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ハス(蓮[4]、学名: Nelumbo nucifera)は、インド原産のハス科[注 1]多年性水生植物[5]。別名、ハチス[4]。中国名は蓮[2]。
地下茎は「蓮根」(れんこん、はすね)といい、野菜名として通用する。 日本での古名「はちす」は、花托の形状を蜂の巣に見立てたとするのが通説である。「はす」はその転訛。 水芙蓉(すいふよう、みずふよう)、もしくは単に芙蓉(ふよう)、不語仙(ふごせん)、池見草(いけみぐさ)、水の花などの異称をもつ。 漢字では「蓮」のほかに「荷」または「藕」[6]の字をあてる。 ハスの花と睡蓮(スイレン)を指して「蓮華」(れんげ)といい[7]、仏教とともに伝来し古くから使われた名である[注 2]。 属名 Nelumbo はシンハラ語から。種小名 nucifera はラテン語の形容詞で「ナッツの実のなる」の意。 英名 Lotus(ロータス)はギリシア語由来で、元はエジプトに自生するスイレンの一種「ヨザキスイレン」 Nymphaea lotus
名称など
特徴水面に繁殖するハス
原産地はインド亜大陸とその周辺。日本では帰化植物として[2]、北海道、本州、四国、九州に分布し、池や沼などに自生する[4]。
多年草で、春に地中の地下茎から芽を出して茎を伸ばし、水面に葉を出す[4]。草高は約1メートル、茎に通気のための穴が通っている。はじめは浮葉になるが、のちに長い葉柄をもって水面よりも高く出る葉もある[4]。葉は直径40 - 50センチメートル (cm) の円形で[4]、葉柄が中央につき、撥水性があって水玉ができる(ロータス効果)。沼や池の沿岸部に沿って多く自生する。
花期は夏(7 - 8月)で、葉柄よりも長い花茎を水上に出して、白またはピンク色の1輪の花を咲かせる[4][注 3]。早朝に咲き昼には閉じる[注 4]。花後は、花床の穴の中で、実を結ぶ[4]。
栽培品種も、小型のチャワンバス(茶碗で育てられるほど小型の意味)のほか、花色の異なるものなど多数ある。ロータス、日本の農業百科事典のイラスト(1804)
なお、果皮はとても厚く、土の中で発芽能力を長い間保持することができる。1951年(昭和26年)3月、千葉市にある東京大学検見川厚生農場の落合遺跡で発掘され、理学博士の大賀一郎が発芽させることに成功したハスの実は、放射性炭素年代測定により今から2,000年前の弥生時代後期のものであると推定された(大賀ハス)。その他にも中尊寺の金色堂須弥壇から発見され、800年ぶりに発芽に成功した例(中尊寺ハス)や埼玉県行田市のゴミ焼却場建設予定地から出土した、およそ1,400年から3000年前のものが発芽した例(行田蓮)もある。
近年の被子植物のDNA分岐系統の研究から、スイレン科のグループは被子植物の主グループから早い時期に分岐したことがわかってきた。しかしハス科はそれと違って被子植物の主グループに近いとされ、APG分類体系ではヤマモガシ目に入れられている。
後述するように、人間にとっては鑑賞や宗教的なシンボル、食用などとして好まれる植物であり、雷魚などの淡水魚にとっても好ましい住みかとなるが、繁茂し過ぎると他の水生生物に悪影響を与える懸念がある。このため手賀沼(千葉県)などでは駆除が行われている。水中の茎を切ると組織に水が入って腐り、再生しなくなる[8]。 はす、未熟、生100 gあたりの栄養価
利用
エネルギー356 kJ (85 kcal)
炭水化物14.9 g
食物繊維2.6 g
脂肪0.5 g
タンパク質5.9 g
ビタミン
ビタミンA相当量(0%) 0 μg
チアミン (B1)(16%) 0.18 mg
リボフラビン (B2)(8%) 0.09 mg
ナイアシン (B3)(9%) 1.4 mg
パントテン酸 (B5)(17%) 0.85 mg
ビタミンB6(12%) 0.16 mg
