バスカヴィル家の犬
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この項目では、小説について説明しています。本作を原作とした1959年の映画については「バスカヴィル家の犬 (1959年の映画)」を、2022年の映画については「バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版」をご覧ください。
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バスカヴィル家の犬
著者コナン・ドイル
発表年1901年
出典バスカヴィル家の犬
依頼者ジェームズ・モーティマー博士
発生年1889年?
事件チャールズ・バスカヴィル卿殺人事件
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『バスカヴェル家の犬』(バスカヴェルけのいぬ、The Hound of the Baskervilles)は、アーサー・コナン・ドイルによるシャーロック・ホームズシリーズの長編小説のひとつ。邦訳によっては訳題を『バスカービルの魔犬』としたり、児童向けに『のろいの魔犬』[1]とも)とするものもある。

ホームズの長編は他に「緋色の研究」「四つの署名」「恐怖の谷」があるが、この作品だけが2部構成を採っておらず、また登場人物の過去の因縁話がからむ箱物語形式も採っていない。
あらすじ小説の舞台となったダートムアの沼地
プロローグ
かつて悪行を重ねた当主ヒューゴー・バスカヴィル卿が、最後に女を拉致するという蛮行をした際、どこからともなく現れた大きな犬に喉笛をかみちぎられて殺され、悪行仲間もその後死んだり発狂したという伝説が伝わる準男爵のバスカヴィル家。その現当主のチャールズ・バスカヴィル卿の死体が、屋敷の敷地内の小路で発見された。死体に暴行を受けた痕はなかったが、その顔は苦痛にゆがんでいて、表向きには心臓発作による病死と発表された。だが卿の死体のそばには、巨大な犬の足跡が残されていた。
序盤
ホームズは事件の調査を、チャールズ卿の主治医であり、友人でもあるモーティマー医師から依頼される。妻を亡くして子息のいないチャールズ卿の正統な後継者は、チャールズ卿の甥[2]にあたる若きヘンリー・バスカヴィル卿ただ一人である。しかし、モーティマー医師に伴われてロンドンにやってきたヘンリー卿の元に、バスカヴィルの屋敷へ赴くことを警告する謎の手紙が届く。ホームズは、ロンドンで別の事件に携わる必要があるといい、ワトスンだけがモーティマー医師に同行して、ヘンリー卿の客人として屋敷に招待された。ヘンリー卿の屋敷での、委細ありげな執事のバリモアとその妻のようす、最近監獄から脱獄した男セルデンが近くに潜んでいること、近所に住む昆虫学者のステープルトンとその美しい妹ベリル嬢の行動など、ワトスンは見聞きしたことをホームズに向けた手紙や自らの日記に綴る。バリモアとその妻が、夜間に蝋燭を灯して振り回すという不審な行動の理由はなぜなのか、凶悪な殺人犯セルデンが、なぜこの地を去ろうとしないのか、ベリル嬢はなぜワトスンや、彼女に求婚するヘンリー卿に、この場所から立ち退くよう懇願するのか。そして、ワトスンが湿地帯ではっきり聞いた恐ろしい唸り声は「魔の犬」の咆哮ではないのか……。
中盤
やがて、脱獄者セルデンが、バリモアの妻の実弟であることが判明した。蝋燭を振り回していたのは、合図を送るためだった。さらに、それらの誰でもない未知の男が近くの古代遺跡に潜んでいて、毎日少年に食料を届けさせていることを、ワトスンは聞いた。その未知の人物の正体を確かめようと決心したワトスンは、遺跡へと続く丘を登り、男が潜んでいると思われる石室を訪れた。石室の中には毛布や台所用品、缶詰などがあり、確かに人間が生活しているようだ。さらにはワトスンの行動を記したメモも見つかった。自分が見張られていることにワトスンは驚く。背後に人の近づく足音を聞いたワトスンは、物陰に身構えてピストルをかまえた。すると聞きなれた声がした。「夕焼けがきれいだよ。ワトスン。出ておいで」。この地方の旅人という恰好をしている男の顔は、まぎれもなくシャーロック・ホームズだった。ホームズは、ベイカー街遊撃隊のカートライトを通じて、独自に調査を進めていたのだ。ワトスンがロンドンに送った郵便も、カートライトがここに転送していた。ホームズはこれまでに分かったことを話した。ステープルトンは結婚していて、その相手は妹と称しているベリル嬢だということを。
終盤
そのとき、男の叫び声と犬の唸り声が聞こえてきた。すぐに現場へ駆けつけると、そこにはヘンリー卿が死んでいた。落胆するホームズとワトスン。だがその死体をよく見たホームズは、髭があると言って笑い出す。死体は、ヘンリー卿の服を着たセルデンだった。ヘンリー卿から服を譲ってもらったバリモアが、それをセルデンに渡していたのだ。魔犬は服の匂いをかいで、ヘンリー卿だと思ってセルデンを襲ったのだろう。ホームズは、魔犬の飼い主はステープルトンだと断言した。ヘンリー卿の屋敷を訪れた2人は、セルデンの死について説明したが、その途中でホームズの目は、壁に掛けてあるヒューゴー・バスカヴィルの肖像画にくぎ付けになっていた。それらを見たワトスンも気づいた。ヒューゴーの肖像画の顔がステープルトンとそっくりだった。バスカヴィルの血を引くステープルトンは、ヘンリー卿を殺害してこの家を乗っ取ろうとしていることを。ホームズはヘンリー卿に対し、招待されているステープルトン邸での夕食のときは、着いたらすぐに馬車を戻し、夕食が終わったら一人で歩いて帰ってくることを求めた。
ラスト
ホームズは、ワトスンとともにロンドンへ帰ると言った。駅に着いた2人は、ロンドン警視庁のレストレード警部の到着を待ち、ロンドンへは行かずにステープルトン邸へ向かった。そして近くで張り込んだ。食堂には不思議なことに、ベリル嬢の姿がなかった。ヘンリー卿は荒野を歩いて帰ることを考えているのか、心配そうな顔をしていた。そのうちに、ステープルトンが裏口から出て、物置で何かをした。夕食が終わり、ヘンリー卿は帰り道を歩きだした。ヘンリー卿のあとを、なにか大きな動物が追ってきた。それは口から火を吐く巨大な魔犬だ。目の前を駆け抜ける犬を追いかけるホームズたちだが、その速さに追いつけず、魔犬はヘンリー卿に飛びかかった。気絶するヘンリー卿。ホームズたちは、何発もの銃弾を撃ち込んで犬を仕留めた。犬の口にはリンが塗ってあり、それが発光して火を吐くように見えていた。ヘンリー卿は無事だった。ステープルトン邸に戻った一行は、縛り付けられているベリル嬢を助け出した。ヘンリー卿を襲うのを止めさせようとして、縛られたらしい。ステープルトンが向かった先は、犬を飼っていた小屋がある湿地帯だという。ワトスンが湿地帯で聞いた「魔の犬」の咆哮も、そこから出されたものにちがいない。ベリル嬢は、小屋に行くためのルートは一つしかなく、そこを外せば底なし沼に落ちてしまうという。ホームズたちはステープルトンの後を追いかけたが、彼の姿は見つからなかった。
年代について作品と同時代の、プリンスタウンの牢獄の様子(1900年)

