ハツカネズミ属
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ハツカネズミ属
ハツカネズミ
分類

:動物界 Animalia
:脊索動物門 Chordata
亜門:脊椎動物亜門 Vertebrata
:哺乳綱 Mammalia
:齧歯類(ネズミ目)Rodent
上科:ネズミ上科 Muroidea
:ネズミ科 Muridae
亜科:ネズミ亜科 Murinae
:ハツカネズミ属 Mus

学名
Mus
Linnaeus1758
英名
Mouse



本文を参照

野ネズミ

ハツカネズミ属(Mus)は、ネズミ目(齧歯目)に属する小型哺乳類ハツカネズミに代表される。本項目では、この属のネズミの総称として、以下「マウス」と表記する。
概要

いくつかの地域では野鼠としても一般的。これらの種は、タカやワシなどの多くの鳥に捕食される。これらは人家や小屋に入り込んで食物に被害を与えることがある。

シロアシネズミ(英語版)やシカシロアシネズミ(英語版)なども屋内に棲むことがあるが、これは別属のシロアシネズミ属(英語版)に分類される種である。

マウスは、2年半ほどは生きる能力はあるが、野生では平均して約4ヶ月ほどしか寿命がない[要出典]。これは捕食者が多いためである。、野生、あるいは節足動物のある種のものまでも、高頻度でマウスを餌にする。だが、多様な環境(ニッチ)への高度の適応能力と、人間との共生(片利共生)の能力によって、きわめて成功している哺乳類の属の一つである。

マウスはしばしば害獣となる。作物を食害したり[1]、構造物を損傷したり、寄生虫便などによって伝染病をまき散らす[2]。北アメリカでは、マウスの糞便からハンタウイルスが空気中に飛散することがあり、ハンタウイルス肺症候群の原因になりうる。猫を家畜化した最初の目的は、マウスや、ラットドブネズミ類)の捕食であると考えられている[要出典]。

マウスは基本的に夜行性の動物なので視力が貧弱であるが、そのかわり聴覚が発達している。また、嗅覚も特に発達しており、食物の場所や捕食者の感知に使っている[3]
繁殖 誕生直後のマウス

雄雌ともに繁殖は生後50日(7-8週齢)ほどから可能である。雌の最初の発情は生後25-40日頃に起こる。雌の排卵は自然発生的で、性周期(発情する期間)は4-5日間である。マウスは多発情性であり、一年を通じ、四季を問わず繁殖できる。発情は概ね、夕方に始まって12時間ほどで終わるので、夜間に交尾することが多い。交尾の時刻を調整する目的で性周期のステージを検査するには、膣垢検査法(en:Vaginal wet mount)が有効である。交尾したかどうか、交配後に雌の膣口に付く膣栓(または交尾栓)の有無で判定できる。膣栓は、乳白色で固い樹脂様の固形物であり、交配後、数時間が経つと膣口から自然と脱落してしまう。また、時に膣口の少し奥に埋まっていることもあるので、膣栓の有無を確認する時は膣口を広げて見ると良い。そして膣垢中の精子の有無も、交配済の確実な指標である[4]

複数の雌マウスを同棲で飼育すると発情が休止することがあり、性周期も止まってしまう傾向がある。雄のマウスに直に接触したり、雄マウスのフェロモン曝露されたりすると、大概の雌マウスは、その後、約72時間で発情が始まる。この、性周期の同期化はホイットン効果(en:Whitten effect)として知られている。交配直後の雌マウスを、交配相手ではない、別の個体の雄のフェロモンに暴露させると、着床を妨げることがある。これはブルース効果として知られる[4]

妊娠期間の平均は20日間である。出産後わずか14-24時間に、妊娠可能な発情が起こる(分娩後発情)。授乳(哺育)と妊娠が同一時期に重なるならば、着床を遅らせると3-10日間ほど妊娠期間が延びる。1回の分娩に於ける産仔数の平均は8-12匹だが、血統、交配・妊娠・分娩の時季や環境、母マウスの体型や月齢(週齢)などに依存する。一般的な傾向として、同系交配のマウスは、異系交配や雑種マウスよりも妊娠期間が長く、産仔数も少ない。出生時の仔マウスは体重が0.5-1.5gであり、体毛は無く、瞼と耳が閉じている。母マウスによる産仔の食殺(共食い)は起こりにくいが(低率だが起こる)、分娩時から出産後2日?1週間ほどは、母マウスを刺激せず(触らない)安静を保つことが望ましい。産仔は生後3週間ほどで離乳を迎え、その時の体重は10-12gである。母マウスが分娩後発情で妊娠していなければ、離乳後2-5日で性周期を再開する[4]

