この項目では、鳥の鳩について説明しています。その他の用法については「はと」をご覧ください。
鳩(はと)は、ハト目ハト科に属する鳥類の総称である。体に比べて頭が小さく、胸骨、胸筋が発達してずんぐりとした体型が特徴である。
ハト目には世界では約42属290種あり、そのうち日本の在来種は、カラスバト属(カラスバト、アカガシラカラスバト、ヨナクニカラスバト、リュウキュウカラスバト、オガサワラカラスバト)、キジバト属(キジバト、リュウキュウキジバト、シラコバト)、ベニバト属(ベニバト)、キンバト属(リュウキュウキンバト)、アオバト属(アオバト、リュウキュウズアカアオバト、チュウダイズアカアオバト)の5属13種が挙げられる(9種とする説もある)。
このうち、リュウキュウカラスバトとオガサワラカラスバトの2種は絶滅したと考えられていたが、近年、DNA調査により亜種がいくつかの諸島部で生存していることが確認された。
なお、カワラバト(ドバト)は、1500年程前に日本に渡来した外来種であるとともに、5000年以上前より世界各地で家禽化され広まった飼養品種であるため、学術的には日本ネイティブな在来種ではない[注 1]。このため、現在でも野鳥とみなされないことがある。また、ジュズカケバトについては、広義にはシラコバトのうち飼養品種となったものとされるため、上記リストからは省かれている。ジュズカケバトの白色変種である銀鳩(観賞用に飼われたりマジックの小道具として使われたりする小型のハト)も同様である。 鳩という名前はパタパタと飛び立つときの音の様子に由来すると考えられる。「鳩」(九+鳥)の字にある(九)は鳴き声(クルッククゥー)からきた、とする説がある。「鳩」の中国語の発音であるキュウ(漢音)やク(呉音)は、英語のハトの鳴き声<coo>(クウ)、日本語のハトの鳴き声「クウクウ」に近い。「ハト」の名は、軽やかに羽ばたく音「ハタハタ」から、ともいう。また、漢和字典では「球」(中心に引き絞られた形)と同源としている。現代の中国語では「鴿子」(正体字)「?子」(簡体字)という。?音は「g?zi」。 @media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}食性は雑食性である(木の実やミミズ[要出典]を食べる)[要検証 – ノート]。一般的に熱帯種では一腹一卵、温帯種では一腹二卵を産み、14?21日の抱卵の後で孵化する。鳩の雛が孵化から巣立ちするまでの期間は25?40日だが、鳩ミルク(ピジョンミルク)と呼ばれる親鳥のソノウから分泌される高蛋白なミルクで育てられる。雛は親鳥の口に嘴を差し入れてミルクを摂取する。ピジョンミルクには炭水化物は殆ど含まれておらず、主成分は主に蛋白質である。栄養価は高く、ヒトのアスリート向けプロテインに近い成分組成である。ただし、ピジョンミルクには雛の成長につれて、半消化状態の柔らかい餌が徐々に混ざることがわかっている。巣から落ちた鳩のひなを人工飼育するには、植物性のプロテインや練り餌(釣具屋で売っている鮒・鯉釣り用の練り餌が安価で簡便である)をぬるま湯で粥状に溶き、手のひらに握りこんで指のすき間から与えるのが簡単な飼育法である。 ハトはおおよそ10000年から6000年ほど前の新石器時代に飼育動物化されたと考えられている。ハトは人里に近い土地で営巣する動物であり、洞窟や崖、そして泥や石で造られた初期人間の住居に巣を作っていた。中東において当時栽培が始まったコムギやオオムギなどもハトの食料として好適であった。こうしてハトと人間の距離が縮まったのち、ハトの飼育化が始まった。当初は神経質な成鳥に比べて人に慣れやすく飼いやすいハトの雛を成長させる目的で飼育が始まり、やがて家禽化していったと考えられている[1]。 紀元前2900年頃にシュメールのシュルッパクにて起こった大洪水はシュメルの洪水神話として後世に残され、『ギルガメシュ叙事詩』や旧約聖書のノアの方舟の話の原型となった。『ギルガメシュ叙事詩』において既に陸地を探すためにハトを放した話が記載されており、この頃にはハトが飼育されていた証拠とも考えられている。イラクのアルパチャにおいて紀元前4500年頃のハトのテラコッタの像が出土しており、ハトが宗教上重要視されていたことを物語っている。古代エジプトにおいてもハトは飼育されていた。やがてハトの飼育は地中海世界へと広がり、古代ギリシャの各都市やエトルリア人にも広まった。ローマ帝国においてはハトは宗教上重要な意味を持つ一方、肥育されて食用としても盛んに用いられた[2]。 ハトはまた、通信用の伝書鳩としても古代から盛んに使用された。カワラバトから長年にわたって改良された伝書鳩は、戦中の軍事用、戦前・戦後には報道用や通信用に大いに活用された。太陽コンパスと体内時計、地磁気などにより方角を知る能力に優れているとされ、帰巣本能があるため、遠隔地まで連れて行ったハトに手紙などを持たせて放つことによって、情報をいち早く伝えようとしたのである。戦時には古くから軍が導入し、軍用鳩が本格的に研究され、第二次世界大戦においては主に伝令用の他、小型カメラを装着させた敵地偵察用のスパイ鳩として活躍した。薬品や血清等の医薬品、動物(主に牛)の精子の輸送にも使われ僻地医療で重要な役目を果たした。 しかしその後、電話などの通信技術の進歩によりその役目を終えたかに見えた。現在では、脚環にICチップを内蔵した自動入舎システムが普及したため、かつて鳩を飼っていた団塊の世代がリタイア後に再開し、鳩レースを楽しむことが小ブームになっている。また、情報IT関連の新しい試みとして、レース鳩にマイクロSDメモリーカード(合計2TB程度)等の超小型メモリーチップ ハトは、その群れを成す性質から、オリーブと共に平和の象徴とされている。日本では、穏健派や平和主義者を「ハト派」、強硬派を同じ鳥類でも猛禽類の鷹にたとえて「タカ派」という比喩表現も使われる。ノアとハトのモザイク画 これは旧約聖書の大洪水(ノアの箱舟)伝説にも由来している。ノアは47日目にカラスを放ったが、まだ水が乾く前であったからすぐに戻ってきた。ハトを放ったところ、オリーブの葉をくわえて戻ってきた。これによりノアは水が引き始めたことを知ったという。「平和の祭典」とも称される近代五輪の開会式では、かつては実際に鳩が飛ばされていたが、外来生物への危機感の高まりや鳩が生息できる環境ではない場所での開催、式典が日中ではなく夜中に行われるようになった事などから、鳩に扮した人のダンサーなどによるパフォーマンスや鳩を模した風船、モニター映像によるもの等に変わった。 また、ギリシア神話においてハトは、愛と美の女神アプロディーテーの聖鳥とされていた他、イアーソーンを始めとする英雄たち(アルゴナウタイ)が乗るアルゴー船が、互いに離れたりぶつかり合ったりを繰り返す二つの巨岩シュムプレーガデスの間を通り抜ける際、試しにハトを通り抜けさせて安全を確認するエピソードや、狩人オーリーオーンがプレイアデス(巨神アトラースの七人娘たち)を追い回した際、それを不憫(ふびん)に思った主神ゼウスが彼女たちをハトに変え、さらに星へと変えたエピソード等が存在する。
生物として
飼育史
人との関係カワラバト(ドバト)
伝書鳩
文化・比喩「en:Doves as symbols」も参照