ハニヤス
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ハニヤス
時代
神代
『日本書紀』
名埴安神[1]
よみはにやすのかみ[1]
異称2埴山姫[2]
よみ2はにやまひめ[2]
異称3埴山姫神[3]
よみ3はにやまひめのかみ[3]
『古事記』
名波邇夜須
よみはにやす
異称1波邇夜須毘古神[4]
よみ1はにやすびこのかみ[4]
異称2波邇夜須毘売神[5]
よみ2はにやすびめのかみ[5]
先代旧事本紀
名埴安彦[6]
よみはにやすびこ[6]
異称1埴安姫[7]
よみ1はにやすひめ[7]
備考巻一陰陽本紀
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イザナミの病と死によって生まれた神々(『古事記』に基づく) SVGで表示(対応ブラウザのみ)

ハニヤスは、日本神話に登場する神。『古事記』ではハニヤスビコ・ハニヤスヒメという一対の神として登場し、『日本書紀』ではハニヤマヒメやハニヤスノカミの異称で登場する。祝詞ではハニヤマヒメ。土の神、土壌の神、肥料の神、農業神として祀られるほか、陶芸の神、鎮火の神、土木工事や造園工事の守護神、便所の神としても祭祀される。
概要

記紀にはイザナミの大便からハニヤスが化生したという挿話がある。イザナギとイザナミによる神産みにより様々な自然物の神々を誕生させる過程で、イザナミは火の神を生む際に大火傷をしてしまい、死に至る。その死の間際の苦しみのなか、イザナミは嘔吐や脱糞・失禁をする。その吐瀉物からは鉱山の神カナヤマヒコが、大便からは土の神ハニヤスが、小便からは水の神ミヅハノメが生まれる。記紀ではこのようなハニヤスの誕生譚が語られるのみで、その後のハニヤスの動向は描かれない。

古代語の「ハニ」は、土器や陶器のもとになる粘土を示す語であり、ハニヤスは粘土を神格化したものと考えられている。記紀の語るハニヤス誕生譚では、火の神、(金属)鉱石の神、粘土の神、水の神、食物の神が連続して誕生しており、一連のエピソードは火によって人類が金属加工技術や土器・陶器の焼成技術を獲得したことや、焼畑農業のような原始的な農耕文化の誕生を象徴していると考えられている。このためハニヤスは陶芸上達・陶工の守護神として祭祀されることもある。

ハニヤスは「土の神」として土壌一般の守護神とも考えられており、農耕・開墾・田畑の守護神ともされる。大便から生まれたことから、農業神の一種として農耕に役立つ肥料の神として祭祀されたり、便所の神として祀られることもある。土に関わる土木業・造園業の守護神ともされる。

延喜式』所載の祝詞には、記紀と異なり、荒ぶる火の神の害から民を守るために、イザナミが火鎮めの神としてハニヤスを生んだという挿話がある。このためハニヤスは「鎮火の神」としても祀られ、愛宕神社秋葉神社など火除の神社でも重要な祭神となっている。ハニヤスが鎮火の神功を有するのは、古代には火災の消火に土や泥が用いられていたことを象徴しているとも考えられている。
さまざまな呼称・表記
ハニヤスヒメ、ハニヤスビメ、ハニヤスヒメノカミ、ハニヤスビメノカミ


波邇夜須毘賣神(『
古事記』)[5]

埴安姫(『先代旧事本紀』「陰陽本紀」)[7]

ハニヤスビコ、ハニヤスヒコノカミ


波邇夜須毘古神(『古事記』)[4]

埴安彦(『先代旧事本紀』「陰陽本紀」)[6]

ハニヤスノカミ


埴安神(『日本書紀』第五段第六の一書)[1]

土安神(畝尾坐健土安神社(奈良県)、本居宣長古事記伝』)[8]

ハニヤマヒメ、ハニヤマビメ、ハニヤマヒメノカミ、ハニヤマヒミノカミ


埴山姫(『日本書紀』第五段第二の一書、第五段第三の一書、『延喜式』「祝詞・鎮火祭」)[2]

埴山媛(『日本書紀』第五段第四の一書)

埴山姫神(『先代旧事本紀』、榛名神社[3]

波尓移麻比弥(『延喜式神名帳』)[9]

波爾移麻比禰(波爾移麻比禰神社

その他、同一視される神


ハニウダノカミ(土生田神) - 新潟県・土生田神社(式内社)の祭神[10]

ハニウノカミ(波尓布神)[11]

ハニウメヤノカミ(埴生女屋神) - 『三代実録』に登場。徳島県・上一宮大粟神社の祭神[12]

健土安神(タケハニヤスノカミ) - 『三代実録[13]#同名・関連名の人物参照。

古事記

古事記』では、天地開闢別天神神世七代に続いて、イザナギ(伊邪那岐命)とイザナミ(伊邪那美命)による国生み神生み[注 1]が語られる。イザナミは、さまざまな神を生んだあと、火の神を出産する。ところが分娩の際に陰部に大火傷を負い、この世を去ってしまう[注 2]。その死の間際、火傷に苦しんだイザナミは嘔吐、脱糞、失禁をして、その吐瀉物・排泄物が神となる。ハニヤスはこのうち大便が神として化成したもので、ハニヤスビコ・ハニヤスヒメの1対の神として登場する。
古事記の原文

以下の原文に頻出する「以レ音」という注意書きは、「この部分だけは文字そのものに意味がある漢文ではなく、日本語の音に漢字にあてはめただけで、文字そのものの意味は関係ない」ということ。たとえば「屎成神」は、「糞が神に成った」という意味であり、「屎」「成」「神」はそれぞれ漢字元来の意味を保持している。これに対して、「波邇夜須」は日本語固有名詞の「ハニヤス」の音に漢字をあてはめただけであり、(海の)「波」、(暗い)「夜」などの字義は失われている。

国史大系第7巻)『古事記』上巻
原文[18]訓み下し文[19](一部を除き注釈を割愛)
次生二火之夜藝ヒノヤギ速ハヤ男ヲ神ノカミ一。夜藝二字以レ音次に火之夜芸速男神ひのやぎはやをのかみを生みき。
亦名謂二火之ヒノRカゝ毘古ビコ神ノカミ一。亦の名は火之R毘古神ひのかかびこのかみと謂ひ、
亦名謂二火之迦具ヒノカグ土ツチ神ノカミ一。迦具二字以レ音亦の名は火之迦具土神ひのかぐつちのかみと謂ふ。
因レ生二此子一。此の子を生みしに因りて、
美蕃登ミホト此三字以レ音見レ炙而病臥在。みほとを炙やかえて病み臥ふして在り。
多具理タグリ邇ニ此四字以レ音生レ神。たぐりに成りし神の
名二金山カナヤマ毘古ビコ神ノカミ一。訓レ金云二迦那一、下效レ此名は金山毘古神かなやまびこのかみ。
次金山カナヤマ毘賣ビメ神ノカミ。


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