ネグレクト
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「育児放棄」はこの項目へ転送されています。「放任」とは異なります。

ネグレクト(: neglect)は、セルフケアができない弱者の世話をする責任がある保護者が責務を怠たることによって加害者となる行為。 児童虐待障害者虐待高齢者虐待患者虐待のひとつ。子供に対するネグレクトは育児放棄(英語版)(いくじほうき)、育児怠慢(いくじたいまん)、監護放棄(かんごほうき)とも言う。また、ペットの飼育放棄(英語版)(しいくほうき)に対しても指すことがある[1]保護者が特定の宗教的理念に基づく治療拒否や非科学的なモノを信じるなどし、適切な医療を受けさせないことは医療ネグレクトと呼ばれる。日本では2012年(平成24)4月施行の民法改正で親権停止制度が導入され、子供に科学的医療を受けさせない親に対して、家庭裁判所による親権停止が可能になった[2]

英語のNeglectの「怠慢・粗略」「無視・軽視」[3]から生まれた用法である。Negligenceは運転者のネグリジェンス・機長や船長のネグリジェンス・危険物管理者のネグリジェンスなどというように、全ての分野における義務不履行や(職務などの)怠慢を意味している。ルイス・ハイン「Neglected children(無視された子供たち)」1917年
概要

心理的虐待および身体的虐待の一種でもあり、「自らの実子への無視」「特に自立性や自救能力が低く、幼児や低年齢児童の養育を著しく怠ること」を指す場合が多い。具体的には「食事や衣服を定期的に供与しない」「排泄物や廃棄物の始末を適切に行わない」「長時間の保護放棄」などがあり、しばしば虐待を伴う。その結果、子供は健全な心身の発育を妨げられ、最悪の場合は死に至ることもある。軽度のネグレクトでは表面的には分かりづらく周囲は気付きにくいが、実際には軽度のネグレクトの方が多く身近で起こっている。

ネグレクトを引き起こす要因として、周囲の環境に追い込まれ、社会福祉から溢れてしまったが故にそのような行動をしてしまうといった周囲の環境に原因がある場合も多い。

チンパンジーニホンザルゾウトラネズミペンギンペリカンフクロウなど他の哺乳類鳥類にも広く認められている。環境悪化などによるハチ・アリ類の育児放棄や甲殻類の抱卵の途中放棄、植物の落果現象なども含めるとするならば、生物界全体に広く認められる現象である。
積極的ネグレクトと消極的ネグレクト

現代社会においてネグレクト(育児放棄)と言われる現象は積極的ネグレクトと消極的ネグレクトの2つに分けられる。「積極的ネグレクト」は、子育てのできない明確な理由がないのに育児放棄することを指す。対して「消極的ネグレクト」は、親の経済力の不足、身体的な病気や精神疾患を抱えている、知的障害がある、知的障害はないが無学で養育の知識がないなど、何らかの理由で育児ができないことを指す。
事例

例えば、過去の事例では以下のようなケースが典型的である。

充分な
食事を与えない。

病気になっても病院に受診させない。

下着など不潔なまま放置する。

子供が自発的に「学校に行きたい」と希望しているにもかかわらず通学させない。

暑い日差しの中、駐車場の車内へ放置する。またはパチンコなどの娯楽に興じ、育児を放棄する。
日本でも3?4月の天候下で熱中症による死亡事例も発生している。子供を保育所や親戚などに預けさえすればパチンコ店に入店してよいことになるため、子どもを預けパチンコ店などに入店させない場合でもネグレクトを引き起こす要因になり得る。

防寒に充分な着衣を着けさせず、寒冷な外気に晒す。冬季に濡れた下着だけでアパートのベランダに放置された児童が低体温症で死亡した事例がある。

また日本では義務教育制度があるが、学齢期に達した児童を就学の猶予または免除[注 1]教育委員会に認められていないのに学校にも通わせず、自宅軟禁の形で放置することも、広義では育児放棄とされる。その際に、該当する児童が保護者以外(親族や近隣の住人など)に頼れる相手が社会にいない場合、他に行く当てがなく、その状況から逃げ出すこともできないので、実質的な監禁状態であるともみなされる。ただし何らかの事情(いじめや、教師からの体罰)により児童側が学校に通う事が出来ないために、学校に通わせないケースも多く、その場合は不登校と呼ばれる。

平成20年度厚生労働省調査では、児童相談所が対応した児童虐待の件数は全体で42,664件で、うちネグレクトは15,905件で身体的虐待についで二番目に多い[4]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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