葉酸 (B9)(58%) 230 μg
ビタミンB12(0%) (0) μg
ビタミンC(33%) 27 mg
ビタミンD(0%) (0) μg
ビタミンE(4%) 0.6 mg
ビタミンK(1%) 1 μg
ミネラル
ナトリウム(0%) 2 mg
カリウム(9%) 410 mg
カルシウム(5%) 53 mg
マグネシウム(16%) 57 mg
リン(27%) 190 mg
鉄分(5%) 0.6 mg
亜鉛(8%) 0.8 mg
マンガン(63%) 1.33 mg
他の成分
水分77.5 g
廃棄部位:殻及び薄皮
単位
μg = マイクログラム (英語版)
IU = 国際単位
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。
出典: [9]
食用、薬用、観賞用として湿地で栽培される。根茎は11月ごろから翌年の2月ごろまでに掘り取って採取する[4]。果実は8 - 11月ごろに花床ごと採取する[4]。 地下茎はレンコン(蓮根)として食用になる。日本では茨城県、徳島県で多く栽培されており、中国では湖北省、安徽省、浙江省などが産地として知られている。レンコンは、湯がいて水にさらし、皮を剥いて煮込むほか、酢の物や炒め物などにする[4]。中国では、すり潰して取ったでん粉を葛と同様に、砂糖とともに熱湯で溶いて飲用する場合もある。 生薬名としても、蓮根(れんこん)と称される[4]。民間療法では下痢止めに、1日量20グラム (g) を刻んで、400ミリリットル (mL) ほどの水で半量になるまで煎じて、食後に3回に分けて服用する用法が知られる[4]。 葉は荷葉(かよう)と称して生薬にする[4]。 はすの実と呼ばれる果実(種子)にもでん粉が豊富であり、生食される。若い緑色の花托が生食にはよく、花托は堅牢そうな外見に反し、スポンジのようにビリビリと簡単に破れる。柔らかな皮の中に白い蓮の実が入っている。若い実は炊き込みご飯に利用する[4]。種は緑色のドングリに似た形状で甘味と苦みがあり、生のトウモロコシに似た食感を持つ。また甘納豆や汁粉などとしても食べられる。
地下茎
葉詳細は「蓮の葉」を参照
種子詳細は「ハスの実」を参照緑色のドングリに似た形状の種子(皿、右)。皮を剥くと白い実が現れる(左)。これをそのまま生食する。
また、生薬名を蓮実(れんじつ)[4]、蓮肉(れんにく)という生薬として、よく熟した実を炒って食べると、鎮静、滋養強壮作用[4]がある。 果実の若芽は、果実の中心部から取り出して、茶外茶として飲用に使われる。 ハスを国花としているベトナムでは、雄蕊で茶葉に香り付けしたものを花茶の一種である蓮茶として飲用する。資料によれば甘い香りが楽しめると言う。かつては茶葉を花の中に挿入し、香りを茶葉に移していた[10]。 また朝鮮半島・中国には茶外茶として花そのものを原料としたものがあり、こちらも蓮茶と称される。 撥水性の葉と茎がストロー状になっている性質から、葉に酒を注いで茎から飲む象鼻杯(ぞうびはい)という習慣もある。ベトナムでは茹でてサラダのような和え物にして食べる。中国のハスの一大産地である湖北省では、春から夏にかけて、間引かれた若茎(葉の芽)を炒め物・漬け物などにして食べる[11]。日本においては食べやすく切った茎を煮物の材料として用いる。産地である秋田県では、茎を用いた砂糖漬けが作られている。 茎の表皮を細かく裂いて作る糸を「茄絲(かし)」、茎の内部から引き出した繊維で作る糸を「藕絲(ぐうし)」と呼び、どちらも布に織り上げる等、利用される。 ハスの花、すなわち蓮華は、清らかさや聖性の象徴として称えられることが多い。
芽
花茶外茶の一種、蓮茶。
茎
象徴としてのハス
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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