ニラ
ニラ (Allium tuberosum)
分類
ニラ(韮・韭、学名: Allium tuberosum)は、ネギ属に属する多年草。中国原産で欧米では栽培されておらず東洋を代表する野菜である[5]。 『古事記』では「加美良」(かみら)、『万葉集』では「久々美良」(くくみら)、『正倉院文書』には「彌良」(みら)とそれぞれ記載されている。このように、古代においては「みら」と呼ばれていたが、院政期頃から不規則な転訛形「にら」が出現し、「みら」を駆逐して現在に至っている。近世の女房言葉に二文字(ふたもじ)がある。 別名はフタモジ[6]。日本の地方による方言では、フタモジ(二文字:千葉県上総地方)、ジャマ(新潟県中越地方)、ニラネギ(韮葱:静岡県、鳥取県などの一部)、コジキネブカ(乞食根深:愛知県、岐阜県の一部)、トチ(奈良県山辺郡、磯城郡)、ヘンドネブカ(遍路根深:徳島県の一部)、キリビラ(沖縄県島尻郡)、チリビラ(沖縄県那覇市)、キンピラ(沖縄県那覇市)、ンーダー(沖縄県与那国島)などがある[7]。 英名はチャイニーズ・チャイヴ(Chinese chive)[8]、仏名はアイユオドラン(ail odorant)中国植物名は韮菜(きゅうさい)[6]という。 多年生草本[9]。中国原産で、広く畑に栽培されている[6]。また、野生として空き地や道路脇や畦道や河川敷などに広く分布する。地下には横に連なった小さな鱗茎がある[9]。株の大きさはふつう高さ30センチメートル (cm) 内外、幅20 - 30 cmに広がる[10]。食用とする葉は線形で偏平、濃緑色[9]。 花期は夏(8 - 9月ころ)で、葉の間から30 - 40センチメートル (cm) ほどの1本の花茎を伸ばす[9]。花茎の先端に、半球形の散形花序をつけ、径6 - 7ミリメートル (mm) の白い小さな花を20 - 40個も咲かせる[9]。花弁は3枚だが、苞が3枚あり、花弁が6枚あるように見える。雄蕊(おしべ)は6本、子房は3室になっている。花後に果実を結び、熟すと割れて中から6個の黒色の小さな種を散布する[9]。冬になると地上部のみ枯れ、春になると地上からふたたび葉を伸ばす[10]。 本種の原種は、中国北部からモンゴル・シベリアに自生する Allium ramosum で、3,000年以上前に栽培化されたと考えられる。この種とニラを同一種とみなす場合もある[11]。株分けまたは種によって増やす。 全草に独特の匂いがある[9]。このため、禅宗などの精進料理では五葷の一つとして忌避される。匂いの原因物質は、ニンニクにも含まれている硫化アリル類の一種アリシンである[12]。 葉の幅が広い大葉ニラ、葉の幅が細い在来ニラに大別される[13]。日本で栽培されるニラは、大葉のグリーンベルト系が主流となっている[13]。周年花芽ができて、薹
名称
特徴
葉は線形
開花期になると、花茎を葉より高く伸ばして花蕾をつける。
花は散形花序につく。
熟した果実の中から黒い種子が散布される。
品種
大葉ニラ - 固定種で、葉の幅が広くて濃緑色。休眠が浅く、繰り返し収穫できる[13]。
ニューベルト - トキタ種苗
ミラクルグリーンベルト - 武蔵野種苗園が育成し、葉は広幅で肉厚、茎元が太く仕上がる高品質な品種。秋冬の葉は特に美味といわれている[13]。
広巾にら - タキイ種苗育成品種で、葉の幅が広く、再生力が強くて育てやすい。耐暑性・耐寒性ともに優れ、周年栽培が可能[13]。
テンダーポール - 花ニラ用の品種。香味野菜として、初夏から晩秋にかけて薹立ちする若い蕾のついた花茎を収穫する[14]。
ニラむすめ - 武蔵野種苗園が育成した花ニラ用の品種で、太くて長い花茎が次々と収穫できる。空洞が少ないうえ、甘みが強く歯触りがよい[14]。
栽培畑で栽培されているニラ
ニラは一度植えたら繰り返し収穫でき、数年栽培できる野菜である[13]。強健で育てやすく、刈り取った後からすぐに新葉は伸び[13]、春から夏の生育がよい4 - 9月ごろが葉の収穫期とされ、冬は休眠させるようにする[15][4][10][13]。