出生直後の産仔の雌雄を判別するには、会陰部を見る。雄マウスは雌マウスよりも、生殖器と肛門との2点間の距離が長く、生殖乳頭(genital papilla)が大きい。同腹仔の雌雄で見比べると判別しやすい。
実験用マウス「ハツカネズミ#実験用マウス」も参照 ノックアウトマウス

生物学心理学の分野で、マウスはもっとも一般的な実験動物である。これは、マウスが哺乳類であり、また多くの点でヒト相同の部分を持っているためである。哺乳類のモデル生物としては、ラットよりマウスの方がより利用される。

マウスの遺伝子は全て解読されていて、殆どの遺伝子がヒトとホモログ(相同)である。人間に対しては非人道的になるような処理でも、マウスには可能である(ただし「動物の権利」も参照)。ノックアウトマウスは、遺伝子ノックアウトの技法によって、一つ以上の遺伝子が無効化された、遺伝子組換えマウスである。

研究にマウスを使用するのには他の理由もある。マウスは小型であり、安価で、世話が容易で、短期間で増殖する。比較的短い期間でマウスの複数世代を観察することができる。誕生時から飼育して、人間と接触の機会が十分に与えられれば、マウスはかなり従順である。しかしながら、いくつかの系統は、獰猛なことで知られている。なお、マウスとラットは単に体の大きさが違うだけではなく、元の生活環境の違いによりいくつか生理学的な相違点がある点に注意が必要である。例えば代表的なものとしてマウスには胆嚢があるがラットにはない。

メスは、ホルモンバランスの変化の大きさや妊娠など、実験データの収集に影響を与える要素があるため、実験ではオスを使用するのが一般的であるが、このため薬の性差による違いを見逃すなどの弊害も指摘されている[5]
分類および分布

亜属 Coelomys


トガリハツカネズミ Mus crociduroides スマトラ西部

スリランカハツカネズミ Mus mayori スリランカ

シッキムハツカネズミ Mus pahari インド北東部?カンボジア南西部、ベトナム北部

バルカンハツカネズミ Mus vulcani ジャワ島西部


亜属 Mus

インドハツカネズミ Mus booduga パキスタン、インド、スリランカ、バングラデシュ、ネパール南部、ミャンマー中央部

オキナワハツカネズミ Mus caroli 沖縄諸島、台湾、中国南部?タイ。マレーシア、インドネシア西部に移入

クチバハツカネズミ Mus cervicolor インド北部?ベトナム。スリランカ・ジャワ島に移入

クックハツカネズミ Mus cookii インド南部・北東部。ネパール?ベトナム

Mus cypriacus キプロス

Mus majorius ギリシア、アテネ

テジナハツカネズミ Mus famulus インド南西部

Mus fragilicauda タイ、ラオス

Mus macedonicus バルカン半島?イスラエル、イラン

ハツカネズミ Mus musculus 全世界に移入

Mus nitidulus ミャンマー中央部

Mus spicilegus オーストリア?ウクライナ南部、ギリシア

アルジェリアハツカネズミ Mus spretus フランス南部、イベリア半島、バレアレス諸島、モロッコ?チュニジア

ツチイロハツカネズミ Mus terricolor インド、ネパール、バングラデシュ、パキスタン。スマトラに移入


亜属 Nannomys

バウレハツカネズミ Mus baoulei 象牙海岸?ギニア

ガマハツカネズミ Mus bufo ウガンダ山岳部、ルワンダ、ブルンジ、コンゴ共和国周辺

アンゴラハツカネズミ Mus callewaerti アンゴラ、コンゴ共和国

グンディハツカネズミ Mus goundae 中央アフリカ共和国

ハウサハツカネズミ Mus haussa セネガル?ナイジェリア北部


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