バオー来訪者
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『バオー来訪者』(バオーらいほうしゃ)は、荒木飛呂彦による日本漫画作品、およびそれを原作とするOVA作品。集英社の少年向け漫画雑誌週刊少年ジャンプ』に1984年45号から1985年11号まで17話が連載された。単行本は全2巻[1]

主人公は、生物兵器「バオー」へと改造された青年「橋沢育朗」と予知能力を持つ少女「スミレ」の2人。バオーの超人的能力を狙う、政府系の秘密組織「ドレス」からの逃避行を中心に、2人の成長と相思を綴った物語。目次

1 バオー

1.1 バオー武装現象


2 登場キャラクター

2.1 主要キャラクター

2.2 秘密組織ドレス

2.2.1 ドレスの新生物


2.3 その他


3 書誌情報

4 補足

5 OVA

5.1 スタッフ

5.2 主題歌

5.3 ビデオ / LD / DVD

5.4 サウンドトラック


6 ゲームへの登場

7 立体物

8 脚注

バオー

「バオー(BAOH)」とは変身した育朗を指す言葉ではなく、正確には彼の体内に宿する40mmほどの寄生虫の名称である。バオーの宿主はヒトである必要はなく、作中では育朗以外にもバオーが寄生したイヌが登場している。この生物を生み出した霞の目博士の弁によれば、バオーを自由に利用することが可能になれば核爆弾級の戦力に匹敵し、「ドレス」は医学および軍事的な面で世界的優位に立てるという。バオーという名前は、作者によると当時話題となっていたバイオテクノロジーなどの「バイオ」から来ている[2]。バオーは宿主の肉体へ進入したのち脳(動脈の中)に寄生し、寄生した日数にしたがって宿主に対する影響力を強めていく。百数十日で成虫になると宿主に産卵、孵った幼虫は宿主の身体をつき破り、新たな宿主へ寄生する(この設定はOVAでは排除されている)。また宿主の肺呼吸が停止すると仮死状態となり、その場合宿主の肉体は再び目覚めるまで老化することはない。

宿主が生命の危機に瀕すると、体内に分泌されたアドレナリンをバオーが感知し、宿主の精神を無力化させてその支配下におく(ただし、劇中では育朗が戦っている自分を次第に知覚していくようになる描写がある)。次に、血管を使い宿主の全身に分泌液をめぐらせ、宿主の骨・筋肉・腱を何倍にも強化し、強靭な肉体とさまざまな特殊能力を付与する。「ドレス」では、この変身を「バオー武装現象(アームド・フェノメノン)」と称している(詳細は後述)。寄生している日数が進むに従って、段階を踏んで徐々に武装現象を発現させていく。

武装現象中のバオーは、宿主の頭部に独自の「触角」を発現させ、これにより視覚聴覚嗅覚などの全感覚をまかなう[3]。バオーは対象をすべて「におい」で感知しており、自身が嫌悪する敵意や悪意などの負の感情が持つ「におい」を放つ者を攻撃対象として認識している。また、これにより攻撃目標として認識された者を無力化することはバオーにとって「においを止める」行為に過ぎない。またそのにおいもいくつかにわけ理解しており「生きることを止められた者の悲しいにおい」、「邪悪なにおい」などを嗅ぎわけ、とりわけバオーが嫌いなのはドレスの刺客たちの「邪悪なにおい」である。また戦闘を通じて敵味方の区別をにおいから学ぶ学習能力も備え、味方を守ったりなどの行動をとり、生物としての進化を遂げていく。

また、武装現象の発現中は「バル」「バルバルバルバル」「ウォォォーーム」といった鳴き声(作中では主に咆吼として表現されている)のみを発し、宿主本来の音声・言語を発音することは基本的に無い。

なお、寄生虫バオーは霞の目博士が作り出した生物兵器であるが、劇中後半に変身もせずにバオーの能力が使えたり、攻撃を受け傷ついてもいないのに宿主の意思でバオーに変身したり、変身後に育朗の意識で行動し、しゃべったりと、人間である宿主の育朗がバオーを自在に操作できている。

劇中のこの寄生虫の描写は、夢枕獏による単行本のあとがきの批評にて、その姿を描いた「絵」の持つ説得力が高く評価されている。
バオー武装現象

バオーは宿主の危険を察知すると、宿主の意識・肉体を一時的に支配し、危険から身を守るため宿主に武装現象(バオー・アームド・フェノメノン)を発現させる。武装現象の表記は劇中で一定していない。これらは「高い格調・強烈な描写・長くて覚えにくい名前」ということで、連載当時よく他のマンガなどのネタに使われた。主な能力は以下の通りで、放たれれば防御された事例がほぼない、正しく必殺技である。

