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ヌルポインタ(英: null pointer 英語: [n?l p??nt?(?)])とは、何のオブジェクトも指していないことを表す特別なポインタの値である。
プログラムではヌルポインタを、不定長のリストの終端を表したり、何らかの動作の結果が失敗であることを表したりするのに使用する。後者の用法は、nullable型やオプション型(英語版)の Nothing 値(None 値)を使用することもできる。
ヌルポインタの値や型がいかなるものかという詳細は言語によって異なる。実際的にはいかなるオブジェクトも参照しないという言語もあり、参照先を求めようとするとJava(NullPointerException)のように例外が発生するものもある。
ヌルポインタはほとんどの処理系(この場合、言語処理系プログラムだけではなく、ハードウェアまでを含めて)で、内部的に数値0で表現されるが、ごく希に、0でない処理系もある。言語仕様上の意味としては普通「アドレス0(あるいは他のアドレス)を指し示すポインタ」ではなく、どこも指し示さないものとされる。
ヌルポインタを未初期化のポインタと混同してはならない。ヌルポインタは、あらゆる有効なオブジェクトとも異なることが保証されている。それに対し、言語や実装によっては、未初期化のポインタはそのような保証はなく、C言語の自動変数のようにでたらめなアドレス(不定値)を指している可能性もある。
ヌルポインタはヌル値とは意味が違う。ヌルポインタは多くのプログラミング言語において「値がない (no value)」ことを意味し、ヌル値はリレーショナルデータベースにおいて「未詳値 (unknown value)」であることを意味する。ほとんどのプログラミング言語では2つのヌルポインタは等しいが、リレーショナルデータベースエンジンは2つのヌル値を等しいとはみなさない(それらは未詳値を表しているので、それらが等しいかどうかはわからない)。目次 C言語では、すべての型の2つのヌルポインタは等しいことが保証されていない[1]。マクロ NULL が処理系定義のヌルポインタ定数と定義されている[2]。C89 (ISO/IEC 9899:1990) や C99 (ISO/IEC 9899:1999) では、NULL はヌルポインタ定数を表現する物として定義され、ヌルポインタ定数は整数定数の 0 もしくは 0 を汎用ポインタ void * に型キャストしたものとして定義されている。C言語における汎用ポインタ型はあらゆるポインタ型に暗黙的変換可能となっているため、ポインタ型変数にNULLを代入する際は型キャストの記述が不要となる。POSIX.1-2008 では整数定数の 0 ではなく、0 を void * に型キャストした物、(void *) 0 でなければならないと定義していて、rationale にて、整数の 0 ではあってはならないと、その定義の差を明記している[3]。よって、ほぼ全ての標準Cライブラリは NULL を (void *) 0 としている。そして、C89, C99 では、ヌルポインタ定数を、(void * 以外を含めた)ポイント型に型キャストした物をヌルポインタと定義している。ほとんどの実装はそのまま変換するが、C89, C99 の仕様では、整数からポインタ、ポインタから整数への型キャストがどのような結果になるかは実装依存と明記されていて、ポインタに 0 や NULL を代入したときに、ほとんどのコンパイラは数値の 0 を代入したというコンパイル結果を生成するが、数値の 0 以外を代入するというコンパイル結果を生成しても良いという仕様になっている[4]。整数の 0 をポインタにキャストするとヌルポインタとなることは規定されているが、ヌルポインタを整数にキャストしても 0 になることは規定されていない。存在するオブジェクトや関数へのポインタはヌルポインタであってはならないと規定されている。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}近年[いつ?]はほとんど無いが、歴史的には、ヌルポインタを 0 以外で表現することもあった[5][6]。 ヌルポインタを参照して、そのメモリアドレスに読み書きしようとすると、それは何も指していないため、メモリ保護の仕組みが存在する実行環境では、通常セグメンテーション違反やアクセス違反が発生する。この場合、Unix系ではシグナル、Windowsでは構造化例外処理 C++では、C言語よりも型チェックが厳密になり、汎用ポインタvoid *をあらゆるポインタ型に暗黙的変換することが不可能になった。代わりに、整数リテラル 0 がヌルポインタ定数を意味するという仕様になった[7]。C言語からの移植を容易にするためなどの目的で、NULL マクロ自体は依然として標準ヘッダーで定義されるが、C言語とは異なり整数リテラル 0 で実装されている。 ただし、整数リテラル 0 をヌルポインタとみなすという仕様は、関数オーバーロードやテンプレート関連でしばしば問題を引き起こす結果となった。C++11では代替として、std::nullptr_tという型を持ち、明確にヌルポインタであることを表すnullptrリテラルが導入された[8]。C++11以降でもNULLは引き続き利用可能だが、整数定数のゼロに等しいとは限らず、実装は処理系依存となる[9]。 Pascalでは綴り記号[10] nil である。nil は、空の値を表す[11]。 そのほかにも参照型の概念を持つ言語には、用語やキーワードこそ違えど同様なものが存在する。例えばJavaやC#ではnull、C++/CLIおよびC++11ではnullptr、Visual BasicおよびVisual Basic .NETではNothing、PythonではNone、Objective-CとRubyではnil、REALbasicではNilがヌルポインタに相当するキーワードである。ポインタではなく参照を利用する言語の場合、概念上ヌルポインタに相当するものはヌル参照 (null reference) と呼ばれる。 2009年にアントニー・ホーアは、彼が1965年にALGOL Wの一部としてヌル参照を発明したと述べている[12]。2009年のカンファレンスでホーアはこの発明を「10億ドルの誤り」と述べた。.mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}それは10億ドルにも相当する私の誤りだ。null参照を発明したのは1965年のことだった。当時、私はオブジェクト指向言語 (ALGOL W) における参照のための包括的型システムを設計していた。目標は、コンパイラでの自動チェックで全ての参照が完全に安全であることを保証することだった。しかし、私は単にそれが容易だというだけで、無効な参照を含める誘惑に抵抗できなかった。これは、後に数え切れない過ち、脆弱性、システムクラッシュを引き起こし、過去40年間で10億ドル相当の苦痛と損害を引き起こしたとみられる。
1 C言語
2 C++
3 その他の言語
4 歴史
5 脚注
6 外部リンク
C言語
C++
その他の言語
歴史
脚注^ ISO/IEC 9899, clause 6.3.2.3, paragraph 4.
^ ISO/IEC 9899, clause 7.17, paragraph 3: NULL... which expands to an implementation-defined null pointer constant...
^ ⇒stddef.h - standard type definitions - The Open Group Base Specifications Issue 7
^ ⇒Can a conforming C implementation #define NULL to be something wacky - Stack Overflow
^ ⇒comp.lang.c FAQ list - Question 5.17
^ “ ⇒C FAQ 5.17 ヌルポインターに0以外の値を使用するマシンや、異なる型のポインターに異なる内部形式を持つマシンは本当に存在するのか。”. C言語 FAQ 日本語訳. 2021年4月12日閲覧。
^ Stroustrup, Bjarne (March 2001). “Chapter 5: Pointers, Arrays, and Structures: 5.1.1: Zero”. The C++ Programming Language