ハタハタ
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ハタ (魚類)」とは異なります。

ハタハタ
ハタハタ A. japonicus
上越市立水族博物館飼育個体
分類

:動物界 Animalia
:脊索動物門 Chordata
亜門:脊椎動物亜門 Vertebrata
:条鰭綱 Actinopterygii
:スズキ目 Perciformes
:ハタハタ科 Trichodontidae
:ハタハタ属 Arctoscopus
:ハタハタ A. japonicus

学名
Arctoscopus japonicus
Steindachner, 1881
英名
Sailfin sandfish

ハタハタ(学名:Arctoscopus japonicus、鰰、?、雷魚、燭魚、英語: Sailfin sandfish)は、スズキ目に属するの一種。別名カミナリウオ、シロハタなど。

日本では主に日本海側で食用にされ、秋田県の県魚である[1]。煮魚や焼き魚に調理されるほか、干物、塩蔵、味噌漬けなどにもされ、しょっつると呼ぶ魚醤にも加工される。魚卵はブリコと呼ばれる。
生態

寿命は5年で体長20センチメートル程になり[2]、水深0 - 約550メートル[3] までの泥や砂の海底に生息する深海魚である。産卵は海域によって異なり11月から12月で、浅い岩場の藻場を中心に行われる。オスは1歳から、メスは2歳から繁殖活動に参加し、産卵では死亡せず数年間にわたり繁殖をする[4][5]

餌は、端脚類橈脚類オキアミ類、アミ類、イカ類、魚類を捕食している[5][6]
分布

生息域は北西太平洋で、特に日本海オホーツク海千島列島カムチャッカ半島など[7]。沖山宗雄(1970年)により日本周辺に棲息するハタハタの個体群は、3つの地域的な集団に大きく分類できるとされ[8]、そののちのミトコンドリアDNA(mtDNA)の解析により、この3つが遺伝子的にも区別されることが明らかとなっている[9]。また、これら個体群を更に地域群に細分化する研究者もいる[10]

北海道太平洋群(石狩湾系群/噴火湾系群/日高系群/釧路系群/根室系群[10]) - 北海道周辺を繁殖海域とする個体群。

日本西岸群 (日本海北部系群/日本海西部系群[11][12]) - 鳥取県から秋田県沖の主に日本海を回遊する個体群。繁殖海域はこれら各県の沿岸とされるが、じっさいは能登半島以西にはまとまった産卵場がなく[12]、日本海西部系群の繁殖海域は朝鮮半島東岸であると報告されている[13][11]

朝鮮半島東岸群 - 朝鮮半島東岸を繁殖海域とする個体群。

東北地方の太平洋側(三陸沖)での漁獲は少なく、定常的な産卵場所は確認されていない[9]。回遊経路は解明されていないが北海道太平洋群や日本西岸群が三陸沖で捕獲されることから回遊範囲は広いと考えられる[9]
形態

体は体高が高く、左右に扁平でうろこがない。小さな歯が並ぶ大きな口が上向きに斜めに付く。鰓蓋に5本の鋭い突起がある。背ビレは前部と後部が完全に分かれ、かなり離れている。尾ビレ、胸ビレが大きく、特に胸ビレは非常に大きい。浮き袋は持たず、昼間は泥や砂に埋まって目や背ビレだけを出して隠れ、夜に行動する。

卵塊(卵)の色は、赤、茶、緑、黄など様々である。卵の色素は胆汁色素カロチノイド類のイドザンチン、クラスタザンチン、ビタミンA2などで構成される。色を決定する要因は十分に解明されていないが、餌の生物に含有されているアスタキサンチンを元に自身が生合成したイドザンチン、クラスタザンチンの量が影響していると考えられる[14]
分類

ハタハタは現在の分類学においてスズキ目ワニギス亜目ハタハタ科に属しているが、ミトコンドリアDNAの解析結果によれば、ハタハタはカサゴ目カジカの仲間に近いことがわかっている[15]
近縁種

エゾハタハタ
Trichodon trichodon- アリューシャン列島アラスカ州から南はカリフォルニア州まで分布[7][16]

名称

「ハタハタ」は古語ではの擬声語で[17]、現代の「バチバチ」にあたる。秋田県で雷の鳴る11月ごろに獲れるのでカミナリウオの別名でも呼ばれ、漢字では魚偏に「雷」で「?」と書く[2]。また、冬の日本海の荒波の中で獲りにいくことが多いから「波多波多」と書くこともある。ほか、漢字では魚偏に「神」で「鰰」とも書く[2]。この字の由来について大田南畝は、体の模様が富士山に似ており、めでたい魚として扱われたためと著書に記している[18]

秋田弁では「ハタハタ」の「タ」の音は有声化して無気濁音で発音される。このため、しばしば「ハダハダ」という音に聞こえ、これが地方名として収録される例もある[19]

秋田では関ヶ原の戦い佐竹氏が秋田に移封してきた年以降大漁になった事から「サタケウオ[20]」とも呼ばれ、秋田に移った佐竹氏を慕って水戸からやって来たとの伝説がある。

新潟県ではシマアジとも呼ぶ[2]。鳥取県ではシロハタと呼ぶほか、カタハ、ハタと呼ぶ地域もある[21]
漁業

底曳網定置網刺し網で漁獲される[2]昭和40年代までは秋田県において大量に水揚げされ、最盛期には15,000トンを超える漁獲量があった[22]。きわめて安価で流通していたことから、一般家庭でも1箱11キログラムの箱単位で買うのが普通であり、「1箱50 - 300円、魚より箱代の方が高い」と言われるほどであった[23][24]。冬の初めに大量に買ったハタハタを、各家庭で塩漬け味噌漬けにして冬の間のタンパク源として利用していた。しかし乱獲などにより[注釈 1]1976年(昭和51年)以降は急激に漁獲量が減ったため(1979年(昭和54年)の漁獲量は最盛期の1割未満である1,386トン、1991年(平成3年)にはわずか71トン)[22][24]1992年(平成4年)9月から1995年(平成7年)8月まで全面禁漁が施行された。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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