ハプログループQ_(Y染色体)
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Y染色体 Q-M242 系統
ハプログループQの分布頻度
系統祖Q-M242
発生時期17,000-22,000年前[1][2]
または31,400年前[3]
発生地(推定)西南アジア
親階層P-P295
分岐指標M242, P36.2, MEH2
高頻度民族・地域南北アメリカ先住民ケット人セリクプ人ユカギール人

ハプログループQ (Y染色体)(ハプログループQ (Yせんしょくたい)、英: Haplogroup Q (Y-DNA))は、分子人類学において人類の父系を示すY染色体ハプログループ(型集団)の分類で、「M242, P36.2, MEH2」のSNPの変異によって定義されるグループである。
概要

アメリカ先住民の Y 染色体ハプログループのほとんどはQ系統が占める。Q はイラン付近で17000-22000年前[1][2]または31,400年前[3]に発生したと考えられ、その後中央アジアアルタイ山脈北辺を通り、北シベリアステップマンモスなど大型哺乳類を狩りながら移動し、アメリカ大陸に移住していったと思われる。Q のホームランドに近いアフガニスタンパシュトゥーン人では Q*が16%観察され[4]、中央シベリアのケット人でQ系統が90%以上を占める[5]など、道中に足跡を残してはいるが、ユーラシア大陸では総じて低頻度である。しかしアメリカ大陸(先住民)において大いに繁栄している。アメリカ先住民にはその他 C2,R1 なども見られるが、Q系統が圧倒的である。

現代中国では全国男性人口の約2.8%がハプログループQに属し、そのほとんどが下位系統のQ-M120(全体の約2.48%[6])に分類されるが、Q-M346(約0.18%[7])、Q-L275(約0.09%[8])、Q-M25 > Q-L712(約0.04%[9])も稀に観察される。中国に於けるQ-M242の分布は著しく北方に偏っており、2011年に発表された論文では長江以北の地域に居住する現代漢族男性の4.0%(34/853、30/853 = 3.52% Q-M120、3/853 = 0.35% Q-M346、1/853 = 0.12% Q-M25)がハプログループQに属す一方、長江以南の地域に居住する現代漢族男性のサンプルではハプログループQに属す者が全体の1.7%(15/876、14/876 = 1.60% Q-M120、1/876 = 0.11% Q-M346)に過ぎないという結果が得られた[10]。なお、ハプログループQは北方の少数民族である蒙古族(47/1521 = 3.09% Q、37/1521 = 2.43% Q-M120、8/1521 = 0.53% Q-M346 > Q-L330、2/1521 = 0.13% Q-M25 > Q-L712[11])や満洲族(76/2938 = 2.59% Q、67/2938 = 2.28% Q-M120 > Q-Z19154 > Q-F1626、5/2938 = 0.17% Q-M346、3/2938 = 0.10% Q-L275、1/2938 = 0.03% Q-M25 > Q-L712[12])でも観察されるが、むしろ華北の漢族男性の総人口に占めるハプログループQの割合が大きい。

現代韓国に於いてハプログループQは約1.7%(7/506 = 1.4%、1.6%、1/56 = 1.8%、18/1006 = 1.8%、1/45 = 2.2%、2/55 = 3.6%)の男性に観察される。2022年に発表された論文によると、群山市堂北里にある甕棺墓(年代は出土品の比較により六世紀中葉即ち百濟時代のものと推定されている)に埋葬された人骨6体のうち、3体がハプログループQに属す男性だという結果が得られた。[13](残る3体のうち、2体が女性のもので、1体がハプログループO1b2に属す男性のものだという。)

現代日本ではハプログループQは約0.40%(約250人に1人)という、ごく低頻度で観察されている。Hammer et al. (2006)による研究では、259人中1人(0.39%)がハプログループQ-P36に属しており、その1人は静岡県にて採取されたサンプルのもの。[14] 野中氏等(2007年)による研究では、263人中1人(0.38%)がハプログループQ-M120に属しており、その1人は埼玉県にて採取されたサンプルのもの。[15] 宮崎県在住者1,677名及び熊本県在住者25名を対象とした研究では1,702人中7人(0.41%)がハプログループQ-P36.2に属すという結果が得られた。[16] 徳島県(57人)+茨城県(50人)+山口県(44人)+大阪府或いは東京都(6人)にて採取された日本人157名を対象とした韓国の研究者による論文では、ハプログループQ-M242に属す者は1人も観察されなかった。[17] 東京都にて採取されたJPT(Japanese in Tokyo, Japan)という1000人ゲノムプロジェクトのサンプルでは、56人中0人(0%)で、ハプログループQに属す者が一人もいないという結果が得られた。[18] 日本人を対象としたその他の研究では出身地等詳しく発表されていないが、ハプログループQの比率は以下の通り: 567人中3人(0.53%)、[19] 432人中2人(0.46%)、[20] 47人中0人(0%)[21]
高頻度地域

アメリカ大陸

南アメリカの先住民:91%
[22]

北アメリカの先住民:77.2%[23]


ユーラシア大陸

ケット人:93.7%[5]

セリクプ人:66.4%[5]

トルクメン人:42.6%[24]

トゥバ人:38%[25]

ユカギール人:31%[26]



中国北部の約3000年前の時代の人骨から59%の高頻度で発見されている[27]

下位系統

太字は高頻度で観察される集団。傾字は関連する語族


Q (M242)

Q* インド,パキスタンに低頻度.[28] アフガニスタンパシュトーン人の16%(Q-M242 xMEH2, xM378).[29]


Q1 (P36.2, L232/S432, L273 y L274)

Q1*  イランに低頻度.[30]

Q1a (MEH2, L472, L474 y L528)


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