モーティマーがホームズの部屋に置き忘れたステッキに「1884」と年号が刻まれており、それを5年前といっていることから、事件が起こったのは1889年と考えるのが自然である。だが、1889年はワトスンが結婚生活に入っており、ホームズと同居していないため、矛盾が生じている。またホームズはかなりの著名人となっているが、現実の1889年までに公表された作品は『緋色の研究』のみである。

研究者によってこの事件の発生年はまちまちであり、1886年から1900年までいろいろな説が出ている。
主な登場人物
ジェイムズ・モーティマー
事件の依頼人。フロックコートに金縁の
眼鏡をかけた医師。怪死をとげた先代チャールズ・バスカヴィル卿の友人[3]
サー・ヘンリー・バスカヴィル
爵位と財産を受け継いだバスカヴィル家の現当主。真っ赤な目立つ服を着て[4]エナメルのブーツを履いている[5]
パリモア
バスカヴィル館の執事。黒いもじゃもじゃの顎鬚を生やしている。
パリモア夫人
バスカヴィル館の家政婦。何か秘密を隠しているらしい。
クレイトン
ロンドンの旅客馬車の御者。シャーロック・ホームズと名乗る人物からヘンリー卿を尾行しろと言われたとホームズに語る。
パーキンス
バスカヴィル館までワトソンを運んだデボンシャーの御者。監獄から脱走した殺人犯があたりに潜むと告げる。
セルデン
ホームズが過去に手掛けた「ノッティングヒルの人殺し」事件の犯人。
ジャック・ステープルトン
昆虫学者。小柄で日焼けした肌に麦わら帽子、昆虫網を持ち、植物採集の胴乱をぶら下げている。
ベリル・ステープルトン
ジャックの妹。ブルネットですらりと背の高い、黒い瞳が魅力的な美人。
ジョン・H・ワトソン
物語の語り手。ホームズ物語の記述者で彼の相棒。
シャーロック・ホームズ
主人公の名探偵。
執筆の経緯

1901年3月、ドイルは腸チフスの後遺症で悩まされ、ノーフォーク州クローマーで療養していた[6]。その時にボーア戦争で知り合ったジャーナリストの友人、バートラム・フレッチャー・ロビンソンと再会し、ロビンソンの出身地ダートムアの黒い魔犬の伝説を聞いた。詳細は「ブラックドッグ (亡霊)」を参照

この伝説に着想を得て書き上げたのが本作である。このため本作の冒頭にはロビンソンへの献辞がある。ドイルは当初ロビンソンとの共著として、ホームズとは無関係の作品を書こうとしていたが、ロビンソンは共著を辞退した。そこでドイルはこの作品に登場させる主役を考案し、ホームズを主役とする案を思いつく。この案には1893年に『最後の事件』でホームズを死亡させているという問題点があったが、事件の発生年月を『最後の事件』以前にすることで、ホームズを主役とする作品として書き上げることにした[7]


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