ネイピア数
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  数学記事シリーズ
数学定数 e


自然対数 · 指数関数

応用:複利 · オイラーの等式 · オイラーの公式 · 半減期 · 指数増加/減衰

e の定義:e の無理性 · e の表現 · リンデマン?ワイエルシュトラスの定理

人物:ネイピア · オイラー

シャヌエルの予想 (英語版)

関数 y = ax の x = 0 における微分係数が 1(赤線)になるのは a = e(青線)のときである(破線は a = 2, 4 のとき)。

ネイピア数(ネイピアすう、: Napier's constant)は、数学定数の一つであり、自然対数の底である。ネーピア数、ネピア数とも表記する。記号として通常は e が用いられる。その値はe = 2.71828 18284 59045 23536 02874 71352 …

と続く超越数である。ネピアの定数とも呼ばれる。欧米では一般にオイラー数 (Euler's number) と呼ばれる(オイラーの定数 γ やオイラー数列とは異なる。)。また、ネイピア数の e は、18世紀の数学者オイラー(Euler)のeの略といわれる[1]オイラーにちなんで名づけられた物事の一覧#オイラー数も参照。

なお、コンピュータにおける指数表記では、e または E がネイピア数ではなく、常用対数の底である10を示すので注意が必要である[2]。ネイピア数は微分積分学に度々登場するため、解析学において重要な数とされる。
歴史

ネイピア数の近似値と言えるものが記された最も古い文献は、1618年ジョン・ネイピアによって発表された対数の研究の付録に収録されていた表である。その表自体はウィリアム・アウトレッドによって書かれたとされている。

厳密にネイピア数そのものを見い出したのはヤコブ・ベルヌーイと言われており、複利の計算で lim n → ∞ ( 1 + 1 n ) n {\displaystyle \lim _{n\to \infty }\left(1+{\frac {1}{n}}\right)^{n}}

を求めようとした。これは e に等しくなる。

この数に初めて定数記号を割り当てたのはゴットフリート・ライプニッツだとされている。1690年と1691年のクリスティアーン・ホイヘンス宛ての手紙の中で、記号 b を用いた。レオンハルト・オイラーは、1727年からこの数を表すのに記号 e を使い始め、オイラーによる1736年の『力学』がネイピア数を e で表した最初の出版物となった[3]。その後しばらくは c によってこの数を表す流儀もあったが、やがて e が標準的な記号として受け入れられるようになった。

オイラーは、指数関数 ax が d d x a x = a x {\displaystyle {\frac {d}{dx}}a^{x}=a^{x}}

を満たすとき a = e であることを示した。

さらに積分 ∫ 1 x d t t {\displaystyle \int _{1}^{x}{\frac {dt}{t}}}

対数の性質を持ち、対数として見た時の底が e でもあることを示した。この対数を自然対数という。
定義
オイラーによる定義
e は d d x a x = lim h → 0 a x + h − a x h = a x lim h → 0 a h − 1 h = a x {\displaystyle {\frac {d}{dx}}\,a^{x}=\lim _{h\rightarrow 0}{\frac {a^{x+h}-a^{x}}{h}}=a^{x}\lim _{h\rightarrow 0}{\frac {a^{h}-1}{h}}=a^{x}} を満たすような実数 a、つまり lim h → 0 e h − 1 h = 1 {\displaystyle \lim _{h\rightarrow 0}{\frac {e^{h}-1}{h}}=1} をネイピア数の定義とした。
収束数列による定義
以下の式の右辺は、ヤコブ・ベルヌーイによって、
利子の連続複利の計算との関連で言及されたものである。 e = lim n → + ∞ ( 1 + 1 n ) n {\displaystyle e=\lim _{n\to +\infty }\left(1+{\frac {1}{n}}\right)^{n}} 元金1を年利1、付利期間を .mw-parser-output .sfrac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .sfrac.tion,.mw-parser-output .sfrac .tion{display:inline-block;vertical-align:-0.5em;font-size:85%;text-align:center}.mw-parser-output .sfrac .num,.mw-parser-output .sfrac .den{display:block;line-height:1em;margin:0 0.1em}.mw-parser-output .sfrac .den{border-top:1px solid}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}1/n 年で1年預金すれば、1/n 年ごとに利子 1/n で元利合計が増えていき、1年経つと右辺の式になる。n → +∞ とした極限は連続複利の元利合計となる。オイラーは、導関数が元の関数と等しい指数関数の底が、この式の右辺によって求まることを示した。ここで n は自然数だが、n を実数として変動させた場合も上の式は同じ値に収束する。ln e = 1
微分積分学の基本的な関数を使った定義
e = exp ⁡ 1 = ∑ n = 0 ∞ 1 n ! {\displaystyle e=\exp 1=\sum _{n=0}^{\infty }{\frac {1}{n!}}} ln ⁡ e = 1 {\displaystyle \ln e=1} exp x は指数関数、ln x は自然対数であり、互いに逆関数になっている。指数関数や自然対数をネイピア数 e により定義する場合、これらの式によりネイピア数を定義することは、循環定義となってしまう。そのためにネイピア数 e を用いない指数関数・対数関数の定義として以下のものがある。
定義に用いられる諸公式グラフ y = 1/x の 1 ? x ? e における領域の面積は 1 になる[4]

ネイピア数を定義するために用いられる指数関数や対数関数の性質・公式を挙げる。これらの式と e = exp 1 などを組み合わせることによって、ネイピア数が定義できる。

exp ⁡ x = ∑ n = 0 ∞ x n n ! {\displaystyle \exp x=\sum _{n=0}^{\infty }{\frac {x^{n}}{n!}}} これは関数 exp ⁡ x = e x {\displaystyle \exp x=e^{x}} をテイラー展開したものである。

d d x y ( x ) = y ( x ) , y ( 0 ) = 1 {\displaystyle {\frac {d}{dx}}y(x)=y(x),\quad y(0)=1} という常微分方程式の初期値問題の解 y(x) によって exp x = y(x) が定義される。

∫ 1 x d t t = ln ⁡ x {\displaystyle \int _{1}^{x}{\frac {dt}{t}}=\ln x}

d d a x a 。 a = 0 = ln ⁡ x {\displaystyle \left.{\frac {d}{da}}x^{a}\right|_{a=0}=\ln x}

性質

n → +∞ とした極限は、 lim n → + ∞ ( 1 + 1 n ) n = e {\displaystyle \lim _{n\to +\infty }\left(1+{\frac {1}{n}}\right)^{n}=e}


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