ヌアザ(Nuadha、ヌァザ、ヌァダ)は、ケルト神話に登場する神の一柱で、トゥアハ・デ・ダナーン(ダーナ神族)の王。その名は「幸運をもたらす者」「雲作り」[2]を意味する[疑問点 – ノート]。英語ではヌアダ(Nuada)。銀の腕(アガートラーム(Airget-lamh)または アガートラム(Agateram)の別名を持ち、合わせて銀腕のヌアザ(ヌアザ・アガートラーム)とも称される。ブリトンではノドンスと呼ばれた神がヌアザに相当する神であると考えられている[3]。
病を治す力を持つとされ、水に縁のある神である。戦いの神としても伝えられ、その強大な力はゼウス(ユーピテル)に例えられる。 フィル・ボルグ族とのモイトゥラの戦いでは陣頭の指揮を取り、戦場にて武勇を轟かす。四日間に渡る合戦の末、フィル・ボルグの王エオホズ・マクアーク
神話
ヌアザの王権が復活したため、暴君ブレス王は王座から引きずり落とされる。これに不服であったブレスはフォモール族の大軍勢を率いて、ダーナ神族に戦いを挑んできた。ヌアザも武器を取り戦ったが、フォモール族の狂暴な蛮力の前にダーナ神族は敗れる。フォモール族の支配の下、国は圧政を強いられる。
ダーナ神族はルーの天才・多才振りを見て、フォモールに対し勝利を収めるための指導者になるよう懇願。ヌアザの後継者として王位についたルー率いる神族軍は合戦に完勝した[4]。
最期はバロールに妃のヴァハと共に殺害された。 ダーナ神族がアイルランドに持ち込んだ四つの宝のうちの一つに「剣」が数えられる。この剣はヌアザの物であり、フィンディアス[5]という都市からもたらされた、とされることが多い[6]。「何者もこの剣から逃れることはできず、一度鞘から抜かれればこれを耐える者はいなかった」とされるが[7]、この謳い文句は『スノッリのエッダ』に登場するヘグニ王の剣、ダーインスレイヴの物と酷似している。これはアイルランドとアイスランドの間で文化的交流があったことを示す、両地方の説話に共通したモチーフの一つであるという指摘がある[8]。 なおこの剣が『来寇の書』において固有の名で呼ばれることはなく、単に「(ヌアザの)剣」(claidhim)[9]とされる。 ブリテン諸島にはヌアザの他にも銀の腕の持ち主と思われる人物の伝説が残っている。 ウェールズの伝説上の人物であるシーズ・サウエレイント
ヌアザの剣
銀の腕の持ち主
脚注^ BBC n.d.
^ a b グリーン 1997, p. 27.
^ ジョーンズ 2005, p. 135.
^ グリーンは、ヌアザは長年の抗争に既に気力を失っており、フォモールとの戦いを煽ったのはルーであるとしている(グリーン 1997, p. 27)
^ Findias.校訂本二ではフィニアス(Finnias)。
^ 「剣」はルーの物であり、ゴリアスからもたらされたとする異聞が韻文に残されている。(Macalister 1941, pp. 250?251)[1]
^ Macalister 1941, pp. 106?107,¶305. [2]
Macalister 1941, pp. 144?145,¶325. [3]
Macalister 1941, pp. 168?169,¶357. [4]
校訂本三は、この剣が持つ毒のために何者もこの剣から逃れることはできないとしている。
^ 中央大学人文科学研究所 1991, pp. 241?243.
^ "cloidim","cloidheam","claideb"とも。
^ スリッズ、スイッズとも転写される。
^ 『シーズとセヴェリスの物語(英語版)』の表題の人物シーズ(Lludd)はシーズ・サウエレイントと同名であるが、同一人物であるかは不明である。
マッカーナは「[両者を]引き離すことは難しい」と二者の同一性を消極的に肯定している(マッカーナ 1991, p. 136)。
^ Nudd ニュッドとも転写される。
^ a b マイヤー 2001, p. 115.
^ リース 2001, p. 639.
参考文献
BBC (n.d.). “BBC - A History of the World - Object : The Tandragee Man - 3000 year old statue”. BBC. 2015年11月8日閲覧。
Macalister, R.A.Stewart (1941), Lebor Gabala Erenn THE BOOK OF THE TAKING OF THE IRELAND PART IV, Dublin: The Educational Company of Ireland
グリーン, ミランダ・J 著、市川裕見子 訳『ケルトの神話』丸善株式会社、1997年。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 4-621-06062-7。
ジョーンズ, プルーデンス、ナイジェル・ペニック 著、山中朝晶 訳『ヨーロッパ異教史』東京書籍、2005年。ISBN 4-487-79946-5。
中央大学人文科学研究所『ケルト 伝統と民族の想像力』中央大学出版部、1991年。