亜ジチオン酸ナトリウム
別称亜二チオン酸ナトリウム
ハイドロサルファイトナトリウム
識別情報
CAS登録番号7775-14-6
52 °C, 325 K, 126 °F
沸点
分解
水への溶解度よく溶ける
危険性
EU分類Harmful (Xn)
EU Index016-028-00-1
NFPA 704321
RフレーズR7, R22, R31
Sフレーズ(S2), S7/8, S26, S28, S43
引火点100°C
発火点200°C
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
亜ジチオン酸ナトリウム(あジチオンさんナトリウム)は化学式 Na2S2O4 の化合物であり、亜ジチオン酸のナトリウム塩である。亜二チオン酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイトナトリウム、あるいは単にハイドロサルファイトとも呼ばれる。また、ジチオナイトといった場合、この化合物や、溶かすことによって得られる亜ジチオン酸イオンを指す場合が多い。 無水物はわずかに亜硫酸ガスの刺激臭を帯びる白色の単斜晶である。水に溶けやすく、エタノールにはわずかに溶ける。他に二水和物が知られているが、黄色味がかった柱状結晶で、容易に脱水して無水物になるほか、空気中の酸素によって酸化されやすく不安定である。無水物がC2対称構造をとりねじれ角16°の重なり形配座であるのに対し、二水和物はねじれ角56°のゴーシュ配座になっている[1]。以下の記述は無水物についてである。 空気中で 90 °C 以上に加熱すると次第に分解して硫酸ナトリウムと二酸化硫黄を生じる。空気がなければ 150 °C で激しく分解し、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムと二酸化硫黄、微量の硫黄を生じる。 空気中で粉末の状態で少量の水と接すると、分解によって生じる熱によって引火することがある。空気がなく湿気だけの場合にはわずかに分解するのみである。 水溶液は酸性であり低温ではゆっくりと、高温では速やかにチオ硫酸ナトリウムと亜硫酸水素ナトリウムに分解する。また酸性度が高いほど速く分解する。 2 Na 2 S 2 O 4 + H 2 O ⟶ Na 2 S 2 O 3 + 2 NaHSO 3 {\displaystyle {\ce {2Na2S2O4\ + H2O -> Na2S2O3\ + 2NaHSO3}}} また酸素が存在すれば硫酸水素ナトリウムと亜硫酸水素ナトリウムに分解する。 Na 2 S 2 O 4 + O 2 + H 2 O ⟶ NaHSO 4 + NaHSO 3 {\displaystyle {\ce {Na2S2O4\ + O2\ + H2O -> NaHSO4\ + NaHSO3}}} 硫酸水素ナトリウムと亜硫酸水素ナトリウムはpHを下げるため、次第に分解が加速する。強い酸性条件では以下のような二酸化硫黄が発生する反応が起きる。 2 H 2 S 2 O 4 ⟶ 3 SO 2 + S + 2 H 2 O {\displaystyle {\ce {2H2S2O4 -> 3SO2\ + S\ + 2H2O}}} 3 H 2 S 2 O 4 ⟶ 5 SO 2 + H 2 S + 2 H 2 O {\displaystyle {\ce {3H2S2O4 -> 5SO2\ + H2S\ + 2H2O}}} 一方、アルカリ性 (pH 9?11) の溶液は安定で1時間に約1%しか分解しない。このとき強い還元力を示す。強アルカリ性条件では亜硫酸と硫化物に分解する。 3 Na 2 S 2 O 4 + 6 NaOH ⟶ 5 Na 2 SO 3 + Na 2 S + 3 H 2 O {\displaystyle {\ce {3Na2S2O4\ + 6NaOH -> 5Na2SO3\ + Na2S\ + 3H2O}}} いくつかあるが、工業的主流は亜鉛塵法とギ酸ソーダ法である。
化学的性質
水溶液中での分解
製法
亜鉛塵法
亜鉛の粉末を水に懸濁し二酸化硫黄を通すと、亜鉛が溶けて亜ジチオン酸亜鉛となる[2]。水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムを加え、亜鉛分を水酸化亜鉛(II)の白色沈澱として析出させ、減圧濃縮した後にメタノールと塩化ナトリウムを加えると亜ジチオン酸ナトリウムの無水物が析出する。メタノールで洗浄後乾燥させる。 Zn + 2 SO 2 ⟶ ZnS 2 O 4 {\displaystyle {\ce {Zn\ + 2 SO2 -> ZnS2O4}}} ZnS 2 O 4 + 2 NaOH ⟶ Zn ( OH ) 2 ↓ + Na 2 S 2 O 4 {\displaystyle {\ce {ZnS2O4\ +2NaOH->Zn(OH)2\downarrow \ +Na2S2O4}}}
ギ酸ソーダ法
三菱ガス化学が実用化した方法で[3]、80%メタノールにギ酸ナトリウムを溶かし、二酸化硫黄と水酸化ナトリウムを加えると、亜ジチオン酸ナトリウムの無水物が析出する。ギ酸ナトリウムは多価アルコール製造の副生成物として得られるため、亜鉛塵法と比べて低コストであることが利点となっている。 HCOONa + 2 SO 2 + NaOH ⟶ Na 2 S 2 O 4 ↓ + CO 2 + H 2 O {\displaystyle {\ce {HCOONa\ +2SO2\ +NaOH->Na2S2O4\downarrow \ +CO2\ +H2O}}}
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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