ヌートリア
日本で野生化した外来種のヌートリア
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ヌートリア(Nutria、中国語: 海狸鼠、学名: Myocastor coypus)は、哺乳綱齧歯目ヌートリア科ヌートリア属の小型哺乳類[4]。別名は沼狸。南アメリカ原産。日本には本来分布していない外来種で、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律では指定第一次指定種に分類されている。 かつての日本では、沼狸(しょうり、ぬまたぬき)、海狸鼠(かいりねずみ)、洋溝鼠(ようどぶねずみ)、舶来溝鼠(はくらいどぶねずみ)などとも呼んだ。 「ヌートリア」とはスペイン語でカワウソ(の毛皮)を意味し、原産の南米では本種のことを「Coipo」と呼ぶ。英名でも「Nutria」より「Coypu」の方が一般的である。フランス語では「ラゴンダン ragondin」と呼ぶ。 南アメリカを原産地とする。パラグアイ、ウルグアイ、ボリビア、アルゼンチン、チリなどに分布[4]。また、毛皮を取るために移入したものが野生化し、アメリカ合衆国、カナダ、フランス、ポーランド、ドイツ、日本を含むアジアなどにも分布する[4]。 体色は茶色(赤みを帯びた黒色)[4]。上毛は粗いが灰色の下毛は柔らかい[4]。 頭胴長40-60 cm、尾長30-45 cm、体重5-9 kgの大型の齧歯類である。水辺の生活に適応しており、泳ぎが得意で5分以上潜水することもある。体つきはドブネズミなどに似るが、耳が小さく、後ろ足の第1指から第4指までには水かきがある[5]。門歯は黄色で一生伸び続ける[4]。また、水上でも授乳できるよう、乳首がやや背中寄り(腹部より上部寄り)についている[4]。 歯式 本種のみでヌートリア属Myocastorを構成する[3]。所属科(ヌートリア科)については諸説あり、ヌートリア属を独立したMyocastoridae(狭義のヌートリア科)としたり、Capromyidae(別名カプロミス科、フチア科)やEchimyidae(別名アメリカトゲネズミ科)に含める説もある[3]。 水辺に雌雄のペアまたは雌を中心とする小さな群れをつくって生活する[4]。結氷するような寒冷地では、生息できない。 食性は雑食性で、ホテイアオイなどの水生植物の葉や地下茎、淡水産の巻貝を主に食べているが、農作物を食害することもある[4]。夜行性[4]。明け方と夕方に活発な採餌のための徘徊行動が見られ、日中は巣穴で休息していることが多い。雌は定住的で、雄に比べて行動範囲は狭い。若い個体は、新しい縄張りを求めて移出する。 季節を問わず繁殖する周年繁殖だが、出産は春と秋が多い[4]。妊娠期間は123?150日で、1産で2?11匹、平均5匹の子を産む[4]。出産時の子の体重は225gくらい[4]。十分に発達してから生まれるため、丸1日後には泳げるようになり、3日後くらいには早くも成体と同じ餌を摂り始める。その後、約半年で性成熟する。寿命は10年程度[4]。 生態はマスクラットによく似ており、形態も類似しているため、混同されることがある[7]。 丈夫で育てやすく繁殖力も高く、柔らかい上質な毛皮が安価に大量に入手できるため、第二次世界大戦頃には軍隊の防寒用飛行服の裏地に向いているものであるとして、世界各国で飼育された。 日本では1939年にフランスから150頭が輸入され、飼育が奨励された。当時は軍隊の「勝利」にかけて「沼狸」(しょうり)と呼ばれ、1944年ごろには西日本を中心に全国で4万頭が飼育されていた[8][9]。 中国では1953年当時のソビエト連邦から毛皮と展示目的に移入され、農村経済の自由化が始まった1980年ごろには毛皮が採れると多くの農民が飼育したが、管理の悪さによって死亡率が高く、毛皮の品質も悪く利益が出ないまま、多くは飼育放棄に至った。 生肉にはタンパク質20-21%、脂肪4-10%が含まれている。中国、特に広東省や広西チワン族自治区の広東料理では、「野味」と呼ばれる各種野生動物の料理(ジビエ)が珍重されており、ヌートリアも省区内や江西省などで飼育されたものであるが、食用にされている。 繁殖力が強く、アメリカ、ルイジアナ州では1932年には個体数20頭だったが1962年には推定200万頭に増えたとされる[4]。 日本では、1907年にドイツから上野動物園に輸入されたのが初記録とされる[11]。1939年(昭和14年)に軍服の毛皮の材料としてアメリカ、(上記文献ではフランス)から輸入され、戦時中には毛皮や食用として養殖もされていたが、終戦後に大量に屠殺・放逐されたことで野生化しはじめた[12]。
名称
分布
形態
立ちあがったヌートリア
後ろ足に水かきがあるヌートリアの頭蓋骨と歯泳ぐヌートリア
分類
生態 ペア
利用
毛皮
肉
外来種問題
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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