広く定着している。
歴史イベリア半島周辺の言語分布の変遷
  バスク語

バスク語は現存するどの言語とも系統関係が立証されていない孤立した言語であり、西ヨーロッパで唯一生き残ったインド=ヨーロッパ語族以前の言語(先印欧語)である[5]

紀元前58年に始まるガリア戦争以前から、現在のフランスアキテーヌ地域圏南部(当時のアクイタニア)にはアクイタニア人(英語版)が住んでいた。彼らの話していたアクイタニア語はバスク語の祖先かその近縁の言語である。同時代のイベリア半島で話されていた言語にはバスク語の祖先に当たるものは発見されていないが、ヴァスコン人など現在のバスク地方南部に住んでいた民族の一部がアクイタニア語を話していた可能性がある[6]。アクイタニア語の南限については議論があり、現在のラ・リオハ州カラオラ辺りとする説やアラゴン州一帯とする説がある[7]

アクイタニア語はおそらくアクイタニアの多くの地域で早い時期に話されなくなったが、南西部では使われ続けた。ピレネー南部ではバスク地方全域に広がり、4世紀以降にはラ・リオハやブルゴス県付近にまで分布していたことが当時の地名から確認できる[8]

アクイタニア語を除けば、バスク語の使用を示す最古の文献は中世初期の碑文や写本である。バスク州ビスカヤ県エロリオにあるアルギニェタ墓地の墓石にはバスク語の名前が刻まれている。この碑文は883年のものとされている。また、ラ・リオハのサン・ミジャン修道院で見付かったラテン語の写本に付された注釈にはバスク語が用いられている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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