ヌマエビ科 Atyidae
ヤマトヌマエビ Caridina multidentata
分類
ヌマエビ科(ヌマエビか、学名 Atyidae )は、エビの分類群の一つ。ヌマエビ、ヤマトヌマエビ、ミナミヌマエビなど、熱帯から温帯の淡水域に生息するエビを含む分類群である。一科のみでヌマエビ上科 Atyoidea を構成する。 エビとしては南方系で、熱帯から亜熱帯にかけて多く分布する。日本でも日本海側や東日本では少ないが、南西諸島や暖流に面した西日本の太平洋側で種類数が多い。なお奄美群島以南の琉球語ではヌマエビ類を総称し「サイ」、または「セー」と呼ぶ。 体の大きさは多くが1cm-数cmほどで、エビ類としては比較的小型である。5対の歩脚のうち前の2対が鋏脚に変化しており、その先には剛毛が密生する。この鋏は餌をつまむのに用いられるが、剛毛が発達した種類の中には流下する餌を収集するために鋏を利用するものもいる。歩くときは後ろの3対を使う。 「沼蝦」の名の通り、川、湖、池などの淡水域で見られるが、洞窟等の地下水中に特異的に生息する種類も多い。種類毎に好みの水温・水流・光量等の差異があり、それぞれ好みの環境に棲み分ける。また汚染に弱く、生息地に農薬などが流入するとメダカなどよりも先に死滅してしまう。逆にヌマエビ類がいる環境は豊かな自然が残っているという証明にもなる。 名の通り一生を淡水で過ごす陸封型の種類が多いが、幼生時に海で成長する両側回遊型の種類もいる。これらは幼生が海流に乗って運ばれるため分布域が非常に広く、例えば日本と共通した種類はマダガスカルやフィジー諸島でも見られる。また、目立った河川が無い島嶼でも、海岸のわずかな湧水や地下水中に生息している。 食性は雑食性で、生物の死骸や藻類、デトリタスなどを食べる。生きた動物を捕食することはほとんどないが、ヤマトヌマエビなどは自分より小さい小魚やエビを捕食することがある[1][2][3][4][5][6]。 ヌマエビ類はほとんどの種類が食用には適さず、釣り餌に利用される程度だったが、現在は観賞用やタンクメイトとして、熱帯魚飼育者の間で脚光を浴びるようになった。特にヤマトヌマエビは丈夫で飼育しやすいこと、水槽内の藻類を食べて回ること、大型で見栄えがすることなどから、現在は海外の熱帯魚愛好家にもその名が知られている。トゲナシヌマエビとミナミヌマエビもわりと丈夫だが、ミゾレヌマエビやヒメヌマエビはやや長期飼育が難しい。しかしそれに伴った野生個体の乱獲と、両側回遊種の繁殖が困難なことはヌマエビ類飼育の問題点である。ミナミヌマエビは陸封型で繁殖は割と簡単だが、ヤマトヌマエビなど両側回遊型のエビは成長に海水が必要で、産卵してもなかなか成長させることができないのが多くの飼育者の現状である[3]。 他には、ヌカエビが毒性学における毒性試験(バイオアッセイ)に用いられる。農薬等への耐性が低く、飼育や繁殖が容易であることを利用したものである[7]。
概要
飼育対象としてヤマトヌマエビ(右)とレッドチェリーシュリンプ(左)