ハダカデバネズミ
[Wikipedia|▼Menu]

ハダカデバネズミ
ハダカデバネズミ Heterocephalus glaber
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))

分類

ドメイン:真核生物 Eukaryota
:動物界 Animalia
:脊索動物門 Chordata
亜門:脊椎動物亜門 Vertebrata
:哺乳綱 Mammalia
:齧歯目 Rodentia
:デバネズミ科 Bathyergidae
亜科:ハダカデバネズミ亜科 Heterocephalinae Landry, 1957[2]
:ハダカデバネズミ属
Heterocephalus Ruppell, 1842[3]
:ハダカデバネズミ H. glaber

学名
Heterocephalus glaber
Ruppell, 1842[3]
和名
ハダカデバネズミ[4]
英名
Naked mole rat[1][3]


ハダカデバネズミ (Heterocephalus glaber) は、哺乳綱齧歯目デバネズミ科ハダカデバネズミ属に分類される齧歯類。本種のみでハダカデバネズミ属を構成する[3]
分布

エチオピアケニアジブチソマリア[1]
形態

頭胴長(体長)10.3 - 13.6センチメートル[3]。尾長3.2 - 4.7センチメートル[3]体重9 - 69グラム[3]。体表には接触に対して感度の高い細かい体毛しか生えていない[4]。属名Heterocephalusは、「変わった頭部、変な頭部」の意[3]。種小名glaberは、「無毛の、毛のない」の意[3]。口唇が襞状で門歯の後ろで閉じるようになっており、穴を掘るときに土が口内に侵入するのを防いでいる[4]

体毛が無いことや環境の変動が少ない地中で生活するためか、体温を調節する機能がなく体温も低い[4]。哺乳類でありながら体温調節ができない変温動物である。それによってエネルギー消費量を低く抑えている。気温が低くなると集団が幾重にも重なった上に子供たちを置いて保温する[5]

染色体数は2n = 60[3]
分類

以前はコツメデバネズミ亜科Georychinaeに分類されていたが、複数の分子系統解析で本種がデバネズミ科の他属から最も初期に分岐する結果が得られたことから、2005年の時点では本種のみでハダカデバネズミ亜科Heterocephalinaeを構成する説が有力とされる[2]。一方で、分岐年代が3120万年前と推定されることから、独立した科Heterocephalidaeとする説も2014年に提唱されている[6]
生態

完全地中棲。10頭以上290頭以下(平均75 - 80頭)の、大規模な群れ(コロニー)を形成し生活する[3]。後述するように本種は哺乳類では数少ない真社会性の社会構造を持つ(哺乳類で真社会性を持つものは他にダマラデバネズミ[7]・オオデバネズミ[8]・アンセルデバネズミ[9]などが知られる)。群れの中で1つのペアのみが繁殖を行い、群れの多くを占める非繁殖個体のうち小型個体は穴掘りや食料の調達を、大型個体は巣の防衛を行う[4]。群れの中の血縁度は高く、非繁殖個体がいる社会構造を形成したり群れを維持する要因になっていると考えられている(自分と極めて血縁な個体の世話をすることで、自分が繁殖しなくても自分と極めて近い遺伝子を次の世代に残すことができる)[4]。門歯で穴を掘り、後肢を使い掘った土を後ろへ掻き出す[4]。地表へ土を排出する際も、後肢を使い勢いよく土を蹴り出す[4]。複数の個体により穴掘り・トンネル内の土の運搬・地表への土の排出を分担して行う[4]。60 - 70頭のコロニーで長さ約3キロメートルに達する巣穴も確認されている[3]。地中は温度の変動が少ないが体温が低くなると密集したり、逆に体温が高くなるとトンネルの奥へ避難する[4]

植物食で、地下植物や植物のを食べる[4]。幼獣は成獣の排泄物も食べる[4]。捕食者はヘビ類が挙げられ、掻き出した土の匂いを頼りに巣穴に侵入したり土を掻き出している個体を捕食する[4]

繁殖様式は胎生。群れの中でもっとも優位にある1頭の雌(繁殖メス)と、1頭または数頭の雄のみが繁殖に参加する。妊娠期間は66 - 74日[3]。飼育下では80日の間隔を空けて幼獣を産み、1回に最大27頭の幼獣を産んだ例がある[4]。野生下・飼育下でも、年に4 - 5回に分けて50頭以上の幼獣を産む[3]。繁殖メスが死んだ場合は巣内が平和であれば複数のメスの性的活性が活発化するものの、そのうち1頭のメスのみが急に成長し争いも起こらず2 - 3週間ほどで繁殖を行い新しい繁殖メスになる[4]。そのため繁殖メスによる化学物質(フェロモン)が群れ全体に作用し他の個体の繁殖が抑制されていると考えられ、集団で排泄を行う便所での尿や巣内での集合場所で密着することでフェロモンを発散している可能性が示唆されている[4]。授乳は繁殖メスのみが行うが、幼獣の世話は群れの他個体も参加して行われる[4]。飼育下の寿命は15年以上で、繁殖メスでは最長で28年2か月の生存記録もある[3]

巣の中で産まれた個体は同じ巣に留まってワーカーや繁殖個体になることが多いので、巣内で近親交配が繰り返されることになる。そのため巣内の個体間の血縁度が非常に高くなる。これが本種の真社会性の進化を促したとする説がある(血縁選択による血縁利他主義の進化)一方で、親による操作説のほうが上手く説明できる証拠も示されており(女王による監視など)、議論が続いている。
寿命

老化に対して耐性があり、健康な血管機能を維持できる[10]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:40 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef