ハプログループX (mtDNA)(ハプログループX (ミトコンドリアDNA)、英: Haplogroup X (mtDNA))とは、分子人類学で用いられる、人類のミトコンドリアDNAハプログループ(型集団)の分類のうち「N」を祖先に持ち73, 7028, 11719, 12705, 14766, 16189, 16223, 16278の変異で定義されるグループである[1]。
分布ハプログループX(mtDNA)の分布図
ハプログループXはヨーロッパ人、中東人およびアメリカ先住民[2]で観察され、とくにアルゴンキン語族話者に多く見られる[3][4]が、その分布は謎に満ちている。アメリカ大陸では北米大陸のみに観察され、東部ほど高頻度であることから、ヨーロッパからの直接移住があったのではないかという説がある。これに関連してソレトリュー仮説
(英語版)が存在する[5]が、立証されていない。もっともアルタイ地域においてハプログループXがわずかに観察されるため[6]、シベリア経由でアメリカ大陸にやってきたという説も存在するが、アルタイ地域のタイプはヨーロッパに分布するタイプの下位分岐であり、5000年前にヨーロッパ・中東方面からもたらされたという[7](シベリアからアメリカへ人類が移住したのは10000年以上前であるから、それよりもずっと後のことである。)。アメリカ大陸に分布するのはX2aという下位系統で、アメリカ固有のものである[8]。分岐年代は不明であるが、アルゴンキン語族の拡散と関連して、過去のある時期(コロンブスがアメリカ大陸に到達する1492年よりもっと前)においてヨーロッパからアメリカ大陸への直接移住が存在した可能性も否定できない。しかし、ワシントン州から発掘された8690?8400年前の人骨「Kennewick Man」はハプログループX2aに属しており[9]、この時期までに北アメリカ西岸にX2aが到達していたことを示しており、他のハプログループとともにベーリンジアを超えてやってきた可能性もある[10]。系統樹[11][12]
X
X4: アルメニア
(153)
X1 (146): 北アフリカ、中東
(15654)
X1a: 北アフリカ、中東
X1c: スペイン、チュニジア
(152, 153): エチオピア
X1b (o X3): モロッコ、ポルトガル、ドルーズ
X2 (195, 1719): ユーラシア西部、北アメリカ、中央アジア、シベリア
X2f: ジョージア、アルメニア、ドルーズ、リビア、トルコ、タジキスタン
(225)
X2a'j (12397): 北アメリカ、イラン、シベリア(ポドカメンナヤ・ツングースカ川流域)[11]
X2a (200, 8913, 14502, 16213): 北米先住民(オジブワ、スー族、ナバホなど[13])
X2a1: 五大湖周辺
X2a1a: スー族など
X2a1b: オジブワ
X2a1c: オジブワ
X2a2: ナバホ
X2j (16179, 16357): アイルランド、エジプト
X2b: オークニー諸島、東欧、南欧、北アフリカ、中東、エベンキ[11]
X2c: バルト海沿岸、コーカサス、中央アジア、アルバニア
(153!)
X2d: ヨーロッパ、中東、コーカサス
X2g: オジブワ[14]
X2e
X2e1: ギリシャ人、クルド人
X2e2: シベリア南部(アルタイ人、ブリヤート人、テレンギト人)、タジク人、ヨーロッパ、コーカサス、中東
X2h: ドルーズ[15]
ヒトのミトコンドリアDNAハプログループの系統樹
ミトコンドリア・イブ (L