ネオニコチノイド
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ネオニコチノイド(: neonicotinoid)とは、クロロニコチニル系の殺虫剤の総称である。イミダクロプリド、アセタミプリドジノテフランなどが該当する。農薬として世界100カ国以上で販売されている。
概要

ニコチンに殺虫作用があることは知られており、農薬として硫酸ニコチンが使われていた。しかし昆虫だけでなくヒトにも強い毒性があるため、ニコチンの化学構造式を少し変えることで、新たなニコチン類似物質であるネオニコチノイドが開発された。有機リン系殺虫剤、合成ピレスロイド系殺虫剤、カーバメート系殺虫剤に対する感受性が低下した害虫に対しても、ネオニコチノイドは殺虫効果を発揮する。ネオニコチノイドの場合は、虫をただ殺すために使用されるだけでなく、虫によって建材や作物や植木が被害を受けないように使用される。ネオニコチノイドが無味無臭である点も、好都合である。

ネオニコチノイドは、水溶性が高く植物体への浸透移行性もあるため、残効が長いという特長を有する。このため、殺虫剤の散布回数を減らせるため、世界において主流の殺虫剤として用いられ、1990年代から使用が急増した。その後、世界各地でミツバチの大量失踪事例、いわゆる蜂群崩壊症候群が多発したため、ネオニコチノイド系殺虫剤が一因ではないかと仮説が立てられた[1]。このためヨーロッパでは予防原則に則り、規制が強化されている[1]欧州連合(EU)では2018年に、登録ネオニコチノイド主要5種の内3種を使用禁止し、フランスは主要5種全てを禁止した。なお、脊椎動物(哺乳類)がネオニコチノイドを摂取した際の影響評価は議論が続いているが、まだ結論は出されていない[2]
構造

ネオニコチノイドは、化学構造の中にシアノイミン(=N-CN)、ニトロイミン(-C=N-NO2)、クロロピリジル基、クロロチアゾリル基フリル基を持つ点が特徴である。なお、分子内にクロロ基を持つ構造が代表的なので、分子内にクロロ基を持たないものも含めて、クロロニコチニル系とも呼ばれる。

ニコチン

最初に発明されたネオニコチノイド、ニチアジン

種類

ニトログアニジン系

クロチアニジン
- 2002年、商品名「ダントツ」「ベニカ」

ジノテフラン - 2002年、商品名「スタークル」

チアメトキサム - 1997年、商品名「アクタラ」


ニトロメチレン系

ニテンピラム - 1995年、商品名「ベストガード」

ニチアジン - 1979年にシェル株式会社が開発した。しかし光に対して不安定なため、実用化されなかった。


ピリジルメチルアミン系

アセタミプリド - 1995年、商品名「モスピラン」「マツグリーン」「イールダーSG」「アリベル」

イミダクロプリド - 1991年、商品名「アドマイヤー」「メリット」

チアクロプリド - 2001年、商品名「バリアード」「カリプソ」



クロチアニジン

ジノテフラン

チアメトキサム

ニテンピラム

アセタミプリド

イミダクロプリド

チアクロプリド

作用機序

ネオニコチノイドは神経細胞のシナプス部分の後膜に存在する神経伝達物質アセチルコリンの受容体である「ニコチン性アセチルコリン受容体 (nAChR)」に結合し、神経細胞を興奮させ続けることで、昆虫を死に至らしめる[3]
毒性

ヒトなどの哺乳類には低濃度で単独使用した場合、急性毒性は比較的低い。一方で昆虫には高い毒性を持つという、選択毒性を発揮する。

ところで、ネオニコチノイドの作用点であるアセチルコリン受容体は、昆虫のみならず、ヒトなどにも発現している受容体である。これは、アセチルコリンが、昆虫のみならず、ヒトでも神経伝達物質として使用されているためである。ヒトにおいて、アセチルコリンは中枢神経系のみならず、自律神経でも、神経筋接合部においても作用している。さらに、哺乳類がネオニコチノイドを経口摂取すると、腸管から容易に吸収されるだけでなく、血液脳関門すら容易に通過する[4]

このようなことから、ネオニコチノイド系農薬がヒトのへの影響、とりわけ、発達中で外来物質の影響を受けやすい胎児小児大脳への影響を懸念する意見もある[5]。哺乳類がネオニコチノイドを摂取した際の影響については議論が続いているが、まだ結論に至っていない[2]
生態系への影響

ネオニコチノイド系殺虫剤は、これまで世界で使用されてきた有機リン系殺虫剤と比べ、ヒトなどの霊長類哺乳類、さらに、鳥類爬虫類への安全性は高い。一方で昆虫に対する毒性は強く、また植物体への浸透移行性を持ち、さらに残効も長いため、殺虫成分が植物体内に長期間残る[注釈 1]


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