ハイダイビング
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シンクロナイズド・ハイダイビング

ハイダイビング(英語: High diving)とは、飛込競技の種目の一つであり、他の種目に比べ高い場所から飛び込む。崖から飛び込む場合はクリフダイビング(英語: Cliff diving)と呼ばれる。ハイダイビング・クリフダイビングはエクストリームスポーツの一つであり、スタントマンによるパフォーマンスや、スポーツ大会における競技として実施される。

ハイダイビングは国際水泳連盟(FINA)の競技リストに追加された後、2013年スペインバルセロナで開催された2013年世界水泳選手権において初めて実施された[1][2]。世界選手権では、男子は高さ27メートルの、女子は高さ20メートルの飛び込み台から飛び込む。それ以外の公式大会では、男子は通常高さ22メートルから27メートル、女子は高さ18メートルから23メートルの飛び込み台から飛び込む[3]。ハイダイビングは、選手が大会まで本番と同じ環境で練習できない場合がしばしばあるという点で独特である[1]。ハイダイビングの選手は、着水時の最高速度が時速96キロメートルに達する。
歴史 1948年ロンドンオリンピックの飛込競技で男子10m高飛込(英語版)に出場したロルフ・スティガーサンド(英語版)

そもそも飛込競技は「非常に高い場所」から飛び込むスポーツとして始まったものである。怪我の危険性が低く楽しめるので、その後専ら体操競技の選手によって行われることになる。そこから、主眼は「(安全な着地場所としての水が用意された)空気に飛び込む」ことへと発展していった。トーマス・ラルフはこのスポーツを「springing」と命名しようとしたが、すでに「diving」という語が定着していたために普及しなかった。飛込は多くの愛好家たちによって行われるスポーツへと変化していった。初期には、飛込に適した場所を見つけることが問題となっていた。そして人々は、いかなる高所からも飛び込むようになった。例えば、ヨーロッパやアメリカ合衆国では橋から飛び降り、水に頭から飛び込むようになった。これはヨーロッパ、とくにドイツスウェーデンで体操的な動きとしての「おかしな飛込」として発展した。飛込はさらに飛び込む途中での体操的な動きを発展させ、「飛び板飛び込み」と「高くおかしな飛込」という名称を与えられた上で、1908年のロンドンオリンピックと1912年のストックホルムオリンピックで行われた。スポーツ競技として行われた最初の飛び込みは1889年にスコットランドで行われたものであり、飛び込み台の高さは6メートルであった[4]。今日のラテンアメリカでは、プロフェッショナルが30メートル以上の高さから飛び込むことがしばしば行われる[5]

一方、クリフダイビングは1770年、ハワイ諸島マウイ島の王であったカヘキリ2世(英語版)が「レレ・カワ」(「水しぶきを上げることなく、高い場所から水中に足から飛び込む」という意味)と呼ばれる練習を行わせたのが、記録に残る最初のものである[6]。王の戦士らはこの練習に参加することが強制され、自己の勇敢さと王への忠誠を示すことになった。この練習は後にカメハメハ1世の治世下で競技化され、参加選手は自身のスタイルと、着水時に上げた水しぶきの量とで評価された。

世界選手権におけるハイダイビングの最初の女子の優勝者はアメリカ合衆国のセシリエ・カールトン(英語版)で、2013年2013年世界水泳選手権において総合得点211.60点を記録し、金メダルを獲得した[7][8]。最初の男子の優勝者はコロンビアのオーランド・デュケ(英語版)で590.20点を獲得した[9]
競技のあらまし
プールでのハイダイビング

2018年まで、ハイダイビングの規格に沿った常設の飛び込み台は世界でオーストリアにしか設置されていなかったが、それも冬季には使用されていなかった。2018年中華人民共和国広東省肇慶市の肇慶体育中心に肇慶英雄ハイダイビング練習センターが開業し、そこにハイダイビングの規格に沿ったものとしては世界で初めてとなる、通年使用可能な飛び込み台が設置された[10] [11]。しかし、ハイダイビングの練習は通常、高さ10メートルの飛び込み台で行われる。ハイダイビングは服が作られるのと同じように、それぞれの部分の集まりによって構成されていると言える[12]。5回転宙返りしたうえでの飛び込みなどはスリルがある飛び込みの方法であるが、より単純な飛び込みをすることを好む選手もいる[12]
屋外でのハイダイビング

いくつかの屋外での飛び込みは、非常に高い場所からの飛び出しを含む。そのような飛込を行う選手は、「(屋外でのハイダイビングには)アドレナリン、楽しさ、そして危険が伴う。そのため、あなたが水面に向かって飛び出すとき、あなたの心の中には多くの異なるエネルギーが駆け巡るであろう。そのエネルギーがどこかに行ってしまい、そしてあなたが着水するとき、あなたは上機嫌になり、自分の成果を実感するであろう」と書いている。いくつかの場所では(公式大会においては必ず)スキューバダイビングを行える救助チームが用意されている。
クリフダイビング スイスでのハイダイビング

クリフダイビングの選手は飛び込みの構成要素をそれぞれ別々に分けて練習することになる。全て通しての飛び込みを行うのは大会中だけである。クリフダイビングはそれを行うすべての選手にとって、極めて難しくかつ危険な挑戦である[13]。クリフダイビングを行うのは肉体的な挑戦のみならず、精神的な挑戦にもなりうる。
競技

ハイダイビングの世界選手権においては男子も女子も出場するが、女子の飛び込み台の高さは20メートルまでに制限されている。レッド・ブル・クリフ・ダイビング・ワールド・シリーズ(英語版)は毎年開催され、最大で7万人の観客を集める。選手は城壁・崖・塔・橋・コペンハーゲン・オペラハウスなど、さまざまな場所から飛び込む[14]。3人の有名な選手、すなわちギャリー・ハント(英語版)、ブレイク・オルドリッジ(英語版)、そしてトーマス・デーリー(デーリーは2008年北京オリンピックにおいてシンクロナイズドダイビングに出場している)はバルセロナ港のモール・デ・ラ・フスタに設置された高さ27メートルの飛び込み台から飛び込むことになっていた。この飛び込みは3秒間で行われ、速度は時速60キロメートルであった。イギリスのギャリー・ハントは2015年8月に実施された世界水泳選手権で優勝した。この大会の参加者の平均年齢は30歳であった。2024年パリオリンピックでハイダイビングを正式種目として採用させるための、選手らによる努力が続けられている[12]
高さの世界記録

ハイダイビングにおいて飛び込んだ高さの世界記録の主張については多くの議論があり、その多くは何を以て有効な飛込とするかの議論である[15]アメリカン・ブロードキャスティング・カンパニー(ABC)のワイド・ワールド・オブ・スポーツ(英語版)は10年以上にわたり、エミー賞を受賞したスポーツ番組のために、飛び込む高さの世界記録を生み出してきた。この番組では、記録として認定されるためには、競技者は飛び込む際に少なくとも1回の宙返りをしかつ、着水後他者の助けを借りずに水から上がることが必要とされた。1983年のワイド・ワールド・オブ・スポーツではシーワールド・サンディエゴ(英語版)にて、本番組で最後となる世界記録の更新が行われた。リック・チャールズ(英語版)、リック・ウィンターズ、ダナ・クンツェ、ブルース・ボッチャ、マイク・フォレーの5人の選手が、52メートルの高さからの飛び込みに成功した[16]1985年には香港香港海洋公園でランディー・ディクソン(英語版)が53.24メートルの高さから飛び込んだが、大腿骨を骨折したために自力で自ら出ることができなかった[17]


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