ネメシス_(人工衛星)
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ネメシス
( USA-207、USA-257 )
イメージは同様のロッキード・マーティン社製A2100M衛星バスを用いている先進EHF通信衛星(AEHF)のもの。ネメシス衛星は、これにもう少し大きなパラボラアンテナ2面を装着した形をしている。
所属アメリカ国家安全保障局 (NSA)
主製造業者ロッキード・マーティン[1]
衛星バスA2100A (ロッキード・マーティン)
任務シギント (電子諜報)
打上げ日時2009年9月8日 (USA-207), 2014年9月17日 (USA-257)
輸送ロケットアトラス V 401
打上げ場所ケープカナベラル空軍基地 SLC-41
COSPAR ID2009-047A (USA-207), 2014-055A (USA-257)
軌道要素
参照座標地球周回軌道
軌道静止軌道
軌道周期23.93 時間
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ネメシス(英:Nemesis)は、アメリカ国家安全保障局 (National Security Agency:NSA) が運用中の、アメリカ合衆国シギント(信号諜報)偵察衛星(スパイ衛星)のシリーズであり、ネメシス1(USA-207、通称PAN)とネメシス2(USA-257、通称CLIO)の2基の配備が確認されている。

静止軌道上に配備され、静止軌道上の他国の通信衛星の近くに忍び寄って、地上の地球局からの通信電波を傍受するFORNSAT(Foreign Satellite)と呼ばれる諜報活動を行っている。

同じく静止軌道上でシギント活動を行っている発展型オリオン(メンター)シリーズの衛星は、地上間の通信を直接衛星で傍受するOVERHEADと呼ばれる諜報活動を行うために、直径100mを超える巨大な受信アンテナを有しているが、ネメシス衛星は通信衛星の近くに忍び寄り、通信衛星に向けられた地上からの比較的電力の大きな電波を横取りすることが可能なため、受信アンテナは通常の通信衛星のものと同程度の大きさである。その代わり高い機動性を持っており、ターゲットとなる通信衛星を頻繁に変えて忍び寄るマニューバーを行っていることがアマチュア観測者達によって確認されている[2]
正体判明までの経緯USA-207のミッション・パッチ静止軌道上で2基の商用静止衛星に忍び寄り、通信情報を盗取している PAN (USA-207)。2011年7月4日撮影 (photo: Marco Langbroek, Leiden, the Netherlands)

後にネメシス1と同定されることになる、アメリカ合衆国の機密衛星USA-207は、2009年9月8日にアトラス V 401 ロケットを用いて、ケープカナベラル空軍基地から打上げられた。打上げロケットの静止軌道への衛星投入能力から考えて、衛星の質量は最大で 4950 kgと推定された[3][4]

この衛星の名称がPANであること、ロッキード・マーティン社により製造され、衛星バスは同社の通信衛星用のA2100を用いていること、以前から存在が明らかにされている同社のP360として知られているプロジェクトと同じものであることなどは、打上げ前後のロッキード・マーティン社のニュースリリースなどで明らかになっていた[5][6][7][8]。しかし、アメリカ国家偵察局 (NRO)を含め、アメリカ政府のどの機関に所属するかは公表されていなかった。これは異例のことであり、NROL番号も割り振られていない。

打上げの翌日に、米空軍宇宙軍団 (Air Force Space Command)はニュースリリースにおいて、この衛星の名称がPANであることを正式に確認し、用途は通信衛星であると説明しているが、所属機関や、さらに詳細な用途・目的は公表しなかった[9]

打上げ前にミッション・パッチが公開されているが、これには"PAN・Palladium At Night"という意味不明のロゴと、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス社とアトラスロケットのロゴ、第45航空団 (45th Space Wing)を表す「45 SW」の文字、そしてフライトナンバーが記載されているだけであった。

PANは、Palladium At Nightの略号だとされているが、これは無意味なフレーズであり、衛星の正式名称が本当にPANなのか、疑念を抱かせるものであった[6]。これらは衛星の正式名称(もしあるなら)を詮索させないように一般人に与えられたディスインフォメーションではないかと考えられたが(「名前をつけてね」“pick a name.”の略ではないかというジョークも流布された)[10]、結局これ以上の情報は与えられることはなかったため、PANの名称で落ち着くことになった。

衛星の正式名称、目的が不明なまま、アマチュア観測者達はPANの行動を追跡し、その静止軌道における尋常ではない行動を観測して、さらに困惑を深めていった[11]。アマチュア観測者の間では、対テロ戦争における中東(特にイエメン)でのドローンを用いたターゲッティッド・キリングの実施時期と、PANの活動が活発になる時期が符合する傾向があることが指摘され、PANはドローンのコントロール専用の通信衛星ではないかとの推測がかなり有力な説として注目されていた。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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