OVAではこうした武装現象名を育朗が叫ぶことはなく、その多くは字幕で処理されている[4]
バオー・メルテッディン・パルム・フェノメノン
体外に排出されると強力な酸に変わる体液を、主に掌から放出して金属などを溶解することができる。作中の解説では、強力な酸によって自らの体組織も溶解しているが、酸を出すと同時に特殊なカスを作り出しており、このカスが新たな皮膚となって溶解部分を再生するため、事実上ダメージは無いとされている。育朗の力が増大してきた結果、武装現象への変化なしに発動させることに成功している。
バオー・リスキニハーデン・セイバー・フェノメノン
前腕側部の皮膚組織を突出・硬質・鋭利化して刃物状にする。「セイバー オフ!」の掛け声で切り離して飛ばすことも可能。OVAでは掛け声なしで切り離している。
バオー・シューティングビースス・スティンガー・フェノメノン
毛髪を硬質化して射出する。標的に刺さり、体温の伝導などで一定温度に達すると発火する。
バオー・ブレイク・ダーク・サンダー・フェノメノン
体細胞から発生される電気を直列にして放出する。デンキウナギと同様の原理だが、バオーの筋肉細胞は一つ一つが強力なため、60000ボルトの高圧電流となる。直接放電する以外にも、レーザーへの電力供給を行ったりしている。

その他、治癒能力・代謝能力の活性化や体液の変質などにより、宿主の体の一部が切断されても貼り合わせるだけで元通りに接合したり、瀕死の生物に血を飲ませることでその命を救うことができるようになる。
登場キャラクター

の項は特記ない限りOVA版のキャスト。
主要キャラクター
橋沢 育朗(はしざわ いくろう)
声:
堀秀行 / 内山昂輝ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル)研究機関ドレスの実験体としてバオーを寄生させられた少年。家族とともにドライブ旅行中に交通事故にあい、仮死体としてドレスに拉致され、仮死状態で研究所に移送される途中、偶然スミレによって目覚め、以降スミレと共に「ドレス」の刺客から追われることとなる。真面目で物静か。一人称は「ぼく」だったが、OVAでは「おれ」になっている。バイクには乗れる模様。7歳の頃、氷の張った沼の上で友達と一緒にアイススケートを楽しんでいた時に沼の氷が割れて溺れかけた経験があり、バオーによる自分の体の異変に不気味さを感じた際にはその時の恐怖が甦るという描写があるが、OVAではカットされている。最後はドレスの秘密研究所の自爆に巻き込まれ、海底で眠る。スミレは予知能力で彼女が彼と同じ17歳になった時に、再会するという映像を見ており希望を感じさせるラストを迎えている[5]
スミレ
声:日のり子孤児院で育ち、予知能力の素質をドレスに認められた少女。性格はませていてとても口が悪い。序盤から育朗に好意を抱いている様子がある。その能力は微弱で自動書記(作中ではこれを「心を滑らせる」と表現している)やコックリさんなどの手段を用いるが、稀にはっきりとした映像(ヴィジョン)を見る。物語前半に逃亡中の資金を稼ぐため、予知能力を使い競馬場で大穴を当てている。育朗と同じ列車で移送中に車両を脱走し、育朗と出会う。物語後半で育朗をおびき寄せる為のおとりに使われ、ドレスの秘密基地で多数のレーザー砲で撃たれ致命傷を負うも救助に来たバオーの血液を飲み蘇生。生死不明となった育郎が地底湖の中で眠り続けている映像を遠感で察知し、さらに自分が17歳になった時に育朗と再会する予知の映像も見ており、その日を待ち続けるために六郎じいさん夫婦の養女になった。OVAでは、孤児院の花畑にスミレが咲いていたことからこの名前をつけられたと育朗に語る場面がある。また、エピローグでのスミレの容姿や服装などが、原作と大きく異なる。
サニー・ステフェン・ノッツォ
ドレスが作り出した新生物。第一話でスミレと一緒に登場し、マスコットキャラクターとなっている。スミレによくなついており、よく人の顔を舐める。リスのような格好をした夜行性の小動物で、人に慣れる。末端がふくらんだ尾を持ち、これを使ってタンポポの綿毛のように風に乗って飛行が可能。脚にある折りたたみ式のトゲを使って餌を取る。背中には子育て用の袋があり、性別はメス。ジャンプ力は5メートル。ゴキブリが好物らしく、スミレは顔を舐められるのを嫌がっている。鳴き声は「キキー」「プーダ」「イーダ」など。にらめっこのような顔遊びをよくやる。名前の由来は仙台弁であてもなくふらつき歩く「放浪」、「能無し・怠け者」を意味する言葉「のっつぉ」[6]。OVAではゴキブリを食べる描写はカットされている。
秘密組織ドレス

ドレスは作中に登場する秘密組織で、兵器として使える新生物を作り出すための人工進化などを研究している。もとは旧日本軍の化学細菌戦部隊であったが、第二次世界大戦後、その研究はアメリカ合衆国に引き継がれドレスが設立された。北上山地三陸海岸に研究所を持つほか、独自の偵察衛星や特殊工作員や特殊部隊などの戦力を有し、国鉄に専用列車を自由に走らせる特権も有する。
霞の目(かすみのめ)博士
声:永井一郎ドレスの研究者で、寄生虫バオーの生みの親。遺伝子操作を施した様々な動物達を、過酷な環境を作り出す実験室で飼育するという実験を「人工進化」と称して行い、それを繰り返してバオーをはじめとする新生物を多数生み出した。橋沢育朗を逃した責任を某国政府関係者から問われ、名誉挽回のため育朗たちに刺客を差し向ける。


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