ハンドウイルカ
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ハンドウイルカ
ハンドウイルカ
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))

分類

ドメイン:真核生物 Eukaryota
:動物界 Animalia
:脊索動物門 Chordata
亜門:脊椎動物亜門 Vertebrata
:哺乳綱 Mammalia
:クジラ目 Cetartiodactyla
亜目:ハクジラ亜目 Odontoceti
:マイルカ科 Delphinidae
:ハンドウイルカ属 Tursiops
:ハンドウイルカ T. truncatus

学名
Tursiops truncatus
(Montagu, 1821)
和名
ハンドウイルカ
英名
Bottlenose Dolphin
ハンドウイルカ生息域

ハンドウイルカ(半道海豚[2]、Tursiops truncatus)は、クジラ目ハクジラ亜目マイルカ科ハンドウイルカ属に属するイルカである。バンドウイルカ(坂東海豚[3])と呼ばれることが多い。最も良く知られたイルカの一つであり、熱帯~温帯の陸近くの世界中の海に生息する。
名称

『世界哺乳類和名辞典』(1983年)および『世界哺乳類標準和名目録』(2018年)は、いずれも本種の標準和名を「ハンドウイルカ(バンドウイルカ)」と2つ併記している。

元来は九州北部地方で、ハンド(イルカ)またはハンドウ(イルカ)と呼ばれていたとされる[4]。「ハンドウイルカ」は、博物学者の畔田翠山が記した『水族志』(1827年)をもとに、解剖学者の小川鼎三が命名した[5]。語源は未詳だが、半道(中途)のイルカという説や[6]、その剽軽な姿を歌舞伎の道化役である「半道」にたとえたとする説がある[7]

その後、哺乳類学者の西脇昌治が「バンドウイルカ」という呼称を用いたが、『鯨記』(1764年頃、著者不明)には「坂東いるか」の表記があり、シーボルトの手記にも「bandoor(バンドウ)」の記述が見られる[8]

現在では「バンドウイルカ」という呼称が一般に広く使われており、論文でもこちらが多数派となっている[9]。『ブリタニカ国際大百科事典』『世界科学大事典』をはじめ辞典類でも「バンドウイルカ」とするものは多く、日外アソシエーツの『動物レファレンス事典』によれば、本種の記載がある16冊の事典のうち、ハンドウイルカ表記とバンドウイルカ表記はそれぞれ8冊で同数となっている[10]。新聞も主に「バンドウイルカ」の表記を使用している[11]

英名であるBottlenose(瓶のような)は伸びた上下の顎の形に由来する。
形態

ハンドウイルカは一見ほぼ全身灰色であるが、詳しくみると、背びれの先端の辺りの濃い灰色から、腹面にかけての明るい灰色にまで変化し、腹部はほぼ白である。この配色のため、水中を泳いでいる時には、上方向からも下方向からも見つけ難いようになっている。

英名のBottlenoseに表されるように、上下のが大きく突出しているが、本当の鼻孔(nose)は頭の上の噴気孔である。口角が上がっているため、角度によっては顔つきが笑顔のように見える。

成体の体長は2mから4m、体重は150kgから650kgと生息地によって差がある。平均的には雄は雌よりも若干長く、体重は雄の方がかなり重くなる。比較的暖かい浅い海域に生息する群は、冷たい遠洋で暮らす群に比べて小さい傾向があり、北限に近いスコットランドマレー湾における平均は4m弱であるのに対し、アメリカフロリダでの平均は2.5m程度にとどまる。また、冷たい海域で暮らす群は、深くまで潜水するのに適すように、身体および血液中の脂肪の割合が比較的高くなっている。

尾びれと背びれは高密度の結合組織でできており、骨も筋肉もない。尾びれを上下に動かして泳ぐ。両脇についている一対の胸びれは方向を制御するのに用いる。胸びれには骨がある。これは陸上で生息する哺乳類の前肢と相同である。ハンドウイルカを含むクジラ目の動物たちは、約5千万年前、陸上で生息する哺乳類(現生のカバの祖先に近縁な偶蹄類)から進化したと考えられている。

2006年10月和歌山県東牟婁郡太地町の沖合の熊野灘で腹びれのあるハンドウイルカが見つかり、世間の注目を浴びた。これはイルカなど鯨類の祖先が5000万年-3500万年前に陸上生活していた名残であり[12]突然変異で出現するのは1%未満の貴重な事例と考えられている。

ヒトとの大きさ比較

クジラ類の骨格標本の大きさの比較。手前から順にハンドウイルカ、シロナガスクジラオウギハクジラ

ハンドウイルカ全身図

行動

ハンドウイルカは「泳ぎの達人」と称され、その遊泳力は高く昔から人間の羨望の対象とされてきた。通常は5km/hから11km/h程度の速度で泳ぐが、短時間ならば45km/h程度の速度で泳ぐこともできる。また65km/hで航行する高速船と競ってさらに速く泳いだという目撃情報もあることから、瞬間的には70km/h近い猛スピードを出す個体もいると考えられる。最高速度では82km/hに達するシャチにかなわないものの、相対的に体が小さく体重も軽いハンドウイルカのほうが制動力やジャンプ力に優れている。

呼吸は、水面から頭部を露出して、頭頂にある噴気孔で行う。通常は1分間当たり数回程度の呼吸を行うが、5分から8分程度の連続潜水を行うことも可能である。ハンドウイルカの睡眠は非常に浅く、睡眠中はの半分は眠って残り半分は覚醒し、それを交互に切り替えながら泳ぎ続けるという説が有力である。

通常はポッド (pods) と呼ばれる最大12頭程度から成る群を単位として行動する。このポッドは社会的な基本構成単位であり、長期間継続的に持続される。母親イルカたちとその子供たちで構成されているというのが典型的なポッドである。複数のポッドが集まって、100頭かそれ以上の多数の群を成すこともある。雄は通常は単独、あるいは2-3頭で行動するが、短期間だけポッドに加わることもある。

ハンドウイルカは人懐こく好奇心が旺盛な性格であることが良く知られている。潜水しているダイバーのまわりにハンドウイルカが集まってくることは珍しくない。傷ついた仲間を助けようとする行動は知られているが、傷ついた人間のダイバーを助けようとして水面へ持ち上げようとすることもある。2004年11月ニュージーランドのワンガレイ (Whangarei) 沖100mの地点で、3mのホホジロザメが3名のライフガードに接近してきた際、危険を察知したハンドウイルカが集まり、40分間、サメの攻撃から護るかのように彼らを取り囲み、ライフガードたちは無事に海岸に戻ることができた例が報告されている[13]。ただし、溺れていない人間を沖へ運ぼうとして危険な目に合わせたという事例もあるので、意図して人助けをしたとする解釈の他、イルカの持つ習性に基づいた行動とする説もある。

むやみに人間を攻撃することはないが、ハンドウイルカには捕食者として非常に攻撃的な面もあり、繁殖期の雄は序列や雌をめぐって強さと大きさを誇示し、頭突きの応酬などで非常に激しく争う。
食物

ハンドウイルカの主食は小さい魚類であるが、イカなどの頭足類や、カニなどの甲殻類も食べる。は鋭く尖っており、餌となる生物を捕獲するには適しているが、咀嚼(そしゃく)には適さない。餌となる魚類の群に出会った場合には、ハンドウイルカは団体で行動して、捕食活動を行う。単体の場合には、海底近くの生物を捕食することも多い。尾びれを用いて魚を殴打して気絶させた後でその魚を食べることもある。
感覚とコミュニケーション

ハンドウイルカは餌を探すために反響定位(エコーロケーション)を行う。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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