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タイム、オレガノ、ローズマリー
ハーブ(英: herb[注釈 1])とは、明確な定義は存在しないが、一般的には料理の香り付けや保存料、薬、香料、防虫などに利用されたり、香りに鎮静・興奮などの作用がある有用植物で[1]、緑の葉を持つ草、茎のやわらかい植物などを指す[2]。同様の有用植物であっても、種子、実、根、樹皮などは香辛料と呼ばれることが多いが、苔から木本まで、香りや薬効がある有用植物全般をハーブとして扱う場合もある[2]。反面、旺盛な繁殖力を持ち駆除困難な雑草となる種もある。
ハーブは「草」あるいは「野草」、「草木」を意味するラテン語: herba を語源とし、フランス語でherbe(エルブ)、古英語でherbe(アーブ)となり、これが変化して英語のherbとなり[1]、日本に伝わってハーブという言葉が使われるようになった。
概説ハーブガーデン、ベルギーのベールネム
一般にハーブという場合、ヨーロッパで伝統的に薬草や料理、香料、保存料として用いられた植物を指す。香りや辛味、苦味などの風味を楽しむために用いられるキッチンハーブを指すことが多い。生または乾燥させたものを、薬味、ハーブティーなどに用いた。近世まで、病気の原因はミアスマ(瘴気、悪い空気)であると考えられていたため、強い香りで病気を防ぐために、匂い袋(サシェ)、匂い玉(ポマンダー)、ハーブ酢、香油、芳香蒸留水、精油なども利用され、ポプリなどの形で香りが楽しまれた[3]。
元来ハーブとは「薬草」を意味する薬理分野における部類の一つであり、食用にすると有毒となるいわゆる有毒植物も「有毒ハーブ」[注釈 2]として分類されている[4]。語源からすると、元々木本植物は有用植物ではあってもハーブではなかったと思われるが、現在ではローズマリーやローリエ等、木本植物であっても、一般にハーブとして扱われる物も多い。日本では、言葉の定義でスパイスとの混乱も見られるが、スパイスは料理の風味づけや色づけに使われる香辛料であり、その中にはハーブに分類される植物も見られる[4]。
野菜や穀物、果物などと区別されるが、伝統的な西洋医学の主な治療は食事療法であり[5]、キャベツやタンポポのように、薬用・食用両方に使われたものも少なくなく、明確な区別は難しい。ローズヒップ(バラの果実)の様に、その実や花弁等の有用部分のみを指してハーブと呼ぶものもある。一般的な植物名とは別に、ハーブ等として利用する時に使用される固有の名前を持つものも多い。
また、ネイティヴ・アメリカンが伝統的に治療に使った植物(エキナセアなど[6])のように、ヨーロッパ以外でハーブ同様に使われた植物で、欧米で利用されるようになったものもハーブと呼ばれており、中国医学や漢方医学で使う生薬でハーブと呼ばれるものもある。 次のように利用できる有用植物がハーブと呼ばれた[1]。 西洋では様々なハーブ、香辛料が料理に利用された。胡椒などの香辛料は、保存料・香り付け・薬として重宝されたが、交易で遠方からもたらされるため高価だった。民衆は、身近で手に入る香りあるハーブ、防腐作用を持つハーブを料理・保存に利用した。 胡椒の代わりに使われたマメグンバイナズナは、イギリスでは「貧者の胡椒」と呼ばれている[7]。フランスのプロヴァンス地方で料理に使われたハーブに想を得た業者により、セイボリー、フェンネル、バジル、タイム、ラヴェンダーなどのハーブをブレンドしたものがエルブ・ド・プロヴァンスの名で販売されている。フランス料理では、パセリ、チャイブ、タラゴン、タイムなどの生のハーブをみじん切りにしたものが多用され、フィーヌゼルブ
ハーブの利用法
内服薬・外用薬として利用できるもの。
防臭・防腐・防虫などに役立つ植物。
芳香があり、その香りに鎮静作用や興奮作用などがあるもの。
ヨーロッパ各地に、ハーブを主な材料とするグリーンソース(英語版)が存在する。イタリアでは、すりつぶしたパセリ、酢、ケッパー、ニンニク、タマネギ、アンチョビ、オリーブオイル、マスタードなどを混ぜて作るソースをサルサヴェルデという。ドイツ・ヘッセン州ではグリューネ・ゾーセ(Grune Sose または Grune Sosse)が有名であり、ルリジサ、スイバ、コショウソウ、チャービル、チャイブ、パセリ、およびサラダバーネット(英語版)などの7種類の生のハーブを刻み、サワークリーム・レモン汁を混ぜたソースに、固ゆで卵・じゃがいもなどを添えて食べる。このように、ヨーロッパではハーブは料理によく利用され、相互に影響を受けながらも地域によって特色がある。
胡椒の代わりに使われたマメグンバイナズナ
ブーケガルニ
エルブ・ド・プロヴァンス
イタリアのサルサ・ヴェルデ
ジャガイモを添えたグリー・ゾース(フランクフルト・アム・マイン風グリューネ・ゾーセ)
ハーブ抽出物の中には、サプリメントとして利用されるものもある。また現在では、植物の香りの薬効が研究されており、ハーブなどを水蒸気蒸留した精油がアロマテラピー(芳香療法)に用いられている。
薬草詳細は「薬草」を参照「有毒植物」も参照
ハーブには薬効が強く、副作用のあるものや、有毒なものもある。また欧州では伝統生薬の一部が、伝統生薬製剤の欧州指令によって医薬品としても流通している。日本でも2007年の承認申請の簡略化によって、2011年には、足の浮腫に効果のある、赤ブドウ葉乾燥エキス混合物が医薬品として承認された[9]。
日本においてハーブは、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)で医薬品に分類されないものは食品に区分されて市販されている。しかし、その中にはセント・ジョーンズ・ワートの様に、国によってうつ病など病気に薬として処方されるハーブもある。ほかにも、ハーブから抽出されたイチョウ葉エキスや、エゾウコギなど、薬物との相互作用に注意を要するものもある[10]。