ハーモニー_(小説)
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ハーモニー
著者
伊藤計劃
発行日2008年12月18日
発行元早川書房
ジャンルSF
日本
言語日本語
ページ数354
コードISBN 9784152089922
ISBN 9784150310196(文庫版)
ISBN 9784150311667(新装版)

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『ハーモニー』 <harmony/> は、伊藤計劃の長編SF小説。2008年12月にハヤカワSFシリーズ Jコレクションの一冊として刊行。第40回星雲賞(日本長編部門)および第30回日本SF大賞受賞。「ベストSF2009」国内篇第1位。2010年12月文庫版が刊行。

2015年にフジテレビノイタミナムービー」第2弾「伊藤計劃プロジェクト」として『虐殺器官』と共に劇場版アニメ化されることが発表された[1]。映画公開に先駆けて、2014年8月8日にはredjuiceが手掛けた新ビジュアルカバーの新装版が『虐殺器官』と同時に早川書房から刊行された[2]

また、『月刊ニュータイプ』にて創刊30周年記念企画として『虐殺器官』と共にコミカライズがされる事が決定した[3]
ストーリー

2019年アメリカ合衆国で発生した暴動をきっかけに、全世界で戦争と未知のウイルスが蔓延した「大災禍(ザ・メイルストロム)」によって従来の政府は瓦解し、新たな統治機構「生府」の下で高度な医療経済社会が築かれた。この社会体制では、そこに参加する人々自身が公共のリソースとみなされ、社会のために健康・幸福であることが義務とされた。「ザ・メイルストロム」から半世紀を経た頃、女子高生の霧慧(きりえ)トァンは、生府の掲げる健康・幸福社会を憎悪する御冷(みひえ)ミァハに共感し、友人の零下堂(れいかどう)キアンと共に自殺を図るが、途中でキアンが生府に密告したため失敗し、ミァハだけが死んでしまう。

13年後、WHO螺旋監察事務局の上級監察官として、生府の監視の行き届いていない辺境や紛争地帯で活動していたトァンは、ニジェールの戦場で生府が禁止する飲酒・喫煙を行っていたことが露見し、日本に送還されてしまう。日本に戻ったトァンはキアンと再会し昼食を共にするが、そこでキアンは「ごめんね、ミァハ」という言葉を残して自殺する。同時刻に世界中で6,582人の人々が一斉に自殺を図る「同時多発自殺事件」が発生しており、螺旋監察事務局が捜査に当たることになった。事件には死んだミァハが関係していると考えたトァンは、ミァハの遺体を引き取った冴紀ケイタの許を訪れた。そこでトァンは、自身の父親である霧慧ヌァザが人間の意志を操作する研究を行っていたことを聞かされ、ヌァザの研究仲間ガブリエル・エーディンがいるバグダッドに向かおうとする。その際トァンは、自殺直前のキアンがミァハと通話していたことを知り、ミァハが死んでいなかったことに驚愕する。

バグダッドに向かう前、トァンはインターポール捜査官エリヤ・ヴァシロフの接触を受け、人間の意志を操る「次世代ヒト行動特性記述ワーキンググループ」という組織が生府上層部にあり、同時多発自殺事件に関与していることを聞かされる。トァンが空港に向かう途上、同時多発自殺事件を実行した犯人の犯行声明がテレビ放送され、「健康・幸福社会を壊すため、1週間以内に誰か1人を殺さなければ、世界中の人間を自殺させる」と宣言した。トァンは犯人の思考がミァハと同じであることに気づく。

バグダッドに到着したトァンはエーディンと面会、またその日の夜に「次世代ヒト行動特性記述ワーキンググループ」の中心人物である父ヌァザと会う。ヌァザはトァンに、人間の意志を制御し「ザ・メイルストロム」の再来を防ぐ「ハーモニー・プログラム」の研究、及びその実験体としてミァハをバグダッドに連れて来たことを語った。また「ハーモニー・プログラム」には人間の意識が消滅してしまう副作用があり、同時多発自殺事件は「ハーモニー・プログラム」実行急進派のミァハが仕組んだことだと明かす。そこにミァハの仲間のヴァシロフが現れヌァザを拘束しようとするが、トァンと相打ちになって重傷を負い、トァンをかばったヌァザは死んでしまう。トァンはヴァシロフから「ミァハはチェチェンで待っている」と聞かされ、チェチェンに向かう。

犯行声明から1週間の期限を迎えた日、チェチェンの山奥にある旧ロシア軍基地でトァンに再会したミァハは、「生府の健康・幸福社会によって居場所を失った多くの人々が自殺している」として、「人間の意識を消滅させて世界を“わたし”から救う」と真意を語った。トァンはキアンとヌァザの復讐のため「ミァハの望む世界を実現させるけど、それを与えない」と伝えて、ミァハを射殺する。復讐を果たしたトァンは息絶える寸前のミァハと共に基地の外に出て、世界に別れを告げ「人間の意識=わたし」が消滅する。
登場人物

声の項は劇場アニメ版の声優
霧慧 トァン(きりえ トァン)
声 - 沢城みゆきWHO螺旋監察事務局の上級監察官の女性。少女時代は親密さを強要する社会に逼塞し、反社会的なミァハに心酔していた。そのミァハの提案によりキアンと共に自殺を試みるも失敗、その後は螺旋監察官となり世界中の紛争地帯に出向くことになる。健康監視システムの情報を欺瞞し、戦場で不法に入手した「不健康な嗜好品」を嗜んでいる。
御冷 ミァハ(みひえ ミァハ)
声 - 上田麗奈トァンの友人だった少女。孤独を好む性格と独特の言動により周囲から孤立していたが、同じく周囲と馴染めなかったトァンとキアンとは親密な関係になる。明晰な頭脳と医療社会への反抗心を持ち、社会をいかにして破壊するかを模索していた。「社会への反抗」としてトァンとキアンと共に自殺を試み、結果彼女一人だけが死亡したとされていたが、「ハーモニー・プログラム」によって一命を取り留め、以降は「次世代ヒト行動特性記述ワーキンググループ」の一員として活動する。劇場アニメ版及びコミック版と単行本の初刊版などのイラストとでは外見が異なっている。
零下堂 キアン(れいかどう キアン)
声 - 洲崎綾トァンの友人だった女性。トァンと共にミァハに心酔、ミァハたちと自殺を試みるが、自殺を生府に密告したため失敗した。その後は一般的な市民として生活していたが、世界同時多発自殺事件により命を落とす。
霧慧 ヌァザ(きりえ ヌァザ)
声 - 森田順平トァンの父親。医療分子技術で高い功績を残している研究者で、研究に没頭し家族を顧みなかった。
冴紀 ケイタ(さえき ケイタ)
声 - チョーヌァザの友人であり研究仲間。ヌァザと共同で医療分子技術の研究論文を書いた。事件の後トァンに失踪したヌァザの行方のヒントを与える。
オスカー・シュタウフェンベルク
声 - 榊原良子螺旋監察官を統括して眞いる首席監察官。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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